理解できない14

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 やがてゆっくりと頭を上げた相手は、やっぱり困った様子の苦笑を湛えている。
「俺にその体で、というか抱かれることで、今までの礼を支払いたいって気持ちは、やっぱり変えようがないか?」
「変えようって?」
「お前に菓子やら貢ぐ礼ならハグで充分だって、散々言ってきただろ。お前がくれるハグを俺がどれだけ喜んでるか、躊躇いなく伸ばされる腕にどれほど満足してるかだって、伝えてきたつもりなんだけど」
「うん、だから、お菓子とかお土産とか色々貰った分までは払わなくていいんだなって、ちゃんとわかってる、つもり、だけど。でもそれ以外に貰ってきたものへの礼は必要だし、高校卒業したら抱くつもりがあるって言われ続けてたんだから、やっと返していけるって思うの、変じゃない、よね?」
 さっきだって、こちらの言い分をわかると言っていたのだから、多分これだってそこまでオカシナ事を言っているわけではないはずだ。でも、自信がない。だって、まるで支払わなくていい、みたいな言い方をした。お礼がしたい気持ちを変えれないのかってのは、礼なんて要らないって事に聞こえる。
「あー……そうか、それは、……」
「やっぱ何か変?」
「いや。貢物以外に対する礼がしたい、って話だとは思ってなかった俺が、とんでもなくバカだったってわかっただけ」
 そりゃ通じてないわけだと納得されてしまったけれど、当然こちらからは、相手が何を納得しているかがわからない。ついでに言うなら、貢物以外に対する礼がしたい、という話だと思われていなかったこちら側こそ、通じてなかったのかと意気消沈な場面だと思う。
「俺に何が通じてないの?」
「高校卒業したら抱きたいってのは、お前を抱ける状態になってから礼をしろなんて意味じゃなかったんだよ。そもそも礼なんて要らないというか、菓子やら目に見える貢物にはちゃんとハグで返して貰ってたってのが理解出来るなら、俺がお前に関わってあれこれやってきた目に見えない物への礼だって、目に見えなかっただけでちゃんと返して貰ってたって言えば理解できるか?」
 ああ、やっぱり礼なんて要らないって思われている。今までの礼を受け取って欲しい気持ちとか、やっと返せるんだと喜んでいた気持ちとか、それらの持って行き場がわからなくて胸の中が重苦しい。
「目に見えない何かを返した記憶なんて欠片もないけど」
 こんな風に何も返してないと言い張るのはただの悪あがきだとわかっている。こちらに礼を返した認識がなくたって、相手は返して貰ったと言い切っているのだし、認識のあるなしなんて問題にしてくれそうにない。きっと、胸の中に重く伸し掛かっている気持ちを、相手が受け取ってくれることはない。
「それ言うなら俺だって、お前がそれ以外に貰ってきたものへの礼がとか言いだすまで、目に見えないような気遣いだとかを、お前に対して与えてきた物だって意識がなかったよ」
「意識できたなら改めて礼を要求しよう、ってなったっていいとこだと思うんだけど。なんで既にそれらへの礼も返して貰ってるって言っちゃうの。俺を抱いて、今までの礼を取り立ててくれる気がないなら、なんで俺を抱こうとしてるの?」
 ほらね。と思いながらも納得も諦めも出来なくて、相手を睨みつけてしまう。
 どうせもっと困らせるんだろうと思ったのに、相手は困り顔の苦笑を深めたりはしなかった。むしろ苦笑に歪んでいた口元が柔らかに緩んで、随分と優しい顔になった。
「好きな子を抱きたいって思うのは当然の欲求だと、俺は思ってるんだけど」
 左頬が暖かな手の平に包まれる。親指が目尻をそっと撫でるのに合わせて、相手を睨みつけている目元から力が抜けていくのがわかる。
「好きな子……」
 口を動かす筋肉からも力が抜けたみたいに、漏れ出る声もぼんやりとしていた。

続きました→

 
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