それなりに準備の出来ている体を、これでもかってくらいに改めて丁寧に解されるのだって、しつこいだとかねちっこいだとか思うより先に、嬉しいと思ってしまう。大事に触れて貰っている証拠みたいだと思ったし、大事にされるのは好かれているからなんだとも思った。
アッアと気持ちよく喘ぐ合間に、フッフと小さな笑いが交じる。嬉しい気持ちが溢れていく。
「ちょっと、意外だな」
にやける頬をさらりと撫でられながら不思議そうに言われて、何が、と思う。思うまま、口に出して聞いていた。
「意外って?」
「お前が俺に抱かれたがるのは、手っ取り早く借りを返す方法として最適と思ってるから、ってだけだと思ってた。というか、抱かれるって行為そのものは好きじゃないと思ってたから、今、嬉しそうにされて少しビックリしてるんだよ」
こんなとこ好き勝手弄られても嫌じゃない? と聞かれながら、お尻の穴に嵌っている指を揺らされる。
「ぁんっ、や、じゃない、よ」
「なら、良かった」
少しホッとしたように微笑まれて、手っ取り早く借りを返す方法として最適と思っているのも、抱かれるのが好きじゃないのも事実だ、とは言えなくなった。上手にされれば体は気持ちよくなれるけれど、だからって自ら進んで抱かれたいなんて思ったことはない。必要がないならしたくない。
だったら、既に支払いは終わっているから改めて礼なんていらないって言うこの人に、わざわざ抱かれる事もないだろうって言われそうだけれど。でも支払いなしでいいなんてラッキーだって流してしまえないくらい、この人にはたくさんのものを貰ってきたから、相手の中で既に収支が釣り合っていようと、ちゃんとお返しがしたかった。
このセックスを金銭換算する気がないなら、この際もうそれでいい。支払うべき額もはっきりしないどころか、支払わなくていいと言われているのだから、このセックスに値段が付かなくたってなんの問題もない。
つまりはお礼の気持ちってやつだ。多分。本当に返したいのはきっと感謝の気持ちで、この体以上に彼が喜んで貰える何かが思いつかないし、相手からだって代案を提示されなかったのだから、この体を差し出すのが最適という判断になるのは当然だと思う。
「ねぇ」
足を抱え上げられ、挿入されるその瞬間。甘えるように呼びかけながら両腕を伸ばした。
「ぁ、ぁっ、ぁあっっ」
すぐさま肩に手が触れる程度に前傾してくれた相手に縋りながら、久々に体を貫かれる衝撃をやりすごす。
心配そうに見下ろしてくる視線に大丈夫と示すように笑って見せて、もう一度、ねぇと呼びかけながら相手の肩を掴んだまま腕を引けば、どうしたと言いながらあっさり上体ごと寄せられてくる。
「好き、って言って。あと、出来ればキス、も」
酷く驚かせた様子で、手の中の相手の肩が強張るのがわかった。ここまで驚かれる理由がわからないし、そもそも、あれきり好きだと言われないことも、一度はあんなにも長く触れ合ったキスがそれっきりなのも、こちらからすればなんだかよくわからない状況なのだけれど。
「だめ?」
「いや、だめじゃない」
好きの言葉やキスをねだる代わりに、改めて何かを差し出す必要があるのかと思いながら尋ねた声にはすぐに否定が返る。
「なら、」
「好きだよ」
好きだと言ってキスをして、という言葉を繰り返すより早く、望んだ通りの言葉と共に唇が塞がれた。
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