理解できない2

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 その日は珍しく夫婦ともに留守だった。結婚記念日が近いとのことで、一泊だが近場でのんびり過ごすらしい。昼前には揃って楽しげに出かけていった。
 旅行の話は事前に知らされていたので、万端とは言わないが準備はしてきた。成功するのかはわからないが、いい加減、色々とはっきりさせたい。
 この家の長男は元々家を出ていたから、今夜この家にいるのは彼と自分の二人だけだ。しょっちゅう部屋に訪れてはあれこれ構って触れてくる彼のことを、その親である夫婦がどこまで認識して許容しているのかは知らない。ただ、彼らの目に振れる範囲での接触はせいぜい笑いかけられたり頭を撫でられたりなので、あんな過去持ちの自分と息子とをこの家に二人きりで残して旅行することへの不安はそこまでないらしい。
 そう思うと裏切るようで申し訳ないけれど、次にいつこんなチャンスが巡ってくるかわからないし、こちらにはもうあまり時間がないのは明白だ。だから仕方がないのだと自分自身を納得させながら、夕食後の片付けを終えて、先に風呂を済ませた自分と入れ違いに風呂場へ向かった彼を追いかけるように、再度自分も風呂場へ向かう。
 脱衣所前で耳を澄ませ、相手が確実に浴室へ入ってから、脱衣所の中へとそっと入り込む。素早く服を脱いでから浴室のドアを叩けば、すぐに薄くドアが開いて相手が顔を覗かせた。
「何かあっ、えっ?」
 何かあったのかと問いかけようとしていた相手が驚きに目を見張るのがわかる。
「俺も入れて」
「は? えっ?」
「いいから入れて」
「いやだって、お前」
 いいからと再度言いながら強引にドアを押せば、押し返されることはなく浴室のドアが開いていった。自分が入れそうな隙間が出来たところで素早く中に身を滑り込ませて、今度は逆に、すぐさまドアを閉じてしまう。
 これでこの家の中どころか、狭い浴室に裸で二人きりだ。まだ状況が把握しきれていないのか、明らかに戸惑ったままの相手の体には泡がついていて、どうやら体を洗っている途中だったようだ。
 自分は髪から洗う派だが、どうやら相手は体から派らしい。
「背中、流す」
 さすがに意味が通じていないわけではないだろうけれど、戸惑いを深くする相手に、洗ってあげるよと言い換えて再度伝えながら、相手の手元に手を伸ばした。手の中のボディタオルを握って引っ張れば、それはするりとこちらの手の中に落ちてきて、同時に諦めたようなため息が聞こえてきた。
「あー、じゃあ、よろしく」
 告げてバスチェアに腰をおろした相手の背中をゴシゴシ擦って、そのまま肩から腕をこすり終わったところで、もういいと言われて手の中のタオルを取り上げられる。
 全然洗い足りてないんですけど。
 こちらは全身洗ってあげるつもりで、というよりは全身くまなく触ってやるつもりでタオルを手にしていたので、それは多分顔に出た。それに返されたのはお見通しだとでも言うようなどこか呆れた顔で、ほとんど洗い終わってるところだったからもう充分だと告げられる。
「不満なら、次、頭、洗ってよ」
「それは、いいけど」
 相手に指示されるまま頭を洗ってやれば、たまには人の手で洗われるのもいいなと満足気に笑う。押しかけて戸惑わせていたのはわかっているから、少しでも満足出来たなら良かったとホッとした。同時に、なんて危機感がないんだとも思っていたけれど。

続きました→

 
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