理解できない34

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「簡単に諦めるつもりがなかったから、保護者やら家族としての情じゃなくお前が好きだと伝えたし、お前と距離を置いたのだって、三年半掛けて作り上げてしまったお前との関係を、どうにか変えたいと思ったからだ」
 ある意味、賭けのようなものではあったけどと続けた相手は、そこで一度言葉を切ってじっと見つめてくる。
「なに……?」
「賭けには勝った、と思ってるんだけど」
「だけど?」
「あー……お前、わかってない顔してる」
 どんな賭けをしてたと思うかと聞かれて、すぐに答えが返せなかったら、やっぱりという顔をされてしまった。というかまんま、やっぱりなと言われてしまった。
「いや全くわかってないわけじゃないよ。えと、だから、諦めなくて良くなったとか、俺との関係が変えられたとか、でしょ」
「うん、だから、それを一纏めにして、俺が何を望んでたかだよ」
「ひとまとめ……」
 わかんないよと言いそうになったけれど、でもさすがにそれを口に出すのは悔しい。ムッと閉じた唇を突き出してしまえば、仕方がないなと言いたげに軽く肩を竦めた後で、答えを教えてくれた。
「お前が俺を、恋愛対象として見れるようになるか、だよ」
 ただ、答えを聞いても、いまいちピンとこない。何かがつっかえてスッキリしない。だから何が引っかかっているかを必死に考える。
「それは、好きになってってはっきり言わなくても好きになろうとした、ってことを言ってるの?」
「違うな」
「よくわかんないのは、高校卒業するまでは抱かないって言ってて、卒業後にはちゃんと抱いてくれたんだから、さっきの、好きになってって言って気持ちを誘導しちゃいけないってのも、高校卒業するまでの話じゃないの?」
 だとしたら、そんな賭けなんかしてないで、好きになってって言えば良かったのにと思ってしまう。恋愛対象にしてって言われたら、恋愛対象として見るようにだってなるはずだ。
 ただこれを言ってしまうと、また話が戻ってしまうのだけれど。さっき理解したと頷いたはずなのに、それを覆してしまう。
 けれどそんな心配はする必要がなかったらしい。
「そうだなって言いたいとこだけど、高校卒業したらもう子供じゃないからいいよなって、気持ちを誘導していいって話にはならないよ」
「なんで?」
「高校卒業したからって、俺が自分の都合で心ごと弄って好きにしていい存在だなんて、欠片も思ってないよって言ったらわかるか?」
 それはストンと胸の中に落ちて、収まりがいい言葉だった。すごく、彼らしい言葉だと思う。
「あー……うん。らしい」
「ただお前は、俺の都合で気持ち弄られようと構わないのにって、言いそうだけどな」
「言うね。俺が欲しくてそうしたって言われたら、嬉しいとか言い出しそうなくらいには、あなたにならそうされてもいいって思うよ」
 むしろそうして欲しかった気持ちも結構ある。それは彼が欠片も望んでいない関係なのだということも、今はもうはっきりとわかっているけれど。
「そこまでの信頼は嬉しいけど、そうやってお前を抱え込んだまま生きて行く気は、俺にはないんだ」
「うん。わかってる」
「俺が気持ちを誘導するんじゃなくて、お前に、これから先、俺との関係をどうしたいか、どうなりたいか、考えて欲しかった」
「うん」
「愛だとか恋だとか誰かを好きになるって気持ちそのものを、高校卒業時点では多分まだ知らなかっただろうお前が、俺がお前に抱く恋情にどんな反応をするのかはわからなかったし、それを気持ちを誘導されたと取られたことはちょっと想定外でもあるんだけど、俺が、お前に同じ想いを返されたいと思っていることを汲み取って、俺がそれを喜ばないと思いながらも、俺への気持ちを育てようとしてくれてたことは、本当に、嬉しい」
 信じて貰えるかと聞かれたが、さすがにもう、その嬉しいを疑う気持ちはわかなかった。

続きました→

 
 
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