もし隠しているなら暴かれたくないのかも知れないと思えば、尚更聞きにくい。ついでに言えば、何も隠されてなかった時にどうするのか、というのも問題だ。
何かしら理由があって抱きたいと言わないだけで、巧妙に隠されているのだとしたら。もしくはこちらがぼんやりと見逃していただけなら。次にどうするかはそれなりに手がありそうだった。
でも本気で、もう抱かなくてもいいと思われていた場合に、自分がどうしたいのかはわからない。というか、考えていなかった。
そっちの可能性だって、ないわけじゃないのに。
「企みっていうか、の続きは?」
黙ってしまったせいで続きを促されたけれど、こんな場面になって思い至った事実の方に気を取られて、続く言葉は出てこない。
相手をじっと見返しながら、抱きたい気持ちがないのだと言われる事を想像してしまう。
セックスなんて、しなきゃしないで楽だと思う気持ちは確実にあるし、相手も同じように考えているなら、それは喜ばしい事かも知れない。自分から求めようとは思わない、というだけなら、自分だって同じだった。なのに。
嬉しいよりも、苦しい感じで胸が痛い。
「あー……とりあえず、今、何考えてるか口に出す気は?」
大丈夫だから言ってみろと、何がどう大丈夫なのかもさっぱりわからないような事を言われて、でも、きっぱりと大丈夫と言われると、それだけでなんとなく安心してしまう。安心して、話してみようかと思ってしまう。
自分のことなのによくわからない、この矛盾した気持ちを、彼なら上手に解きほぐして、わかりやすく教えてくれるかも知れない。だって、自分よりもよっぽど、自分を理解してくれている。いつかみたいに、どんだけお前を見てきたと思うのって、言ってくれるかも知れない。
「俺のこと、抱きたい気持ち、なくなっちゃった?」
「は?」
「前に、早くもう一度抱きたいって、言ってたの、どうなったのかなって、思って」
「ああ、そんなことも言ったか」
「やっぱ、今はもう、抱かなくていい、って、思ってる?」
言われて思い出した、みたいな言い方に胸の痛みが強くなって、吐き出す声が少し震えてしまった。
「抱きたい気持ちはちゃんとあるよ!?」
じわっと涙が滲んでしまえば、相手が焦った様子で声を上げる。
「今だって、早くもう一度抱きたいとは思ってるし、二回目をどう誘うかだって今も悩んでる」
「嘘だっ」
「嘘じゃないよ。ただ、急いではいないし、抱かなくても満足できてる部分は大きくて、そのせいで、もう抱かなくてもいいんだとお前に思わせたのはあると思う」
気持ちのままに声を荒げてしまえば、こちらの気持ちを落ち着けようとしてか、相手の言葉はことさら柔らかにゆったりと吐き出されてくる。だからこちらも、気持ちを落ち着かせるように、一度大きく息を吸って吐いてから口を開いた。
「でも、早く抱きたいのに急いでないって、おかしくない?」
「おかしくないだろ。早く抱きたいとは思っても、お前を急かして抱くんじゃ意味がないんだって」
「でも俺、もう、気持ちは育ったと思うんだけど」
「まぁ、育ってはいると思うけど」
「つまり、まだ足りないから、抱こうとしないだけ?」
これは想定外だぞと思いながら聞けば、そうじゃなくてと否定されてよくわからない。
「気持ちが足りないって話ともちょっと違ってて、何て言うか、お前がさ、そこまで俺に抱かれたいと思ってなさそうと言うか、今の状態を気に入ってそうというか、」
「えっ、待って。つまり、俺のせいで抱きたいって言えないって話?」
これもある意味想定外だ。何かしらの理由があって巧妙に隠されている、って部分は想像通りなのかも知れないけれど。
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