ただ、当初の目的である準備の方は、あまり順調とは言えなかった。
まず、ある程度こっちでの生活に慣れてからだと、最初の二週間くらいは家事を仕込まれていたし、一人で勝手に慣らし始めるのは帰宅時間と部屋数の問題で無理だった。
当然、彼の職場に近い場所に彼の家があるわけで、今の所、彼より先に帰宅できた日はない。部屋の方も、一人暮らしとしては余裕がある広さとは言っても、一部屋が大きいだけで、寝るのは当然同じ部屋だ。セミダブルとは言えさすがに同じベッドで眠るのは休まらないだろうと、自分は持ち込んだ布団をベッド脇に敷いて寝ている。
そもそも、一人で勝手に慣らしてでも急ぐ理由がない。でも、一緒に住んだら即、更にえっちな関係に進展するのかと思っていた節はあって、ちょっと拍子抜けだったのはある。もちろん、毎日会っているのだから、スキンシップの類は大幅に増えたけれど。そのまま流れで抜き合うような夜もあったけれど。
しかも、慣らし始めたら始めたで、想定外の問題が発生した。
暫く使っていないと言うだけで、どうすればいいかは当然わかっている。体だって覚えているはずで、そう大きな問題なんて起こるはずがないと思っていたのに。
想定外だった、というだけで、原因ははっきりとわかっている。自分で慣らして広げるのと、相手の手で慣らされ広げられるのが全然違ったせいだ。
人に慣らされるのだって、厳密に言えば初めてではないのだけれど、真っ更だった子供の体と、お尻で気持ちよくなった経験のある今の体では感じ方が違いすぎる。つまるところ、彼の指に感じすぎて困っていた。
隠れてこっそり慣らす必要もなく、時間だってそれなりに使えて急ぐ必要がない、というのもかなり大きい。自宅だと、こっそり風呂場にローションを持ち込み手早く指を突っ込んで、軽く馴染ませたら広げるように何度か出し入れして終わり、というのが多かった。自室は鍵が掛からないし、ローションまみれのタオルを洗濯してもらうわけにいかないし、ティッシュでとなるとゴミ箱に大量のティッシュが溜まる羽目になる。
でもここでの慣らすは大きく違う。まず場所が風呂場じゃなく、彼のベッドの上だ。なぜなら、風呂場が自宅よりもだいぶ狭い。湯船に二人一緒に浸かるのはどう考えたって無理なレベルで、洗い場もそれに見合った狭さだった。
万が一汚れても構わないようにと、腰の辺りに大判のバスタオルを敷いてくれるが、頭の下は当たり前みたいに彼の枕だったり、そのままベッドシーツだったりする。だから時折、ふっと彼の匂いを感じてしまう事がある。それが嬉しいような、恥ずかしいような、なんとも言えない気持ちになって、ドキドキした。ドキドキして、彼の指の動きをより一層、意識してしまう。感じてしまう。
広げるのが目的だから、感じる必要はないし、正直あまり感じたくもない。だっていちゃいちゃくっついてキスして、気持ちが盛り上がって抜き合ってしまうのとは全然別だった。彼は服を着たままだし、イカせてはくれるけど、一緒にイッてはくれない。
だいたい、イキたくて仕方なくなるまで弄らなくたっていいのに。広げるだけなら、とりあえず毎日突っ込んで揺すってしておけば、だんだん指の本数は増やしていける。まぁ、多少時間は掛かるけれど。
でも、可愛くてつい、だとか、今週末には抱けるといいね、だとか。そんな事を言われながら弄られたら、嫌だとは言えないし、感じたら当然イキたくなってしまう。
あんまり感じさせないで欲しいというこちらの訴えを聞いて、中の弱い場所を狙って弄られたりはしないけれど、でも時間を掛けてじっくりと何度も指を出し入れされれば、我慢なんてできようがなかった。
おかげで、慣らし始めた先週末から先、自分ばっかり毎晩射精している。
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