竜人はご飯だったはずなのに11

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 この体が久々に勃起した、というのがどれだけ彼らにとって重要だったのかはわからないが、翌朝彼は少し慌て気味に部屋を出ていってしまった。報告してこなければならないと言って出ていったから、多分間違いなく報告したいのは勃起したことだし、そんな事を口に出してしまうくらい慌てていたのも間違いない。
 食事内容は逐一報告されているだろうと思ってはいるが、それをはっきりと認めるような発言は今までなかったから、彼からすれば今回のこれはかなりうっかりの失言なんじゃないだろうか。ただまぁ、そうだろうなと思っていたことが確定したからと言って、別にどうということはない。
 問題は、もしそれがなかった場合、彼がこの部屋を慌ただしく出ていくこともなかったのではないか、ということだ。予定があると言って早々に出ていく時もあるが、起きた後にもしばらくのんびりとこの部屋で過ごしてから出ていく時もある。
 今回がどっちだったのかはわからないし、勃起しなくたって早々に出ていってしまったかもしれないが、朝もなるべくゆっくりしていって欲しいこちらの気持ちを彼は知っているし、なるべくそう過ごせるようにと調整してくれているらしいから、予定があると言ってさっさと出ていってしまう頻度は減っている。
 彼ともっと話がしたかった。だって抱かれる食事の頻度を落としていくのは決定済みだ。会える機会は減るばかりで、彼を食事以外でこの部屋に引き込むすべなんてさっぱり思いつかないままだし、オマケに世話係の彼との仲を大きく誤解されている。
 いやまぁ、お前が抱いてくれと言ったのは体の欲求に切羽詰まってとも言えるけれど、それ以外にも散々誘うような真似は確かにしているし、恋愛駆け引きみたいなことを楽しんでいるし、誤解じゃないなと自分自身思ってしまう部分もあるのだけれど。
 でも、本当に食べたいと思っているのも、好きだと言ってほしいのも、言いたいのも、世話係の彼だ、と思われているのはなんだか癪に障る。彼に抱かれることで湧いている情を、信じてもらえずに否定されたことが悔しい。
 だってあれは、たぶん本気で言っていた。セックスに他者への嫉妬を取り入れてみた、という感じではなかった。
 世話係の彼との仲や彼へ向かう想いを、勝手な思い込みで断定されたせいで、あの後、世話係の彼となんとなくギクシャクしているのも、ちょっと腹が立っている。というか、繁殖期になったら抱いてくれるのかとか、腸内に唾液を注いでくれと頼んだら尻穴を舐めるような真似をしてくれるのかとか、食事担当の彼を本気で好きだと言ったらガッカリしてしまうのかとか、それを確かめたくて、でも聞けずに居た。
 だって、こちらの気持ちをかなり勝手に決めつけられているから、世話係の彼の想いも勝手な誤解と思い込みで話していたんじゃないかと思ってしまう。
 こちらの感覚では、こちらがねだりまくるのに折れて、仕方なく口直しのキスをくれているようにしか思えないのに、既に恋愛じみた感情を抱いているなんてとても信じられない。そうなればいいと狙っていたはずなのに、疑う気持ちばかりで、もしかしたらの可能性を前に欠片も嬉しくないのが、これまたなんとも胸が重い。
 胸の中にもやもやとしたものが積もっていって、でもあれこれごちゃごちゃ考えるのはあまり得意じゃないから、だんだんイライラする時間が増えていく。以前なら、派手に体を動かして、お腹いっぱい食べてたっぷり眠れば、それでなんとなくスッキリしたものだけれど、今はそんな真似が出来る状況にない。
 かといって、さすがに世話係の彼にやつ当たるほど大人げない真似も出来なくて、しかたなく彼を避け気味になる。話し相手もゲーム相手も風呂も断った。そして、相変わらず全く美味しくないけど、でもまずくはなく、比較的飲みやすい液体だった日に、とうとう口直しのキスも要らないと言ってしまった。
 空になったコップを差し出して、さっさとベッドに転がり背を向ける。
「俺、お前と話す、したい」
 さすがに放っておけないと思ったのか、心配げな声を掛けてきた相手に、背を向けたままで嫌だとそっけなく返す。
「俺、触る、する。それも嫌か」
「やだ」
「でもお前、寂しい。我慢する、良くない」
 寂しいってなんだと、思わず背後を振り返ってしまえば、困ったような泣きそうな顔で見つめられていた。

続きました→

 
 
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「竜人はご飯だったはずなのに11」への2件のフィードバック

  1. 小さな彼の出番待っててくださってありがとうございます!
    今回のメインは食事担当を抱くことなので、世話係の彼とはそこまでエッチなことする予定はないのですが、次回は世話係に甘やかされてくれたらいいなーと思ってます。
    続きも頑張りますね〜(^^♪

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