竜人はご飯だったはずなのに10

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 彼の本気は伝わってくるが、しかし、彼に抱かれて善がりまくった結果こちらのペニスが反応したということに喜んでいるのではなく、久方ぶりに勃起機能が戻りかけている事そのものへ興奮しているのが丸わかりだ。
 こちらの感情的には、あまりの気持ち良さにペニスまで反応したって感じなのに。彼が本来の姿で抱いてくれたことの喜びが、反映されたんだろうなって思ってるのに。
 思わずこぼしたため息に、相手は拒否の意を感じ取ったらしい。
「やはりダメか……あ、それならあの子を呼ぼうか。彼になら、私にされるより、怖くないんじゃないか?」
 良い思いつきだとでも言いたげに身を起こした相手が、ベッドを降りようとするのを慌てて引き止める。
「待てよ。お前が怖いとかじゃないから。怖くないから。怖いわけ無いから」
 その鋭い歯でペニスに傷をつけられる恐怖なんてあるわけがない。そんなことするわけがないと信じられる。きっと細心の注意を払いながら、優しく舌先だけを使って愛撫してくれるはずだ。
「しかし、私に舐められるのは嫌なんだろう?」
「だからそれは怖いかどうかじゃねぇの。俺の、気持ちの問題」
「気持ち?」
「初めてその姿のまま俺を抱いて貰ったの、メチャクチャ気持ちよかったんだよ。それこそ意識飛んだり、勃起しかけたりするくらい善かったの。だからもーちょいその余韻に浸らせろって」
 ハッとした様子で気まずそうに口を閉ざした相手は、もともと余韻を欲しがる情緒的なものへも理解がある。でもそれは飽くまでも理解の範囲で、こちらに合わせてくれているだけだ。今回はこちらの体が常とは違う反応を示したせいで、それどころじゃなかったんだろう。
「自分の立場はわかってるつもりだし、俺の体の機能が戻っていくことに、あんたが、いや、あんたたちが興味津々なの仕方ないとも思うけど、でも、これが食事だとか俺の体がそっちの都合で活かされてるモルモットだとか、そういうの、今日はこれ以上、思い出させんなよ。頼むから」
「わかった。すまなかった」
「いや、いい。それより、あんたは大丈夫なのか?」
「大丈夫とは?」
「だって普段ならとっくに寝落ちてるはずだろ」
「ああ……そうだな。確かに」
 気落ちした様子でおとなしく隣に横になった相手は、いつものようにすぐに目を閉じてしまうことはなかった。
「寝ないの?」
「その、少しだけ、触れてみてもいいだろうか」
「え、どこに?」
 驚いたのは、本来の姿の彼がこちらに触れたがることなんて、今まで一度もなかったからだ。こちらから撫でて欲しいなどと、本気でねだったこともない。というよりも、この姿の彼には、それをねだるような隙がなかった。
 いつも疲れ切った様子ですぐに寝てしまうし、寝て起きた後はさすがに甘ったるい気配なんて欠片も残していない。もっと構えと軽く誘うことくらいは出来るが、せいぜい会話が増える程度で、こちらの体に触れてくることはなかった。
「どこでも。お前が、私に触れられても大丈夫だと思う場所があれば」
「なんだそれ。どこ触られたって平気だよ」
 そうかと言いながら、おずおずと手が伸びてくる。人の皮膚とは違う鱗に覆われた手だけれど、それが滑らかに肌を滑る気持ち良さを知っている。それを教えてくれたのは、目の前の彼ではなく、世話係の小さな彼の方だけれど。
 うっとりと身を任せているうちに、その手は肩から首筋を擽るみたいに辿って、何度か優しく髪をすいた後で離れていった。
「ありがとう。おやすみ」
 もう終わり? と思う気持ちもあったが、やっぱり限界だったらしい。安堵と陶酔を混ぜたような囁きを残して、相手は瞼を落として軽い寝息をたてはじめてしまった。
 まぁいいかと擦り寄るように身を寄せて、勝手に彼の肌を撫で擦る。小さな彼とはやはり鱗の大きさが違うけれど、手触りはそこまで大きな差がない。特に胸から腹にかけては余計な突起もほぼないし、ほんの少し冷やりとして、滑らかな手触りが酷く気持ちが良いのだ。
 ほぼ毎回、スリットを弄られ起こされているのだから、寝ている彼に好き勝手触っているのは知っているだろうけれど、寝落ちた直後に彼を愛しげに撫でる手には、果たして気付いているだろうか。
 疲れ切って寝姿を晒す彼は、もちろんこちらへの警戒心も緊張もない。それがどれほどこちらの気持ちを柔らかく解すのか、知っているだろうか。
 多分、気付いていないし知らないんだろうなと思って、小さなため息を吐き出した。

続きました→

 
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