顔をあげてやっと兄の顔をしっかり見れば、やっぱりしかめっ面だったけれど、その顔は自分ではなく彼に向かう感情かららしいとようやく気づく。そんな中、恋人として最低だと言われた隣の彼は、女の恋人しか紹介したことなかったからだろと反論している。
「彼女たちとは、最初に設定した期間内に俺が相手に本気で惚れたら相手の勝ちっていう、ゲームみたいな事してたわけ。まぁ、彼女がいるって状況もありがたかったから、それはそれで存分に利用はさせてもらったけどさ」
「なんだそりゃ。というかそんなゲームに乗る女が複数人居たってことが衝撃だよ。てかそれ嘘話じゃないだろうな?」
「嘘言ってどうする。つうか俺、割とモテる方だってお前知ってるだろ」
「そりゃ知ってるけど、だからこそ、なんでそんなゲームする必要あるんだよ。気の強い美人を怒らせるのが楽しいとかいう、何かいろいろ拗らせた変態なのかと思ってたけど、今の話聞いてるとどうやら違うっぽいな。惚れそうにない相手と妙なゲームやってないで、最初っから、好きになれる相手と付き合えばいいだろ」
「だからこいつと付き合ってるんだっつーの」
「は?」
「えっ?」
思わず振り向いて確認してしまった彼は、まっすぐに兄を見据えていた。こちらの視線にはチラリとも反応せずに、また口を開く。
「最初に誘ったのはこいつだけど、恋人にならないかって言ったのは俺。俺に本気で惚れさせたのも俺。いつまで恋人でいるかなんて決めてないし、俺を嫌いになるか、俺より好きな相手が出来るまでは別れる気なんかねぇし、別れるって言われたら引き止めんだよ」
だからな、と続いた声は怖いくらいに真剣だった。もちろん、見つめたままの横顔も。
「お前が何言ってもこいつと別れる気はないから、お前の弟だったのは悪いと思わなくもないけど、俺達のことは認めてくれ。一応、できるだけ幸せにしてやる気はあるからそれで許せよ」
「おっ前、それ、本気にしていいんだな? てかそいつ、お前の好みにちゃんと引っかかってんの? 気の強い美人が好きってのは俺の誤解って事で本当にいいのか?」
兄まで真剣な顔で応じだしているからなんだか焦る。何だこの流れ。
「ねぇ待って。ちょっと待って。何、認めるみたいな話になってんの」
「みたいな、じゃなくて認めてもらう話だっての。言ったろ。別れ話にはならないし、恋人紹介の場になればいいと思ってるって」
「だって、兄さんが、だって、そんな、」
未だ兄が本命なくせに、その弟を恋人として紹介した上に、別れる気はないと言い切って認めろと迫り、できるだけ幸せにしてやるつもりだとわざわざ告げる意味がわからない。
「あーはいはい。本命の話な。だから何度も言ってるけど、お前の兄貴とは親友って状態でいるのがベストなんだって。友人としてなら最高だって、コイツもさっき言ってくれてたろ。それで充分なの。でもってお前との仲だってちゃんと認めてくれるから、お前のせいでコイツとの親友関係ぶっ壊れたりもしないから安心してな」
「認めるの確定すんな。てか本命って何?」
「俺が恋人より親友優先しがちって話?」
「あー、お前ってホントそういうとこあるよな。でもそれで俺の弟泣かすとか許さないぞ。俺優先して寂しい思いとかさせんなよ。そいつと恋人ってのを俺に認めさせたいなら、俺なんかより恋人優先しろ恋人を」
「ダメだよっ!」
慌てて兄の言葉を否定する。
「俺は今のままでいいから。兄さんも、今まで通りにしてて。俺のせいで二人の関係壊れないって言うなら、絶対そうして」
「恋人優先されたくらいで、今更こいつとの関係なんか変わらないって。俺はこいつより自分の恋人優先してきたし、こいつが俺優先してた今までの方がおかしかったの」
「おかしくないよっ」
だって恋人になりたい欲求を殺してまで、親友で居続けることを選ぶような想いを抱えているんだから。でもそれを、彼を差し置いて自分が告げるわけになんていかないだろう。
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