兄の親友で親友の兄(目次)

キャラ名ありません。全12話。
それぞれの年齢は出てませんし、仕事の話なども一切出ませんが二人共社会人です。
親友を好きな視点の主が、兄の親友であり親友の兄でもある攻めに、兄が好きならお互いに好きな相手の代わりを務める相互代理セックスをしないかと持ちかけた話。
弟の代りになってのセックスなんて出来ないと断られ、本命が別に居ても恋人は作れると言う攻めの言葉に乗って恋人になったら、情が湧いて攻めのことを好きになってしまうが、攻めの本命は変わらず兄のままという状態の中、兄に二人の関係がバレて、最終的には両想いの恋人になります。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
肉体関係のある二人ですが性的な描写はありません。

1話 相互代理セックスの誘い
2話 試しに付き合ってみないか
3話 しばらく恋人
4話 曖昧になる本命
5話 一年経過
6話 情が湧きすぎて
7話 兄と彼からの呼び出し
8話 別れるよ
9話 兄の中での彼の評価
10話 別れない宣言
11話 彼と兄の茶番劇
12話 本命に繰り上がり

 
 
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兄の親友で親友の兄12(終)

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 いいのかと問いかければ、すんなりいいよと返ってくる。
「というかお前、本当にさっきの茶番の意味わかってないのか?」
「わかんないよ。殴っていいよって何? 俺のせいで喧嘩とかホントやめて欲しいんだけど」
「お前引っかかってんのそこかよ」
 呆れた様子で、喧嘩なんかしてないし親友なのだって変わらないぞと苦笑する。確かに、兄の口から友人関係を切るような単語は出ていなかったけれど。
「でも兄さんが言ってた殴らせろっての、多分本気だったよ」
「俺だって本気で殴られる気でいるけど、それ、お前を恋人として紹介したケジメみたいなもんだから。それより、お前に一番気にして欲しいの、俺があいつに振られたってとこなんだけど?」
「そうだよ。それ。兄さんに好きって言っちゃって良かったの? というか、なんで振ってくれなんてこと言ったの」
「なんでって、そりゃ、お前が俺を想って泣くからだろ。あと、俺が言ったのは『好きだった』で過去形な」
「過去形、って……」
 やっと茶番の意味が飲み込めた気がして、ドクンと心臓が大きく跳ねた。
「え、その、それってつまり、」
「そ、お前が本命に繰り上がり」
 あいつへの気持ちを吹っ切るいいキッカケになったとさっぱりした顔で笑われて、本気なんだとは思ったけれど、なんだかあまり現実感がない。
「信じられないって顔してんな」
 本当だぞと言われながらまた頭を撫でられたけれど、今度はさっきみたいな乱雑さはなく、そっと髪を梳くみたいな優しい手付きだった。
「お前はさ、お前自身の気持ちが変わって俺が本命に繰り上がった後も、俺の気持ちを変えようとしなかったろ。というかお前は、俺があいつを好きだって気持ちを、好きだから告白すらせずずっと親友で居たいって想いを、最初から一度だって否定しなかった」
「それは、だって、俺も一緒だから……」
 親友と親友のままでいるために、気持ちを隠して、どうしようもない切なさを別の誰かの体温で補ってしまうような、そんな生活をしていた。それがだんだん虚しさを増して、同じ気持ちを抱えているだろう彼に声を掛けた結果が今だ。
 本命が別に居ても恋人は作れると言った彼と違って、恋人関係を続けるうちに元々の本命以上に彼を好きになってしまったけれど、それを彼は彼自身のせいだと言うけれど、でも彼に気持ちを変えろと言われて変えたわけじゃない。
 恋人としての彼に魅力があったから、自分は彼を好きになってしまったけれど、恋人としての自分に兄以上の魅力がないから、彼の本命は兄のまま変わらない。自分たちの間には、そんなわかりやすい事実しかなかった。
 だから、彼の気持ちを否定することも、彼の気持ちを兄から自分に向けさせようとすることも、自分自身を否定するみたいで出来っこない。
「でもお前は俺を好きになったろ。それ、間違いなく俺のせいなのに、それを責めることもしないし、同じようにお前を本命に繰り上げろとも言わなかった」
「言えるわけ、ない、だろ。俺を兄さんより好きになってって言って、それでどうにかなる気持ちなら、そもそもとっくに兄さん以外の誰かを好きになってるでしょ。無理難題ふっかけて困らせるより、せっかく一緒にいられる時間、楽しく過ごすほうがずっと有意義だもん」
 困らせたらきっと振られると思ってたし、とまでは言わなかった。肯定されたらやっぱり辛いし、否定されても多分信じられない。だからそういうものは確かめてしまわず、曖昧なままにしておけばいい。
「うん。ただ俺は、お前のそういうとこに、甘えすぎてた。必死に俺とあいつとの仲を心配するお前見てたら、お前を一番にしたくなったんだ。あいつへの気持ちにケリつけて、お前を本命に繰り上げてやりたいって、思っちまった」
 待たせてゴメンなと苦笑する彼に、ブンブンと力強く首を横に振ってしまえば、苦笑が柔らかな笑みに変わる。
「嬉しい、けど。でもホントに、俺で、いいの?」
「お前がいい。互いに想う相手の代わりになれるはずだからセックスしてみないか、なんて言い出した時は何言ってんだこいつ、と思ったけど、お前に誘われて良かったよ。お前が、俺の気持ちに気づいて、手を伸ばしてくれて、良かった」
 しみじみと感謝してるよなんて言われても恥ずかしいばっかりだったし、それを言うならこっちだって、こちらの提案をあっさり無理だと突っぱねた挙げ句、恋人になれと誘ってくれたことに感謝している。
「俺だって、あなたに、感謝してるよ」
 言えば、そりゃ良かったと言って嬉しそうに笑う。その顔がそっと寄せられてくるのに合わせて目蓋を落とせば、触れるだけの優しいキスが一つ、唇の上に落とされた。

<終>

 
 
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兄の親友で親友の兄11

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「俺よりお前を優先しろって言ってるのに、なんでお前が怒ってんだよ」
「なんででもっ」
 だって俺じゃこの人の本命になれないんだもんという泣き言を、どうにか口に出さずに飲み込んだけれど、その分が涙となってこみ上げてくるみたいだった。
「うわ、ちょっ、泣くほどのことか?」
 焦った兄が腰を浮かせて、テーブル越しに手を伸ばしてくるけれど、それより先に隣の彼に抱き込まれてしまう。少し体を捻った彼の胸に、顔を押し付ける形で閉じ込められた。
「俺さ、お前が好きだったんだよ、ずっと」
 聞こえてきた言葉に、彼の腕の中で身を固くする。彼の想いは、生涯兄に伝える気がないものだと思っていたのに。
「は?」
「俺が自分がバイだって気づいたの、お前を好きだと思ったせいだから」
「え、なに、突然」
「こいつが泣くから、お前に告白してる」
「いや、意味分かんないんだけど」
「俺はお前と親友で居られれば満足だったから、お前に恋愛感情で好きだとか言う気は一切なかったんだけど、それに気づいたこいつが、俺誘ったのが最初なんだわ。だからこいつは、俺の叶える気もない片思いのせいで、辛くなって泣いてんの」
「は? え? てかそれ、今現在の話? お前、俺に片思い中なの?」
「どう思う?」
「全く信じられないけど、取り敢えずお前をぶん殴りたい」
「いいけど、さすがに店の中ではまずいから後でな」
 二人の会話を聞きながら、ちょっと何言ってんのと言ってやりたいのに、けっこうギュウギュウに抱きしめられていて抜け出せない。彼の腕の中でバタバタともがいているのが見えているはずなのに、兄の助けも一切なかった。
「で? 俺はお前を振ればいいわけ?」
「あーまぁ、そうだな。振ってくれ」
「えー、じゃあ、お前と恋愛とか無理だし、恋人より俺優先する理由が俺を好きだからとかさすがにキモいから、今後そういうのなしな」
「わかった。ありがとな」
「んじゃここ、お前の奢りで」
「おう」
「それと、あとでマジに殴らせろ」
「わかった」
「わかった、じゃないよ!」
 ようやく緩んだ腕の中から抜け出して叫べば、二人から同時に声がデカイだとか静かにだとか窘められたけれど、それどころじゃない。
「ねぇ、何、今の」
「何って、お前のための茶番?」
 対面では兄も、酷い茶番に付き合わされたとぼやいているが、やっぱりわけがわからなかった。二人だけで通じ合ってる世界を見せつけられて胸が苦しい。
「いみ、わかんない」
 また泣いてしまいそうだと俯けば、後頭部にぽんと彼の手が乗って、わしゃわしゃっと少し乱雑に髪をかき乱される。
「なぁ、本当にわかんねぇの?」
 甘やかしてくれる時の優しい声音に、既に緩んでいた涙腺から結局また涙が、と思ったところで兄の待ったが飛んできた。
「あ、ちょっと待った。無理」
「ちょ、お前、なんだよ無理って。邪魔すんなよ」
「いやいやいや。お前が甘ったるい声出して甘やかそうとしてるのが実弟とか、そろそろ許容範囲超える。お前らがいちゃつくとこ見せられんの、さすがにまだ無理だって」
 俺だってまだ色々消化できてないんだからなと言って、兄が立ち上がる気配がする。慌てて顔を上げれば、少し困ったような顔をしながらも手を伸ばしてきた兄に、さっきの彼同様、わしゃわしゃっと頭を撫でられた。
「それなりに複雑ではあるけど、お前がこいつを凄く好きなのはわかったから、別れちまえは撤回な。ちゃんと大事にして貰えよ」
 泣かされたらチクりに来ていいぞと笑ったあと、あんま泣かすなよと隣の彼に釘を差して、兄はじゃあなとあっさり部屋を出て知ってしまった。というか帰った。
「ねぇ、兄さん本当に帰っちゃうよ」
 オロオロと気持ちだけが落ち着かなくて、けれど奥の席に押し込められているから、隣の彼がどいてくれないと兄を追いかけることも出来ない。そして、そうだなと相槌を打つ彼は至って冷静だった。

続きました→

 
 
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兄の親友で親友の兄10

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 顔をあげてやっと兄の顔をしっかり見れば、やっぱりしかめっ面だったけれど、その顔は自分ではなく彼に向かう感情かららしいとようやく気づく。そんな中、恋人として最低だと言われた隣の彼は、女の恋人しか紹介したことなかったからだろと反論している。
「彼女たちとは、最初に設定した期間内に俺が相手に本気で惚れたら相手の勝ちっていう、ゲームみたいな事してたわけ。まぁ、彼女がいるって状況もありがたかったから、それはそれで存分に利用はさせてもらったけどさ」
「なんだそりゃ。というかそんなゲームに乗る女が複数人居たってことが衝撃だよ。てかそれ嘘話じゃないだろうな?」
「嘘言ってどうする。つうか俺、割とモテる方だってお前知ってるだろ」
「そりゃ知ってるけど、だからこそ、なんでそんなゲームする必要あるんだよ。気の強い美人を怒らせるのが楽しいとかいう、何かいろいろ拗らせた変態なのかと思ってたけど、今の話聞いてるとどうやら違うっぽいな。惚れそうにない相手と妙なゲームやってないで、最初っから、好きになれる相手と付き合えばいいだろ」
「だからこいつと付き合ってるんだっつーの」
「は?」
「えっ?」
 思わず振り向いて確認してしまった彼は、まっすぐに兄を見据えていた。こちらの視線にはチラリとも反応せずに、また口を開く。
「最初に誘ったのはこいつだけど、恋人にならないかって言ったのは俺。俺に本気で惚れさせたのも俺。いつまで恋人でいるかなんて決めてないし、俺を嫌いになるか、俺より好きな相手が出来るまでは別れる気なんかねぇし、別れるって言われたら引き止めんだよ」
 だからな、と続いた声は怖いくらいに真剣だった。もちろん、見つめたままの横顔も。
「お前が何言ってもこいつと別れる気はないから、お前の弟だったのは悪いと思わなくもないけど、俺達のことは認めてくれ。一応、できるだけ幸せにしてやる気はあるからそれで許せよ」
「おっ前、それ、本気にしていいんだな? てかそいつ、お前の好みにちゃんと引っかかってんの? 気の強い美人が好きってのは俺の誤解って事で本当にいいのか?」
 兄まで真剣な顔で応じだしているからなんだか焦る。何だこの流れ。
「ねぇ待って。ちょっと待って。何、認めるみたいな話になってんの」
「みたいな、じゃなくて認めてもらう話だっての。言ったろ。別れ話にはならないし、恋人紹介の場になればいいと思ってるって」
「だって、兄さんが、だって、そんな、」
 未だ兄が本命なくせに、その弟を恋人として紹介した上に、別れる気はないと言い切って認めろと迫り、できるだけ幸せにしてやるつもりだとわざわざ告げる意味がわからない。
「あーはいはい。本命の話な。だから何度も言ってるけど、お前の兄貴とは親友って状態でいるのがベストなんだって。友人としてなら最高だって、コイツもさっき言ってくれてたろ。それで充分なの。でもってお前との仲だってちゃんと認めてくれるから、お前のせいでコイツとの親友関係ぶっ壊れたりもしないから安心してな」
「認めるの確定すんな。てか本命って何?」
「俺が恋人より親友優先しがちって話?」
「あー、お前ってホントそういうとこあるよな。でもそれで俺の弟泣かすとか許さないぞ。俺優先して寂しい思いとかさせんなよ。そいつと恋人ってのを俺に認めさせたいなら、俺なんかより恋人優先しろ恋人を」
「ダメだよっ!」
 慌てて兄の言葉を否定する。
「俺は今のままでいいから。兄さんも、今まで通りにしてて。俺のせいで二人の関係壊れないって言うなら、絶対そうして」
「恋人優先されたくらいで、今更こいつとの関係なんか変わらないって。俺はこいつより自分の恋人優先してきたし、こいつが俺優先してた今までの方がおかしかったの」
「おかしくないよっ」
 だって恋人になりたい欲求を殺してまで、親友で居続けることを選ぶような想いを抱えているんだから。でもそれを、彼を差し置いて自分が告げるわけになんていかないだろう。

続きました→

 
 
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兄の親友で親友の兄9

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 呆気に取られているうちに、近づいてきた相手に腕を取られたかと思うと、今度は相手側の席に押し込められる。帰りたいと抵抗はしたのだが、頼むからもう少しだけこれにつきあってくれと頼み込まれて、仕方なく従ったに過ぎない。彼の必死な顔が、とても珍しかったというのもある。
 場所が変わって目の前に座る事となった兄の顔が見れずに俯いていれば、隣から腕が伸びてきて肩を抱く。引き寄せる力のまま相手に身を寄せてしまったものの、緊張で体はガチガチだった。宥めるように、肩を抱く手が優しく何度も肩を撫でさすってくれる。
 目の前でそれを見ているはずの兄は、何も言わない。それがなんだか怖くて、彼に肩を抱かれ気遣われてさえ、安堵出来はしなかった。
 ちっとも体の強張りを解かない自分に、相手も諦めたのか、小さな吐息が一つ。そんな些細なことにもビクリと反応してしまえば、肩を抱く手に力がこもった。
「お前が何を言おうと、こいつが俺を嫌いになるか、俺より好きな相手が出来るかするまでは別れないって約束してる」
 まるで大丈夫だからと言われているような気がする、とは思ったが、まさか兄に向かってそんなことを言うなんて思っていなかった。
「ダメだよっ」
 慌てて顔を上げて彼を止める。そんな約束、こんな時まで守ってくれなくていい。どうしても目の端で捉えてしまう兄は、やっぱり不機嫌そうな顔をしていた。
「別れるって言い切ってる恋人そこまで引き止めるとか、お前らしくないな。そいつ、まだ別れる気まんまんだろ、それ」
 刺々しい兄の声に体が竦むが、その通りだとも思う。なんでこんなにも引き止められているのかわからない。
「なんでこんなあっさり別れるって言うのか、知ってるからな。お前が思うよりずっと、俺はこいつに愛されてんだ。お前にその程度、なんて言われるほど、ちっぽけな想いじゃない」
「ちょ、っと!?」
 何を言い出しているんだと止めようとしたのに、彼の言葉は止まらなかった。
「こいつが身を引こうとしてるの、俺のためだから。俺が親友のお前をどれだけ大事にしてるか知ってんだよ。だから俺がお前と喧嘩別れしなくて済むように、俺とお前の関係が変わってしまわないように、とか思って自分から別れるって言ってんだろ。さすがにそんな理由で別れてやる気にはなれないな」
「それは、さっきの聞けば、だいたいわかったけど。でもそれなら尚更、別れるって自分から言えるうちにお前と別れて、お前以外の誰かと付き合って欲しいと思うよ。兄としては」
 当然だ。親友と弟とが恋人だなんて、許せるものじゃないだろう。頭ではわかっているのに、兄の言葉が胸に刺さって、ジクジクと痛い。
「バカかっ」
 辛くて俯いてしまえば、隣で彼がそう吐き捨てる声が聞こえる。
「バカってなんだ!」
「こいつが俺と別れたとして、他の誰かなんて探すわけ無いだろ。別れたってそのまま一人で、一途に俺を想い続けるタイプだぞ」
「そうなのか?」
 それは自分への問いかけだとわかってはいるものの、何も返せはしなかった。代わりに、彼が勝手に肯定を返している。
「そうだよ」
「お前に聞いてない」
「沈黙は肯定だ。つうか、お前こいつ追い詰め過ぎだって」
「別に、そういうつもりは、ない、けど……」
「お前にそのつもりはなくても、実際そうなってるのはこれ見りゃわかんだろ」
「それは、俺が悪かったよ。けど、俺だって、弟がお前なんかと付き合ってるって聞いて、しかもそれが冗談でも何でもないってわかったら、心配しないわけに行かないだろ」
「ひでぇな。親友捕まえて、お前なんか、かよ」
「友人として最高でも、恋人としてはイマイチどころか割と最低なの、知ってるからな」
 呆れた様子の兄の声に、あれ? と思う。本命が兄だってこと以外は、かなり理想的な恋人だと思っているし、本命が別にいるからこそこんなにも気遣って貰えるのだとしたら、それすら全部含めて、彼と恋人になれて良かったと思っているのに。兄の中で、イマイチどころか最低という評価なのが不思議だった。

続きました→

 
 
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兄の親友で親友の兄8

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 個室の入り口から近い席に座っていたのは兄だったけれど、兄は不機嫌丸出しだったし、自分を呼んだのは彼だしと思って、彼の隣へ座ろうと奥へ向かって進めば、横から伸びてきた手に腕を捕まれ阻止される。
「お前が座るのはこっち」
「え、でも」
「いいから座れ」
 キツめの命令調に加えて、彼からもそっち座ってあげてと言われてしまえば、黙って従う以外にない。仕方なく兄の隣に腰を下ろしたが、隣から漂ってくる不機嫌さにハラハラするばかりだった。
「そんな不安そうな顔すんなって。大丈夫だから」
「何が大丈夫だ。お前がこいつにこんな顔させてる原因だろうが」
 目の前に座る彼の優しい声音に、ホッと安堵の息を吐く間もなく、兄のトゲトゲしい言葉が耳に刺さる。
「いやいやいや。俺だけが原因なわけ無いだろ。俺とお前の両方。いやむしろお前が原因だって」
「なんで俺なんだ」
「んなの、お前に何言われるか、さっぱり想像つかないからだよ」
 そうなのかと振り向いた兄に問われて、それもあるよとどうにか返す。
「というか、なんで俺を呼んだの。別に、二人で決めてくれて良かったのに」
「決めるって何をだよ」
「こんな場所で、兄さんもいる場で、直接別れ話とかやだなって話」
「あー、クソ。本当に、付き合ってんだな」
 別れろってなら、兄に知られたから別れるって事後報告が良かった。なんて言う間もなく、兄に隣で嘆かれ驚く。
「えっ、その確認から?」
 聞けば、いくら言っても信じないんだと、前方の彼が苦笑した。
「は? じゃあ適当にごまかしといてくれれば良かったのに」
「信じられないからって、聞いた事、忘れられるわけじゃないだろ。で、お前、本当にこいつが好きなの?」
 恋愛的な意味でと注釈付きで聞かれて、諦めのため息を一つ。
「好きって言ったら、兄さん的には、親友が男の恋人作ったことと、弟が実はゲイだったこと、どっちのが衝撃的?」
「お前の方だよ。全然、知らなかった……」
 項垂れてしまった兄にゴメンとこぼせば、ゆるく首を振られて、謝るようなことじゃないと返された。でも頭は下がったままなので、何と声を掛けていいかわからない。
「俺がバイだってのは、一応、ソイツも知ってるからな」
 そんなこちらの惑いを見抜いたのか、彼の声が飛んでくる。
「といっても、男の恋人紹介するのはお前が初めてだけど」
「ねぇ待って。これ、恋人紹介の場、ではないよね?」
「俺的には、そうなりゃいいなと思ってるけど。というか、別れ話には絶対ならないから、そこは心配すんな」
「それ本気?」
「もちろん」
「兄さんが反対したら? 別れろって言ったら?」
「言ってもだよ」
 兄との親友関係を崩しても、自分を選んでくれるなんて、思えるはずがないのに。彼はあっさりとそう断言してしまう。信じられるわけがなかった。というよりも、自分がここに呼ばれた理由に、もう一つ、思い当たってしまった。
「つまり、俺にもう別れてって、言わせるために呼んだの?」
「ばっ、ちょ、なんでそうなんだ」
「あなた達の親友関係に、俺が、割り込めるわけない」
 だって想いを告げるよりも、今後も変わらず親友で居続ける方を重視しているくらい、彼は兄を想っている。彼の本命が誰なのか、自分は知ってしまっている。
「その程度の好きなら、別れろよ」
 兄の声だった。振り向けば、顔をあげた兄が怒ったみたいに睨んでいた。
「うん。別れるよ」
 精一杯の強がりでなんとか笑って見せれば、兄は驚いたように息を呑む。
「だから、兄さんは彼を許してあげてね。彼がバイだって知って最初に誘ったのも、好きになっちゃったのも、俺の方だからさ。兄さんの親友ってわかってたのに、誘惑して、本当にゴメン」
 帰ると言って席を立てば、待てよと言いながら目の前の彼も勢いよく席を立ちあがった。

続きました→

 
 
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