兄の親友で親友の兄5

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 一年を超えた最初の週末、切もいいしもう終わりと言われる可能性にドキドキと過ごした。
 普段と変わらない態度の彼といつも通りに接して、そのまま普段通りの夜を過ごす。でもそう出来たと思っていたのはやっぱり自分だけだったみたいだ。
 終えた後の彼はいつもみたいに甘やかな顔ではなく、どこか悩ましげな顔をしている。ドキドキが加速して、嫌な予感に逃げ出したい。
「何かあったか?」
「何か、……って?」
「それを聞いてる。例えば、俺への不満とか」
「そんな事言われても……何も、ないよ」
「じゃあ何を気にしてる?」
 言いたいことでも聞きたいことでも、何でもいいから今考えてることちょっと言ってみろと言われたって困るばかりだ。なのに。
「ほら、言えないような何か抱えてるってことだろ。で、何があった?」
「言えないようなこと、ってわかってるなら突っ込んで聞かないって選択ないわけ?」
「俺には絶対に話せないってならそれでもいいけど、今後も今日みたいなセックス続くなら、お前と別れることも考えるぞ」
 別れると口にされてギュッと心臓が痛んだけれど、同時に、まだ別れることは考えてないって意味ともとれる言葉に期待が膨らんでしまう。
「今日の俺、そんなに変?」
「変っていうか、何か無理してる感じはする。というか俺に怯えてないか、お前」
「ねぇ、俺と別れることも考えるって事は、今はまだ、俺と別れることは考えてない?」
「ないけど。まさか気にしてたのそれか? 俺、お前と別れたいような素振りなんか見せてた?」
 だって……と口ごもってしまえば、そう簡単に別れたりしないから言ってみなと促される。
「だって、一年経った、から」
「お前と付き合う時、期間は一年とか決めた記憶ないけど?」
「でもしばらく恋人しようって言ったろ。しばらくって、いつまでを指すの?」
「お前が俺を嫌になるか、俺より好きな相手ができるか、本命を落とすかするまで?」
「なに、それ」
「お前次第でいいよって意味。俺の方から期間も決めずに誘ってんだから、お前が別れたくなったら別れるんでいい。って、もっと早くに言ってやればよかったのか」
 俺から別れようって言い出すことはないよと、穏やかに笑われて、安堵していいはずなのになんだか切ない。嘘つきって思ってしまうのは、別れるって言われて胸が痛む思いをしたのが、ほんの数分前の話だからだ。
「信じてないな?」
「だって、ついさっき、今日みたいなセックス続けるなら別れるって言ったし」
「そりゃあ、お前の俺への気持ちが変わったのに、言い出せなくてズルズル抱かれ続けるってなら、俺の方から止めようって言うことだってするさ。お前の気持ちが俺から離れてるのに、体が気持ちいいから、甘やかされるのが心地良いから、セックスする関係を手放したくないだけ、ってのを俺が許すと思うか?」
「それは思わない、けど」
「お前が俺を、これまで通り本命以外の一番に置いてるうちは、俺からお前に別れを突きつけることはしない。これなら信じるか?」
 マズい。泣きそうだ。
「うん……」
 頷きながらも彼の目から逃げるように俯いてしまえば、不審に思われるのは当然だろう。
「お前……」
 少し戸惑う声とともに頬を両手で挟まれ、いささか強引に上向かせられて潤む瞳を見つめられながら、終わった、と思った。自分の中での本命が曖昧になってしまっている事実を、もう、彼に隠し通せない。

続きました→

 
 
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