兄の親友で親友の兄6

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 まだ何か隠してるなと言って眉を寄せた相手に、やっぱり「だって」としか返せなかった。
 必死で相手の視線から逃れようと視線を泳がせれば、頬を挟んだ手が放される。またすぐ俯いてしまえば、小さなため息が聞こえてきた。
「お前が俺を嫌になるか、俺より好きな相手ができるか、本命を落とすか。さすがに最後はないのわかってるから、前二つのどっちかが、既に起きてるってことでいいのか?」
「ちが、……うっ」
 声が喉に詰まって震えて、ボロリと涙が溢れていく。そのどちらでもないけれど、お互いに本命が別にいるという前提が崩れたら、やっぱりもうこの関係は続けていられないんじゃないかなと思ってしまう。
「じゃあ、何?」
「いいたく、ない。……って、いった、ら?」
「泣くほど深刻な状況抱えてんのにか?」
「だぁ、ってぇ……」
「おっ前……」
 俯いているとは言え、ボロボロと流れる涙をごしごしと何度も拭っていたし、声はずっと引きつって震えっぱなしだし、こちらの状態は当然気づかれているんだろう。呆れた声と共に伸びてきた腕に抱きしめられて、落ち着けと言わんばかりに頭やら背中やらを優しく撫で擦られる。
「よしよし。お前、ホント、何があったよ。なぁ、やっぱ俺のせいで泣いてんの? 悪いようにはしないから、言ってみなって」
 グズグズ泣き続けてる間、腕の中であやされながら何度も大丈夫だから話せと繰り返されて、とうとう貴方が好きだと口に出す。
「俺だって好きだ」
「でも、本命は今も、兄さん、でしょ」
 相手の胸に身を寄せて、離れたくないと強く抱きつけば、「ああ」と納得混じりの短な肯定が返された。
「つまり、情が湧きすぎて、俺がお前の本命に繰り上がった?」
「ごめ、なさい……」
「あー……謝るのは俺の方。悪い。気づかなかった。というかそうか。お前、本命が誰か隠すの、慣れすぎだろ」
 お前の本命に繰り上がったら気づけると思ってたんだと言って、相手はもう一度悪かったと繰り返す。
「最初っから、そうなる可能性も込みで誘ってる。ただ俺を好きって言うようになってからも、お前の本命に繰り上がったと思うようなことってなかったから、この関係を都合よく利用できてるんだろうと思いこんでた。上手に隠しきってる可能性を考えなかったのは俺が悪い」
「な、んで。だって、でも、」
 混乱しきって何を言っていいかわからない。なのにそれでも口を開いて、混乱する気持ちを吐き出してしまう。
「本命に操立てて恋人作ったことないお前をどろどろに甘やかして、情を引っ張り出すようなセックスしてたんだから、お前の中の好きがどうなるかは俺にもわかんなかったんだよ。ただ、どう転んでもいいつもりだったから、お前の恋人続けてた」
「でも、でも、兄さんが、本命で」
「ああ、うん、そうだな。俺の本命はお前の兄貴だよ。ただ、お前との関係を始める前に言ったけど、それなりに気持ちに整理はついているから、あいつとは今後も変わらず親友で居られればいいんだ」
 恋人として好きだと思ってるのは今はお前だけだ、なんて言い方は凄くずるいと思う。けれど、本命が変わってしまったことを知られても関係はこのまま続けていいんだ、という安堵の方が大きくて、またボロボロと涙が溢れて止まらず、それどころじゃなかった。

続きました→

 
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