兄の親友で親友の兄3

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 なんということはなく、錯覚する隙をくれないってだけのセックスをした。誰に抱かれてるか忘れるなとでも言うように何度も彼の名前を呼ばされたし、長く目を閉じることも許されない。錯覚しかけるとわかるらしく、その都度、目の前にいる男が誰かを意識させられ引き戻されてしまう。ただ行為そのものは丁寧で優しかったし、こちらから呼んだ以上に何度も名前を呼ばれたし、可愛いだとか気持ちいいだとかリップサービスも多かった。
 当たり前みたいに好きだの言葉も掛けられて、さすがに最初は別の本命が居るくせにと思いはしたが、でも繰り返される内に本命がどうとかって反発心は消えていった。だって彼のリップサービスは、どれも興奮を煽る口先だけのものじゃないと思わせる何かがあった。元々お前を好きだと思ってたの言葉通り、本命ではなくても好意はちゃんとあって、彼はそれを伝えてくれているだけなのだと、途中で理解してしまったからだ。
 思いの外どっぷりと甘やかされるみたいなセックスをされて、終えた後は正直言って戸惑いが凄かったし、それをわかっているらしい相手はどこか可笑しそうに苦笑していたが、その表情までもなんだか優しい。凄く、変な感じ。
「一応の確認だけど、続けられそうか?」
「続けるって?」
「そりゃ俺との恋人関係をだ」
「そっちこそ、どうなの? 自分を好きと思ってない相手抱くの、嫌なんでしょ?」
 彼の手管で錯覚は起こらなかったけれど、好きだと言われて好きだと返せはしなかった。付き合うとは言ったが、それがイコールで彼を好きだと思いながら抱かれるになるわけじゃない。
「まぁそれはそうなんだが、わかってて誘ったのこっちだし、それはいい。むしろ楽しみにしてる」
「楽しみって、何を?」
「お前の中に俺への情が湧くのを」
「本命ではなくてもちゃんと好き、みたいな?」
「そう。わかってんじゃないか」
「好きって言われて、兄さんが好きなくせにとは思ったけど、でも俺を好きなんて嘘ばっかとは思わなかったから、両立はするし両立させてもいいんだ、てのは、まぁ、わかったかも」
 言えば満足気な笑顔とともにわしゃわしゃと頭を撫でられる。
「なんだよお前、ずいぶん素直なのな。好かれたら困るとか言ってたし、俺に抱かれたい好奇心で付き合うって言っただけで、一回抱かれたら別れようとか思ってる可能性考えてたけど、それはない?」
「あっ……」
 その手があったか、とは言われてやっと気づいたくらいに、全く考えていなかった。
「うん。お前が素直な単細胞でよかった」
「バカにしてる?」
「してない。可愛いなぁとは思ってる」
 乱雑に髪を掻き乱していた手が、一転して優しく髪を梳いていく。その手付きがもう、恋人を甘やかすそれなのだとわかってしまう。慣れなくてやっぱり少し戸惑った。
「じゃあ、しばらくは俺と恋人しような」
「あ、はい」
 柔らかな笑みとともに告げられ頷いてしまえば、ますます柔らかで嬉しげな笑みになる。ちらりと、しばらくっていつまでだろうと思ったけれど、それを聞くことはしなかった。

続きました→

 
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