昔から雷はとても苦手だった。苦手なものには敏感になるようで、今日も空が気になってたまらない。
暗く広がる雲と、かすかに聞こえるゴロゴロと空気が震えるような音。あれが近づいてくる前に駅まで辿り着ければいいなと焦りながら、住宅地の中をかなりの早さで歩いていく。
やがてポツリと雨が降り出し、ゴロゴロと響く音も近くなり、それはあっという間に大雨と空に走る稲妻となった。そうなるともうだめだ。
時折ピカッと光る空に身が竦むし、折りたたみの傘はあるが怖くて差すこともできない。住宅街で周りは家だらけで、もし雷が落ちるとしたって自分の傘にピンポイントで落ちるなんてことはないとわかっていつつも、怖いものは怖かった。
困った。どうしよう。などと考える余裕もなく、たまたま通りがかった家の頑丈そうなガレージに飛び込んで、一番奥まで進みその隅にうずくまる。両手で耳を塞いで目を閉じて、このまま雷が遠ざかるまでの時間をやり過ごすつもりだった。
しかし五分も経たないうちに、空っぽだったガレージに車が入ってくる。さすがに慌てて立ち上がってしまったので、運転席の男とばっちり視線が合ってしまった。
戸惑いその場でおろおろとしてしまえば、すぐに車はエンジンが切られ、運転席の男が降りてくる。
「お前、誰?」
「ご、ごめんなさいっ」
ガレージだって立派な不法侵入だぞと凄まれて、あわあわしつつも深く腰をおって頭を下げた。
「謝罪より説明して。ひとんちのガレージでなにしてたの」
「あ、あの、雨宿り……を」
「雨凌ぐにしちゃ奥まで入りすぎ。けどまぁいいや。やっすいビニル傘でいいならあげるから、出てって」
「あ、あの、それは、ちょっと……」
相手の眉が訝しげに寄せられて、確かにこれは怪しいよなと自分でも思う。でもまだ雷の音は聞こえているし、とてもここを出ていける状況にない。
「あの、めちゃくちゃ怪しいの自分でもわかってるんですけど、別に何かを狙って入り込んだ不審者とかではなくてですね、本当にもう暫く雨宿りをさせてほしいだけで、ひいいっっ」
話している最中にひときわ大きな雷鳴が轟き、情けなくも悲鳴を上げてしまった。それどころか、腰が抜けてその場にへたりこんでしまう。
体が震える。少しでも落ち着きたくて震える手を耳元へ運ぶが、つかつかと歩み寄ってきた男がスッと腰を落とし、上げかけた両手を掴んでくる。
「ごめんなさい。ごめんなさい。お願い、手、放して」
「雷が怖いのはわかった。でもまだ耳は塞ぐな。立てるか?」
早く耳をふさがなければと内心パニックになりかけたら、思いの外優しい声音が耳に届いた。しかしその声に落ち着けるわけもなく、また大きく鳴った雷に、腕を掴まれたまま盛大に肩を跳ねる。
「て、…って、を」
もはや半分近く泣きかけながら手を放してと訴えれば、諦めたような溜息とともに両手が開放された。すぐさま両耳を塞いで目を閉じる。
しかし、なるべく小さくなっていようと身を縮めようとしたら、急に体がふわりと浮いた。
「えっ?」
耳は塞いだまま、それでも驚いて目は開いた。間近に見えたのは男の横顔で、どうやら抱き上げられているらしい。こちらが驚きで凝視しているのをわかっているだろうに、素知らぬ顔でそのまま歩かれ、そのままあっさりと家の中に連れ込まれてしまった。
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タブレットが暑さにやられ、出遅れちまった。
復活したら「雷」が聞こえて、あ、運命かも(^-^)
こちらへもコメントありがとうございます!
これ書いた日の早朝、めちゃくちゃ激しい雷雨で目が覚めて、あーじゃあ今日の更新はこれでとなりましたw
初めまして。
こちらの小説を支部にて半年程前に拝読させていただきました。
どれだけ時間が経っても内容をハッキリ覚えているほど、大好きな作品です。
それをどうしても伝えたくて、コメントさせていただきました。
これからもご活動頑張ってください。楽しみに待っております。
はじめまして。
シブからこちらまで来ていただいて、しかもコメントまで残してくださり、ありがとうございます。
しかも大好きな作品とも言ってもらえてとても嬉しいです(∩´∀`)∩ワーイ
まだ暫くはこの2日に一回更新の形でアレコレ書き続けていくつもりですし、大半はピクシブへも投稿すると思いますので、今後もよろしくお願いします〜