どうにか彼とキスできる関係になれないかと考えた結果、彼を合コンに誘ってみた。ファーストキスを男なんかにと思っているなら、女の子相手にファーストキスを済ませてもらえばいいのだ。こっちはキスどころかセックスだって経験済みなのだから、貰えたら嬉しいだろうとは思うが、なにがなんでも彼のファーストキスが欲しいと思っているわけじゃない。
ただ、女の子の扱いを学んだところで実践と行こう。という言葉をまるっと信じて、あっさり参加を了承したあたり、本当にチョロくて不安になる。こちらの思惑通りにすんなり進むから楽でいいんだけど。
そしてベタだけれども仕込み有りの王様ゲームをして、女の子相手のキスを経験してもらった。ファーストキスに夢見てるらしいからちょっと可愛そうかなとは思ったけれど、女の子とってのは叶えてあげたのだから許して欲しい。
なお、照れまくって動揺して挙動不審になってた姿はたいへん可愛らしかった。けれど、ゲーム終了後、逃げるようにトイレに立った彼の顔はなんだか泣きそうだ。
慌てて追いかけたトイレで、彼はゴシゴシと唇を擦り洗っていたから、さすがに罪悪感で胸が痛む。
「えっと、ごめん、ね」
「なんで謝るの」
「合コン連れてきたの俺だし、王様ゲーム提案したのも俺だし、あの命令した王様は俺じゃないけど、一緒になって囃し立てはしたから」
そしてこれは言えないけど、そのキスを仕組んだのが自分だからだ。
「こんなのでもなきゃ、女の子とキスできる機会なんてないんだから、むしろラッキーだったよ」
どうにか笑ってみせる顔が痛々しくて、ますます胸が締め付けられる。いやこれホントに、結構失敗しかもしれない。こんなショックを与えるつもりじゃなかった。
「本気でそう思ってないでしょ。ファーストキス、好きな子としたかったよね。ごめんね。止められなくて」
言えば瞳にぶわっと涙が盛り上がる。ああ、とうとう泣かせてしまった。
「悪いのお前じゃない。自業自得、なんだ」
全く意味がわからない。俯き涙を拭う相手に、どういう意味かと尋ねてしまうのは仕方がない。
「キス、好きな子と、しとけばよかった」
「は? え? 好きな子いたの?」
初耳なんだけどと続いた声は、嫉妬と焦燥にまみれて、自分でも驚くくらい低く重く響いてしまった。
「ファーストキス、もったいぶらずに、さっさとお前にあげとけば、良かった」
「はぁああ? えっ、ちょっ、俺ぇ!?」
あまりの衝撃に素っ頓狂な声を上げてしまったが、相手は俯いたまま肯定を示すように頷いている。
ああこれ、本当に、失敗した。いつから彼の気持ちは自分に向かって居たんだろう。それに気付けず、貰えたかも知れない彼のファーストキスを、自らそこらの女に渡してしまった。あまりの自業自得さに、一緒に泣きたいくらいだ。
「ねぇそれ、本気にするけど。俺と、恋人になってくれるの?」
確かめるように告げた言葉にもやはり頷かれたから、少し開いていた距離を詰めて相手の手を取った。
「なら、一緒に抜け出しちゃおうか」
さすがにこんなトイレで彼との初キスを済ます気はない。というか王様ゲームのキスなんてノーカンってことに出来そうなくらい、ちょっとロマンチックな演出決めつつキスしたい。
どこに連れていけば可能かと必死で脳内フル回転しながらも引いた腕に、彼はおとなしくついてくる。チラリと伺う背後の彼は、泣いた目も目元も頬も、耳までもが赤い。
ようやく捕まえた恋人が、可愛すぎてたまらない。
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