背に回っていた腕が解かれて、肩を捕まれ引き剥がされる。とは言っても大きく突き放されたわけではないから、正面から見つめ合う距離はかなり近い。
「ちょっと、試してみないっすか」
真剣な顔に告げられた言葉の意味が良くわからなかった。
「え、何を?」
「スキンシップ、どこまで出来るか」
先輩がされたいことを教えてくださいと、大真面目に言われてしまって大いに慌てる。
「ちょ、待って待って。少し整理させて。つまり、俺とエロいことしてもいいって思ってる。……って話だったりするの?」
「まぁ、そうかもしれないっす」
「曖昧だね」
「先輩とエロいことしたいって気持ちがあるわけじゃないんすけど、先輩がしたいならしてあげたいとは思うというか。けど、俺だって男相手とか全く経験ないんで、実際先輩が満足出来るまでやれるかわからないし、やってみたらやっぱ男気持ち悪いとか思う可能性もゼロじゃないんすよね」
だから一回試してみませんかという話らしい。ツッコミどころ満載すぎてどうしよう。
したいならしてあげたいとか、こっちは先輩なのに随分と上から目線だし。数か月前までは中学生だったくせに、まるで女となら経験あるみたいな言い方だし。やっぱ男気持ち悪いって放り出す可能性あるのにチャレンジしたいとか、気持ち悪いって言われるかもしれないこっちの身にもなれよって話だし。
「えーっと、取り敢えず一番重要そうなとこから聞くけど、それでもし色々クリアして俺とキモチイ事が出来たとして、そしたらお前どーすんの?」
「告白するつもりっすけど?」
何を当たり前のことを聞いているんだと言いたげな様子に、そこに繋がるのかと少しばかり納得してしまった。
「あのさ、罰ゲームだから続けられないってのは、お前とエロいことが出来ないからって意味じゃなかったんだけど」
「えっ?」
ビックリされて、やっぱそういう風に思ったんだなとわかって苦笑する。
「でも、俺が先輩とエロいことできれば、先輩的には俺が恋人でも問題ないんじゃないんすか?」
「まぁ確かに俺はそれでいいけどさ。でも俺が問題なくても、お前に問題あるでしょーよ」
「俺の問題? って何っすか?」
「だって俺はどうせ今年で卒業するし、既にあれこれあまりよろしくない噂持ちだから、とうとう男の恋人作ったって思われたって別にいいんだけど。でもお前はまだ、罰ゲームに利用された可愛そうな後輩ってだけだろ。これから彼女作ったり青春謳歌したいだろ。なのに俺の恋人だったなんて期間作ったら、確実にそれ、お前の高校生活での汚点になるからね?」
「彼女作るより先輩とバスケするほうが何倍も楽しいんで別に。汚点になるとか考えすぎじゃないっすか。だいたい、先輩と付き合うのが高校生活の汚点になるなら、なんで先輩に告白する女の子、居なくならないんすか」
女の子とこの後輩とが同列に語れるわけがない。なのに相手は全く納得がいっていないようだった。
「ほぼ断られないのわかってるから告白しやすいんでしょ。取り敢えず彼氏が欲しいってだけの子でも、フリーだったら喜んでお付き合い始めちゃうからね。でも男のお前が俺の恋人しても対外的に何の特にもならないどころか、高校生活初っ端から男と付き合ったりしたら、女の子から相手にして貰えなくなるよ?」
「だからさっきから、彼女なんて要らないって言ってるじゃないすかっ」
先程から少々ムッとした様子を見せてはいたが、とうとう苛立ちをぶつけるような怒気を孕む声を吐き出してくる。
「それは経験的な話で言ってんの? 中学時代にモテモテで女の子とは十分楽しんだから今度は男でもいいやって気になったってなら、お互い様だしもう何も言わないけど。でも付き合ったこともないのに、彼女いらないなんて言ってるだけなら、ホント、俺なんかと付き合おうとするの止めときな」
「中学の時には彼女いたし童貞でもないっす。これで満足っすか」
「わかった。もう止めない。お前が本当に告白してきたら、お前と付き合う。これでいい?」
「何言ってんすか」
それでいい訳がないと呆れながらも、まずは試させて下さいと相手の言葉が続いた。
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