口を離して顔を上げれば、相手はやはり困惑の色合いの強い顔でこちらを見つめていた。
「気持ち悪くなかった?」
「変な感じはあるっすけど、まぁ、取り敢えず耐えられなくはないっすね。それに先輩、楽しいみたいなんで」
「何それ健気」
思わず苦笑してしまったら、試されてる側なのでと返されて一瞬首を傾げてしまう。
「ね、それ、俺がお前を試してるみたいな言い方だけど、逆じゃない?」
言えば相手も不思議そうに少しばかり首を傾げた。
「だってどこまで出来るか試そうって言い出したのも、告白してきたら付き合うって言ったのにまずは試させろって言ったのも、お前だよ?」
「付き合ってもすぐ振られるんじゃ、意味ないんで。俺だって、本気になってから振られたら、やっぱ人並みに傷つくんすよ」
「ん? ちょっと待って。本気になるってどういうこと?」
「これ試して先輩が満足できそうなら、告白するって言ったっすよね」
「うん。聞いたけど」
でもそれが本気になるとか振られたら傷つくとかって話と、どう繋がるのかわからない。どういうことだと頭の中に疑問符を飛ばしてしまう中、相手も同じようにわけがわからないと言いたげな顔をしている。
「罰ゲームじゃなく本当に恋人になるって事は、本気で好きになっていいって事じゃないんすか?」
「は?」
呆気にとられながらも、思いの外大きな声を漏らしてしまった。
「え、お前、俺を好きになる気でいるの?」
「好きでもない相手に告白して付き合って下さいとか、罰ゲームじゃなく言うと思ってんすか?」
既に結構好きになってんすけどと拗ねた口調で言われてますます唖然とする。
「え、だって、お前、俺とバスケするの楽しくてこれ続けたいんじゃないの?」
「それが目当てで続けたいとは言ってないすよ」
「そ、だっけ?」
先程の会話を必死で思い出す。確かに、彼女を作るより一緒にバスケするほうが楽しいと言われただけで、バスケをしたいから続けたいと言われたわけではなかった。
「あー、うん、そうだね。続けたいのは俺にたぶらかされたから、だっけ。てかそれ、俺を好きになったって意味か」
「じゃあどういう意味と思ってたんすか」
「甘ったれで万年スキンシップ不足の、一人で食事ができない可愛そうな男を見捨てられない、的な意味かと。だってお前、なんだかんだ俺の罰ゲームに付き合って毎週泊まりで飯作りにくるようなお人好しだし。真面目だし、優しいし、年下のくせに俺を甘やかすし、実際なんか心配されてたし」
言い募れば、確かにそれもあるっすねと肯定されてしまった。やっぱりね。
「けど好きになってなきゃ、心配もしなけりゃ、続けたいとまで言わないっすよ。先輩が言うほど、そこまでお人好しでも優しくもないんで」
「そっか……あのさ、まだ本気で好きになってないなら、やっぱ引き返さない?」
キスして胸弄り回しちゃったけど、でもまだギリギリセーフじゃないかと思う。性器触ってないし、触らせてもないし。はっきり気持ち良くなってないし。いやでも、先輩のキスすっげキモチィとか言わせるほど、頑張って感じさせちゃったか。
「それ、どうせ続かないから、結局振られて傷つくのはお前だって、言ってるんすよね?」
「う、うん、ゴメン。もっと軽い感じで考えてた、かも。罰ゲームの恋人って、俺を好きじゃない相手は楽でいいなとか、思ってたりもしたし。ホント、自分で言うのも何だけど、本気の恋人向けじゃないからさ」
「別に、俺が重くなって振るなら、いいすよ」
「どこがだよ。良くないでしょ。本気になってから振られたら傷ついちゃうって、お前が言ったんだろ」
「正直言えば、俺の好きが重いとか言って振られる気は全くしてないっす。どう考えたって、俺より先輩のが甘えたがりの構って欲しがりっすもん。ただ、俺も先輩も男としたことないじゃないすか。男同士で先輩のエロ方面がどこまで満足できるのかわかんないのと、俺がどこまで出来るかわかんないから、それが合わなくて先輩が不満ためて上手くいかない可能性は高いだろうなって思うんすよね」
だから先に試してみて、ダメそうならさすがに諦めます。との事らしい。
「諦められるなら、今のうちに諦めたほうが良くない?」
「試さずに諦めるのは嫌だ、と思う程度には、もう好きなんで。それに、俺に突っ込む気がないのも聞いたし、触られても舐められても、今のところ気持ち悪いと思ってないっすもん」
引き寄せられて柔らかに背を抱かれながら、先輩が続けないなら次は俺がしますという言葉が、とろりと耳の中に流し込まれた。
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