Wバツゲーム2

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 昼ご飯を一緒に食べながらお互いに簡単な自己紹介を済ませ、連絡先を交換し、放課後は相手の部活が終わるのを教室で待つ。自己紹介で気楽な帰宅部だよと笑っておいたから、待ってると伝えた最初、相手は長時間待たせる事になるのでと渋ったけれどそこは譲らなかった。
 だって罰ゲームのせいとはいえ、自分たちはいま恋人なのだから。
 どこの部活にも所属せず帰宅部なのはこっちの都合だし、恋人の部活が終わるのを待つのだって慣れている。だから気にする必要なんてない。
 そう言ったらモテるんですねと返ってきたから、でも二股とかはしたことないよと、慌てて誠実な男である事をアピールして置いたが、今回恋人になったのは、自分の性別すら今朝まで知らなかったような相手だということを失念していた。
 まぁ自分たちの罰ゲームによる交際は面白おかしく広がっているだろうから、どうせすぐ、自分のことはアレコレ相手の耳に入るだろう。二股はしない程度の誠実さはあっても、それなりの頻度で彼女が変わる、恋人にするには不向きな男だってことも。
 決して全国なんて目指さない、はっきり言えば県大会に進むことすらない我が校のバスケ部の練習は、十八時半が終了時間だ。夏が近いこの時期はまだ日が沈みきっておらず、軽やかな足音が勢い良く近づいて来るのに合わせて顔を上げれば、教室の窓からは綺麗な夕焼けが見えていた。
 教室のドアの前で足音が止まり、一拍以上置いてからゆっくりとドアがスライドしていく。
「遅くなりましたっ!!」
 中を窺う様子の相手と目があった瞬間、ドアを開ける動作と似合わない勢いで相手が声を放ち、それから深々と頭を下げる。ここへ来るまでに随分と急いだのか、息が上がって肩が揺れている。
「お疲れ様。そんな急がなくて良かったのに」
「いえ。かなり待たせてしまったので」
 慣れてるって言ったのにと思いつつ、苦笑しながら机の上を素早く片付け、カバンを手に席を立つ。
「じゃあ帰ろうか。駅前のコンビニかファミレスかファーストフード、どっかしら寄りたいんだけどいい?」
 一品おごるよと言ったらビックリした顔で、待たせた上に奢られる理由がないと返された。
「お前を待ちたくて待ってたのはこっちの都合。どっかしら寄りたいのも俺の都合。お前の時間大丈夫なら、一緒に飯食ってから帰りたいんだよね」
「デートってことすか?」
「ん? あー……うん、まぁ、そんな感じ」
 デートではないなと思ったけれど、恋人という関係だから相手を誘っているのは事実なので、まぁいいかと肯定すれば、相手はわかりましたと神妙に頷いてみせる。
 そのまま連れ立って、黙々と並んで駅までの道を歩いた。バスケの話題にあまり触れたくないなと思ったら、あっと言う間に話題が尽きたせいだ。
 相手からも特に話題提供はなく、この相手と最低一ヶ月と思うと前途多難な気がした。チラと窺う相手は会話がなくとも平然としていて、特に不満そうではないのが幾分救いだったが、平然としすぎていて内心どう思っているかはさっぱりわからない。
 それでも駅が近づけば、この後どこへ寄るかを決めなければならない。しかし、やっと会話が戻るとホッとしつつどこがいいかと聞いたら、あっさりどこでもいいですと返されて、会話というほどの会話にはならなかった。
 結局、軽めからガッツリまで好きに選べるファミレスに入って、自分は普通にハンバーグのセットを頼み、相手は奢ると言ったのを気にしたのか一番価格の安いパスタを頼んだ。
「ずいぶんガッツリ食べるんすね。夕飯、食べれなくなりませんか?」
「俺はこれが夕飯だから。お前こそ、パスタ一人前頼んでたけど平気? もしこれで夕飯食える量減りそうなら、一ヶ月は夕飯少なめにって親に頼んどいて」
「え、まさか毎日、帰りに一緒に食事するんすか?」
「うん。そのつもり」
 今までの彼女ともそうしてきたしと言ったら、ますます驚かれてしまったが、驚かれる理由はもちろんわかっている。恋人だからで済まないおかしなことをしている自覚はある。
「あ、親に言いにくいなら、あまり腹に響きにくいサラダとか小さめのデザートとか、後はドリンクだけとかでもいいからさ。時間ないなら諦めるけど、時間大丈夫ならなるべく俺の夕飯に付き合って?」
「はぁ……」
 納得はされてないなと思ったけれど、自分から細かい事情を話す気にはなれなかったし、相手も聞いては来なかった。そして料理が届けばまたお互い無言でそれらを平らげていく。
 こんなでも一人よりは全然マシだけれど、やっぱり付き合ってと告白してくれる女子たちとは全然違う。思っていた以上に罰ゲームは罰ゲームなのだなと、零れそうになるため息を飲み込んだ。

続きました→

 
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