Wバツゲーム4

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 食器を洗い終えた相手が先程と同じように対面の椅子に腰掛けるのを待って、淹れて貰ったお茶を一口啜って一呼吸おき、それからまず聞かせて欲しいんだけどと話を振っていく。
「多分色々俺の話聞いてると思うけど、俺の何を聞かされてる?」
「ただの噂っぽいのも、全部、っすか? それとも俺が信じたことだけ?」
「取り敢えずはお前が信じた話だけでいいや」
「それなら、家庭の事情で一人暮らしだけど、それが寂しいらしいこと。家の大半のことは通いの家政婦さんがやってくれるけど料理はしてくれないこと。の二点っすかね」
「それだけ?」
「実際数日一緒に帰って、確実ぽいと思ったのはそれだけす」
 合ってますかと聞かれたので、だいたいはと返した。
「自分で家事、しないんすか?」
「家政婦さんが来てくれるのは、お勉強頑張って欲しい親の意向だからね」
 とはいえ、それが表向きの理由だということはわかっているし、はっきり言えば親の見栄と責任とで派遣されているだけだ。
「なら料理も作ってくれる人を雇って貰うよう、親に言ったらどうです?」
「いや、最初は作ってもらってたよ。でも俺が断った」
 なぜかと聞かれたので、一人ご飯は寂しいからと返せば、あっさり納得したらしい。
 一人で食事をするのが嫌いだというのも本当だけれど、毎日食事を作ってもらうと、家政婦さんに毎日通われてしまうというのも大きな理由の一つだ。一人暮らしを余儀なくされた最初の頃、監視役として家政婦さんが派遣されているのではと疑っていた時期もあって、毎日通われるのが鬱陶しくて仕方がなかった。
 結局、友人たちと食べて帰ることが多いからの一言で食事の用意はなくなったし、一人暮らしの掃除洗濯など毎日の必要が無いと言ったら、通われるのは平日一日置きの週三回へとそちらもあっさり回数が減って、監視されていると思っていたのはただの思い込みだったらしい。
 それはそれで、些かショックを受けている自分に気付いて凹んだこともあったけれど、腹いせのように家政婦さんへ渡す報酬が減った分を自分に回してと言ったのすら簡単に了承されてしまい、諦めの境地に立たされた。それがだいたい高校一年の終わり頃だ。
 双方の仕事の都合で仕方なくと言いつつも、義務教育が終了したから放り出されただけに過ぎず、物心ついた頃から薄々感じてはいたものの、親は実の子である自分に対してさして興味がない。悲しいことに、両親ともに子供を作ったのが間違いだと言わざるを得ないような、似た者夫婦なのだ。さすがに面と向かって言われたことはないが、きっと子供を作ったことを後悔しているだろう。
 それでも、作ったからにはという責任からか、金銭で解決することには惜しみなく金を注いでくれる事はありがたい。家庭向きではない、親になれない似たもの夫婦の二人は、仕事という面においては優秀らしく、どちらも収入の多い仕事に就いているので、金銭的な苦労はしたことがない。
 ただそんな親だけれど、なんでもかんでも許すかと言えば、そういうわけでもなかった。やりたいと言ったことはやらせてくれたし、必要だと言えば大概のものは買っても貰えたが、自己責任というのも同時に叩き込まれてきた。
 ゲームがしたければすればいい。勉強したくないならしなくたっていい。けれどその結果、将来どんな仕事につきどんな生活を送ることになっても、親に助けてもらえると思うなと言うやつだ。学生であるうちは親としての責任で養うが、それ以降は親の金は当てにするなと言われている。
 家政婦さんによる監視はないとはいえ、たびたび女の子を部屋に連れ込んでいるのも一応伝わっているようで、一度だけ、万が一子供が出来たら独り立ちさせると脅されたことがある。それ以降は相変わらず放置だけれど、確かにその脅しは秀逸で、さすがに高校を中退して親の助けもなく妻子を養う生活なんて考えられるはずもない。なので、ころころと彼女が変わってもそう乱れた性活をしているわけではないというか出来ないのだけれど、親がそれをわかっていて釘を刺したようには思えないのがなんとも虚しい。

続きました→

 
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