Wバツゲーム6

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 相手の言葉を打ち消すつもりで、咄嗟にこちらも言葉を吐けば、相手は不満そうな顔で何が無しなのかと聞いてくるから困る。いや困るというよりは、気まずいような照れくさいような気持ちかもしれない。
「恋人を親代わりにしてたつもりは一切ないよって事だよ」
 口からはそんな言葉を零しながらも、内心はそこまで自信がなかった。指摘されるまでまったく自覚がなかっただけで、親から与えられなかった愛情と関心とを彼女たちに満たしてもらっていた可能性は高そうだ。
「それに親相手にセックスしたい気持ちなんて欠片もないし」
 言い募れば言い募るほど、さきほどの相手の言葉に動揺した自分を晒すようなものなのに、わかっていても言葉は口から吐き出されてしまう。唐突な指摘と自覚に、かなり焦っているのかも知れない。
「えっ?」
「えっ、ってなに。俺って親までセックス対象に出来るような男に見られてる? それともまさか親とセックス容認派なの? 多分それ、かなり少数派だと思うんだけど本気で言ってる?」
「ちょ、焦りすぎじゃないすか」
 焦り過ぎという指摘には、はっきり自覚があったぶん、強い羞恥が湧き上がった。多分顔は赤くなっている。
「あー、その、親の話じゃなくて、彼女の方の話で……」
 気まずそうに相手の視線が泳ぐほど、動揺と羞恥は顔に出ているんだろうと思った。耐えきれなくて顔を隠すように項垂れながら、彼女が何と続きを促す。
「噂の中に、表面的には優しいけどエッチはしてくれない、しつこく誘うと振られる、みたいなのがあったんすよ。だから欲しいのはお母さんって方が凄くしっくりくるんすけど、そうじゃなくて恋人とセックスしたい気持ちがあったんだと思ったら、ちょっとビックリしたっつうか……」
 もごもごと説明された相手の言葉に、思わず目の前のテーブルに額をぶつけた。
 噂の出処は過去に付き合ってた彼女たちなのだから、女の子たちの自分の評価ってそんななのかと思うと、笑ってしまいそうだった。もちろん、どんな噂をされようが悪評をばら撒かれようが構わないと思ってなければ、一つところで何人もとっかえひっかえするべきじゃない事は承知している。
 だとしても、エッチしてくれないってどういうことだ。そう言われるほど、してなかったつもりはなかった。ただ最初の数人以降は、確かに繋がるような行為もそれに近い行為もはっきりと避けていたから、互いの体に触れ合って気持ちよくなるだけではセックスではないと言うなら、自分は恋人とセックスしてはいなかったんだろう。
「お前さ、コンドームの避妊率って知ってる?」
 大きくため息を吐いてから、机に打ち付けていた頭を上げて相手を真っ直ぐに見据えて聞いた。
「確か、九割くらいじゃなかったすか」
 何だ突然と腑に落ちない顔をしながらも、相手は素直に数字を出してくるから、小さく笑って訂正してやる。
「俺が調べた時は、ゴム使った避妊失敗率18%って出てたわ」
「でも一般的な避妊方法って言ったら、それっすよね?」
「うんそう。18%を少ないと思うか多いと思うかは人それぞれだと思うけど、俺にはその数字は結構リスクが高いんだよ。かといって、同い年とか年下の女の子相手に、産婦人科行ってピル処方して貰ってきてくれたらセックスしてもいいよ、なんて言えるわけ無いから、突っ込むセックスはしないってだけ」
 わかって貰えるかと聞いてみたら、俺も男なんで一応はと返されたから、ホッとしつつ更に少しだけ事情を話してみることにした。
「うちさ、こうして俺が一人暮らしした上に家政婦さんまで派遣されてるくらい、確かにそこそこ親の金回りはいいんだけど、でも俺に対して甘いわけじゃないんだよね。そこ誤解されがちだけど」
 なんせ、もし避妊に失敗して子供が出来ても学生結婚すればいいし、シッターさん雇って子育て手伝ってもらえば大学にだって通えるでしょって言われた事がある。付き合った子皆がそんな考えではなかったけれど、少なくとも、そんな脳天気な未来を夢見ながらセックスを誘ってきた相手は一人だけじゃない。
 もちろんその都度、そんな事になったら高校中退して働きに出なきゃならないし、親は助けてくれないから貧乏暮しまっしぐらだよって訂正はしたけれど、きっと本気にはしてなかった。親は子供が可愛くて、孫なんてもっと可愛い。素直にそう思い込めるくらい、親に愛されて来たのだろう。
「万が一彼女に子供出来たら、今以上に親から放り出されて俺の人生詰んじまうのよ。って言ったら、お前、信じる?」
 実際、親からの明確な脅しが来る前でさえ、生理遅れてるって不安げに相談された時のやっちまった感は凄かったし、子供が出来ていたわけではなかったとわかった時の安堵も凄まじかった。あの経験がなければ、親からの脅しもそこまで深刻には受け止めなかったかもしれない。
 あんな経験は一度だけで十分だ。なので、大学を出てきちんと就職をしてからでなければ、体を繋げるようなセックスはもうしないつもりだった。
「俺に嘘吐く意味、あるんすか?」
「ないね」
「じゃあ信じます。けど、したいのに我慢するの、難しくないすか? 女の子連れ込み放題やりたい放題のこの環境で、しないでいられるのは尊敬します」
「ちょっと待って。そこまで我慢してたわけじゃないから」
 さっきも言ったけど、スキンシップ飢えてるし、イチャイチャすんの大好きだし、キモチイ事も好きだし、普通に性欲もあるし、突っ込んでないだけでエロいことしてないわけでもなかったよと続ければ、今度は相手の顔が少しばかり赤くなった。自分と同じくらいガタイは良くても、数か月前までは中学生だった事を思えば、少々刺激が強すぎたのかもしれない。

続きました→

 
 
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