エイプリルフールの攻防・エンド直後13(終)

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 簡単に後始末を済ませたあと、二人して寝落ちしたのは当然だと思う。なんせお互い間違いなく寝不足だ。
 こっちは電話を切ったあとも結局あれこれ考えてしまってほとんど眠れていないし、相手が昨夜電話を切ったあとすぐに眠れたのか知らないけど、なんせ片道3時間超えの遠距離から始発でやってきてるので、即眠れてたとしても3時間眠れてるかどうか怪しいと思う。
 起きたら部屋の中は薄暗くなり始めていて、つまりは夕方だった。しかも隣に横たわる彼は、未だ健やかな寝息を立てている。
 相手の方に体を向けて、気持ちよさげに眠る相手の顔を遠慮なく眺め見る。
 小学生の頃から面識があったけれど仲が良かったとは言い難く、大学に入ってからは年に1回数時間しか会わない関係だったこの男と、恋人になってセックスまでした。という事実がなんとも不思議だった。
 過去を振り返ったら、どうしたって苦い記憶ばかりなのに。自分の中の好きに気付いたあとは、なんで好きになんかなったんだろって、思ってたのに。エイプリルフールに嘘の好きを交換したあと、虚しくて、苦しくて、何度も泣いたのだって事実なのに。
 ほんと無駄に遠回りした。って思う気持ちはどうしたって残っているけど、でもまぁいいか、と思える程度には今が幸せだった。
 チョロい、って幻聴が聞こえた気がして思わず眉をしかめたけれど、でもそれすら、チョロくて可愛いって言ってると言いはった相手のお陰で、そこまで不快な記憶にはなっていないようだ。そこが好き、の言葉も多分嘘ではないんだろうし。
 何度も繰り返された、好きだとか可愛いとか愛しいとかって言葉が、耳の奥にまだ残っている。そこそこ長時間に及んだ初セックスは、思い返すと色々と恥ずかしい出来事も満載だったけど、間違いなく気持ちが良くて幸せだった。
 気持ちだけの話で言えば、今すぐまたしたっていいくらいに。と思ったところで、小さくお腹が鳴ってしまって苦笑する。
 気持ち的にはOKでも、体はそんなに都合良く出来てはいない。しかもそちらに意識が向かったら、ますます空腹感が増してしまった。
 ここのところエイプリルフールを意識しすぎてちょっと食欲が落ちていたのだけれど、無事にセックスできたどころか、両想いが判明して恋人にまでなった安心感で、食欲がかなり戻ってきたっぽい。
 とりあえず米くらいは炊いておこうか。
 あんまり食材がないから、買い出しにも行ったほうが良さそうなんだけど。でも眠る相手を置いて家を出るのは躊躇われるし、この穏やかで幸せそうな寝顔を見ていると、叩き起こすのも気が引ける。
 そんなことを考えながら、そっとベッドを抜け出しキッチンへと向かったのだけれど、どうやらその動きで相手を起こしてしまったらしい。
「何してんだ?」
 少しして、部屋へと続くドアが開いて相手が顔をのぞかせる。
「ご飯炊こうと思ってお米といでただけ」
「なるほど。そういや腹減ったな」
 俺の分もあるのかと聞かれたので、あるよと返す。
「といっても食材はあんまりないから買い出し行かないとなんだけど」
「俺的には塩にぎりとかで充分なんだけど」
「え、なんで?」
「買い出し行ってる時間がもったいないっていうか、さすがに外でイチャイチャって難しいだろ」
「え、ええ……」
「あ、引いた?」
「引くっていうか、えっと、し足りないとかそういう……?」
 自分だって寝起きに、気持ち的には今すぐまたしたいくらい、と思ったのだから、相手だって同じように思ったのかも知れない。だったら嬉しいし、丁寧な前戯のおかげか体もそこまでダメージがある感じではないから、食後にもう一度も無理ではなさそう、という下心もあった。
「出来るならしたいくらいだけど、まぁそれは時間的に無理そうだし。せめてキスしたりハグしたり、好きって言ったり可愛いって言ったり、まあとにかく、時間許す限りお前と恋人っぽいこと目一杯しておきたくて」
 お前が嫌じゃなきゃ、と言われて、嫌なわけ無いと思ったけれど、口からは別の言葉が出ていた。だって言われるまで、残り時間がないってことに気付いてなかった。
「てか今日って何時に帰るつもり?」
「終電で。っつってもここ出る終電じゃ途中までしか帰れないから、家にたどり着けるギリギリ最後の電車でって意味だけど」
「えっと、その、明日の予定は?」
「明日?」
「予定ないなら泊まってけばいいのに、って思って」
「はぁっ!?」
「や、別に、無理に」
「いいのか!?」
 無理にとは言わないけど、と最後まで言う前に食い気味に問われてしまって、泊まりの許可が出る想定がなかったから驚いただけで、喜んでいるらしいとわかった。
「うん。いいよ。てか出来れば泊まって欲しいって思って言ってるよ」
 これから遠距離恋愛が開始するのがわかっているのだから、恋人っぽことを目一杯しておきたいのはお互い様だ。
「外でイチャイチャはしないけど、一緒に買い出しもしたいし、お前の好物とか聞いてみたいし、それが作れるかはともかく、せっかくだからお前に俺の手料理的なもの食わせてみたい気持ちもある」
 3年一人暮らしした実力ってやつを見せてやるよと笑えば、相手は大きく目を見張る。
「え、まじで?」
「でもってイチャイチャは夜な。ちゅーしたりぎゅってしたり、好き好き大好き言い合いながら、もっかいセックスも全然有り。てかしたい」
「マジ……ってかお前、体どうなんだよ。どっか痛いとか。っつうか、お尻の穴の違和感が凄いとかどうとか言ってたのは?」
 そういや繋がりを解いた直後に、そんなことを言ったような記憶はある。だってやっぱり指で解し広げるのメインで弄っていたのとは、終えたあとの感覚が全然違った。
「違和感全くないわけじゃないけど、痛いとかはないし多分平気」
「本気にするぞ?」
「うん。気持ちよくて最高に幸せだったから、早くお前ともっかいしたい」
「おっ前、だから、そういうとこ!」
 好きなんだろ? と聞けば、やけくそ気味に、そうだよ好きだよ、と帰ってきたから笑ってしまった。

<終>

オマケの1年後 →

リクエストは「エイプリルフールの攻防」のエンド直後の初エッチと1年後のエイプリルフールをどう過ごすのか気になる、でした。
1年後はオマケな感じの小ネタでしたが、初エッチは本編以上の文字数でガッツリ目に書いてしまいました。誰とも経験したことない童貞同士の初エッチ、久々で楽しかったです。
リクエストどうもありがとうございました〜

1ヶ月ほどお休みして、残りのリクエストを5月31日(金)から更新再開予定です。
次に書くのは「彼女が出来たつもりでいた」の女装バレ後デートです。
残りのリクエスト詳細はこちら→

 
 
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