二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった11

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 どのみち感じている振りなんて出来ないとは思うが、せめて、嫌悪や恐怖を感じるようなら、なるべくすぐに気付けるようにしておきたいと思った。
 一方的に快楽を貪るセックスになんて興味がない。やりたい盛りには結果的にそうなるケースも間々あったけれど、その分テクも観察眼も磨いてきたつもりだ。男相手のセックス経験は積んでないのでテクはともかくとして、相手の様子から良し悪しを見抜く目に関しては、男女でそう違わないと思いたい。
「顔が見たいしキスもしたい」
 そう言葉を重ねれば、明らかに「キス」の部分に反応して相手がおずおずと抱きつく腕を緩めて体を離した。相手の方が若干低い程度でそこまで身長差はないので、足に乗せて抱える相手が身を起こせば、当然こちらが見上げる形になる。
 恥ずかしそうに頬を赤くして、視線を合わせることなく戸惑うように視線をあちこち彷徨わせながら、それでも、相手の視線が主にどこへ向かっているのかはわかってしまう。唇だ。
 尻から離した手を持ち上げて、相手の頬を挟むように包み込めば、さすがに視線が合わさった。間違いなく、期待の滲んだ目をしている。
「キスしていいなら、もーちょい顔寄せて」
 既に頬を手で包んでいるし、そのまま少し力を込めて引き寄せればいいだけだ。こちらの意思が伝われば、抵抗することなく顔を寄せてくるだろう。
 そうわかっていながら、言葉にして相手の意思を問う。好き勝手にさせては貰うが、一方的に好きにされるセックスを、相手に許す気はなかった。
 ゆっくりと顔が近づいてくる。そのまま向こうから触れてくるかと思ったが、そこそこの距離を残して動きが止まってしまう。唇が触れ合う間近でなら、最後の一歩はこちらから踏み込め的な駆け引きと受け取るけれど、この場合はもちろん違う。この様子だと、多分キスも未経験と思って良さそうだ。
 二十歳を超えて真っ更とは、という驚きは当然あるけれど、祖母の葬式で再会したのは彼が中学生の頃だから、そこから先ずっとこちらを意識していたと言うなら、キスすら未経験なのもそう不思議ではない。まぁ、もっと手近なところでとりあえず試してみようとは思わなかったのか、という気持ちはあるけれど。もしくは、近所ではなくとも同じ市内在住なのだから、意識してたというなら、もっと早くに近付いてきたって良かったのに。
 そう思ったところで思い出す。そういや当初の目的は、酒を飲みに行ける年齢になったから一緒に飲みに行きたいであって、気になる相手とあわよくばセックス、なんて気持ちは欠片もなかった可能性のが高いんだった。幼かった彼に過去の自分が与えていた影響を全く知らなかったせいで、誕生祝いで奢っている最中に、やれそうなら奢る、なんて事を言って相手を惑わせたのはこちらだ。
「まだ遠いって」
 言いながら、さすがに引き寄せるように頬を包んだままの手に力を込め、同時に少し首を伸ばし、そのままゆっくりと唇を触れ合わせる。これが相手にとってのファーストキスである可能性が高いなら、初回は触れ合うだけでいい。
 軽く触れただけで、伸ばしていた首を戻して頬を包む手も外してやれば、相手も近づけていた顔を離して行ったけれど、絡んだ視線には戸惑いと疑問とが浮かんでいる。これだけ? と言いたげで、けれど少し待っても、そんな言葉が彼の口から発されることはなかった。
「もっとする? キス」
 問えば無言のまま小さく頷かれる。
「じゃあ、今度はそっちからしてよ」
「順番?」
 その発想はなかった。思わず交互にキスし合うのを想像して、小さく笑う。
「それもいいけど、そうじゃなくて。引き寄せて伸び上がってキスするより、そっちからキスして貰う方が楽だから」
 それで納得が行ったのか、相手の顔が近づいてきてそっと唇が塞がれた。
「もっと」
 素早く相手の背中に腕を回して引き止めながら、すぐさま離れていこうとする唇へ向かって次をねだる。躊躇ったのは一瞬で、そのまま離れかけた距離が戻って唇が触れた。
 二度ほど繰り返せば、もっと、などとねだらなくとも、繰り返し唇を触れさせる。とはいえ、ただただ触れて離れるだけの拙いキスのままだけれど。

続きました→

 
 
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