二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった5

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 尿意によって意識が浮上したのは、横になってからおよそ2時間ほど経過した頃だろうか。トイレを済ませたついでに、そのままシャワーを使ってさっぱりする。
 ホテル備え付けの部屋着を事前にバスルームに持ち込むような機転があったはずもなく、かといって着ていた服をそのまま着込むのも、再度眠る気があるので避けたい。どうせ従兄弟は寝ているのだしと、悩むことなく下着だけ着用してバスルームを出れば、寝ているはずの従兄弟も目を覚ましたようで身を起こしていた。
「起こしたか?」
 そう煩くしたつもりもないが、寝ている相手に気遣って静かに行動していたわけでもない。
「あの、これは……」
 相手はどこかぼんやりとしつつも明らかに困惑を滲ませている。
「え、まさか覚えてないの? 休憩したいって言ったの、お前なんだけど」
「いやそれは、覚えて、ます、けど」
「俺がローションとゴム買って帰ってきたら既に寝落ちてたんだけど、起きたんなら、今からする?」
 気持ちは白けきったままで、起きたならヤレルな、などという期待はさして大きくないのだけれど、せっかくホテル代を出したのだからやる気があるならやっておくかくらいの気持ちだった。
「あ、はい」
 あっさり肯定が返ったので、酔いを覚ましたい的な休憩ではなく、セックス目的の休憩だということもちゃんと覚えているらしい。
「じゃ準備してきて」
「それなんですけど、あの、準備、って、何をすればいいんですか?」
 出ていくときにも言ってたけどわからなくて、だとか、戻ってきてから聞こうと思ったら寝ちゃったみたいで、だとか、続く言葉を聞きながら、頭の中は当たり前だが、どういうことだと大混乱だった。
 わからないの意味がわからない。というよりは、多分、わかりたくない。
「男に抱かれた経験は?」
「ない、です」
「自分で尻穴弄った経験は?」
「それも、ない、です」
 だろうな、というのが正直な感想だ。準備の意味がわからないなんて、経験どころか興味すらさしてないんじゃないかと思う。
「ならなんで誘った?」
 そう聞きたくなるのは当然だろう。ただ、納得できる理由は返ってこなかったけれど。
「奢ってくれた、から。俺とやれるって思ってるのかなって、思って」
「誘われてその気になるくらいには、やれるならやりたいって気持ちがあったが、それはお前が、気軽に俺なんかを誘うくらい男に抱かれるのが好きな、当然抱かれた経験のあるゲイかバイなんだろう、っつー前提があったからだよ」
「それは、初めてじゃダメってことですか?」
「ダメっつーか……」
 ここまでくれば、相手の好意に気づけないほど鈍くはないつもりだ。準備の意味すらわからなかったことを思えば、元々ゲイセックスに興味があって、誘えば抱いてくれそうだから初めての相手に選んだ、とは考えにくい。しかし、好意から抱かれたがっているのだとして、好かれる理由なんて欠片も思い浮かばなかった。
「俺が、やれんならやっとくか、程度の気持ちで部屋とったのわかってる? よな?」
「はい」
 やはり躊躇うことなく肯定が返る。
「初めて抱かれる相手がこんなクズでいい、ってなる理由がわからないんだけど。というか、そんな好かれるような何かをしてやった記憶がないんだけど」
 言えば、多分初恋みたいなものなのでと返されて、ますます意味がわからなくなった。

続きました→

 
 
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