ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書5

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 自分の上に跨り、なんとも苦しそうに喘ぐ相手に、なんで、と思う。
 すっかり自分の方が抱かれるのだと思っていたのに、いざ始めて見れば彼が抱かれる側だった。とはいっても、行為の主導権はずっと彼が握っている。今も、どうしてと思いながら何も出来ず、ただ苦しそうな顔を見上げているだけだった。
 ローションを垂らした手を彼自身の股間に差し込んだのを見た最初、あまりにビックリして何してるのと聞いたら、全く経験がないだろう男の子をいきなり抱いたり出来るわけないと返された。ローションが使いかけなのはオナニーに使用してたからとは言っていたが、まさか本当にアナニーしていたとは思わなかった。
 でもアナニーしていた割に、苦しそうなばっかりで、ちっとも気持ちよさそうじゃない。
 あまり躊躇いなく進められて、騎乗位で腰を落とす時も、キツそうにはしても怯んで受け入れられずに止まってしまうなんて瞬間はなく、ゆっくりとだが確実にずぶずぶと入ってしまったから、きっと未経験ではない。もしくは自己開発が相当進んでいる。けれど、決して慣れては居ないのだと思った。
「ねぇ……ホントは、タチなんじゃ、ないの?」
 不安になって聞いてしまった。
 確かに抱かれている彼も抱いている彼も両方見てみたいとは言ったし、実際どっちがいいという強い希望なんてなかったけれど、なんで自分が抱く側になっているのか正直良くわからない。こちらの好奇心に応じて気軽にいいよなんて言われたら、相手は行為を楽しむだけの余裕があると思うだろう。まさか、苦しそうに受け入れてくれる姿を見せられる羽目になるなんて思ってなかった。
 もし本当に、初めての相手をいきなり抱けないというのが理由だと言うなら、セックスはしたいとはっきり言ったあの時、したいならアナニーして慣らしてこいとでも言えば良かったのに。そんな言葉を掛けられたらきっと期待から、頑張って自己開発を進めるくらいは平気でしてしまうのに。
「ハハッ、どっちの経験が多いかって言ったら、これでも抱かれる方、なんだよ。ゲイだからってのと、セックスやり慣れてるのはイコールじゃ、ない」
「じゃあなんで、セックスさせてくれるなんて言ったの。俺を煽ったりしたの。したいとははっきり言ったけど、した後あなたとどうなりたいかの結論は出てないのに」
「お前の好奇心、少し満たしてやろうと思っただけかな。抱いても抱かれてもどうせそこまで良くしてはやれそうにないし、だから体が良くてズルズル離れられなくてなんて事にはならんだろうし、むしろやってみて幻滅すりゃそれはそれで好都合だとも思ったし?」
「あなたに幻滅してあなたへの興味が失せたら、確かにお互い良かったかもですよね。でも残念。あなたの苦しそうな顔ばっか見せられてる今の俺の気持ち、教えましょうか?」
 教えたいなら言っていいよと返されたので、少々ムッとしつつ、善がってる顔が見てみたくなりましたと言ってやる。
「なるほどね。好奇心もだけど探究心も強いっぽいのは厄介だな」
「厄介ですみませんねぇ」
 ムッとしたまま棒読みで返せば、なるべく好奇心満たしてやりたいけど、その好奇心と探求心の強さだと、次から次へとなりそうだと苦しげな顔のまま小さく笑われた。
「一回セックスしたら、それで引き下がるとでも思ってたんですか? 俺の好奇心舐めないで下さい。好奇心を満たしてやりたいなんて思ったこと、後悔しますよ」
「確かに、下手なのは即バレするだろうから、セックスへの興味を無くす可能性は考えてた。でも好奇心を舐めたりしてないし、後悔はしないよ」
「好奇心が満たされきるまで散々セックスしまくって、その結果、もう満足したからいいですってやり捨てされてもいいんですか?」
 そんな可能性があることを、下衆な好奇心を持っていることを、自覚している。セックスに限定はしないが、知りたいことを知ってしまったら、見たいものを見てしまったら、一回り以上も年上のおっさん相手に興味が続くかなんて自信がない。
「散々やりまくってから捨てられるって事への心配はないな」
「好奇心で始めた肉体関係でも、セックスしてればお互い情が湧きますか?」
 さっき読んでいた本にはそんな描写が入っていた。ただ彼らはヘタで気持ちよくないセックスではなく、ドロドロに感じてアンアン言いまくるセックスをしていたけれど。
「そうじゃなくて。やり捨てされても別にいいって事だよ」
「何、言ってんですか」
「お前の好奇心が満たされきって、未練なく俺から離れていくなら、それでいいと思ってる。ただセックスで善い思いしたことって殆ど無いし、善がり顔なんていつになったら見せてやれるかわからないんだよな。久々すぎて今日は思った以上にキツいから、慣れればもうちょい俺も感じるかもしれないけど」
 下手でゴメンなと言いながら止めていた動きを再開しようと腰を上げていくのを、腰を掴んでやめさせる。
「あの、自分で動きたいんですけど、ダメですか?」
「若さでガツガツやられたらさすがにシンドイんだけど。でも下手すぎてこんな動きじゃイケないってなら、好きにして、いいよ」
 どこかホッとした様子を見せるから、自分で動くのはやはり相当キツイのだろうと思った。
 ちゃんと優しくしますよとか、あんまり苦しくて辛そうだから見てられないだけですよとか、一人で頑張らないでくださいとか、そう言った言葉を掛けてあげれたら良かったのかもしれない。想いあった相手との行為なら、そう言った言葉が吐けるのかもしれない。
 でもこれは好奇心を満たすためと言明されていて、しかも先程の会話内容から察するに、相手は自分が彼の元を去ること前提で居るようだ。どうなりたいかの結論はまだ出てないと何度も言っているのに。恋人になりたいとかいっそ家族になりたいとか、それに近い結論は出ないものと思われていそうだった。
 結論が出ずに迷っていることが、彼からすれば既に結論なんだろうか?
「じゃあ、好きにさせて、貰います」
 吐き出した言葉のどこか冷たい響きを後悔しながら上体を起こし、逆に彼をベッドに押し倒す形に体位を変えた。

続きました→

 
 
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「ゲイを公言するおっさんのエッチな蔵書5」への2件のフィードバック

  1. こんばんは〜。今日中に来れて良かったです。ちょっと眠気と格闘しておりまして、変な文章になっていたらすいません。
    この二人の会話がものすごく萌えました。
    いや、それより、抱くと思っていたら、抱かれた!……と思ったら抱いた〜!!(◎_◎;)とレイ様のフェイントにやられまくっていたのです。
    その後も予想の斜め上をいく展開にひたすら驚いたのですが、会話の話に戻ります。
    「でも残念〜」から「〜後悔しますよ」までの主人公の頭の良い生意気さが出た台詞に悶え、その後も階段駆け上がるような会話が、素敵すぎて電車の中でぶつぶつ「なんて良いんだ」と同じこと何回も言ってました。
    それでこの最後で切られて、「あー、完結まで待ってよかったーと言うか、え?これ次完結?」となっていました。
    眠気が来てしまったので、明日また最終話にコメントしますT_T何度もコメントして申し訳ないです。

  2. 睡魔さん、こんにちわ(^^♪
    眠い中感想コメント本当に有難うございます。嬉しいです!
    二人の会話に萌えて貰えて良かったです。彼らのやり取りが素敵と言って貰えて嬉しいですヽ(=´▽`=)ノ
    えっち最中だってのに、結構その後に響くような重要なやりとりさせるのが好きなんですよね〜
    抱くか抱かれるかは本当迷ったんですが、考えれば考えるほど、おっさんが自分から乗ってしまう(主導権はちゃんとおっさん側)のがいいだろうという結論になってしまいました。でも普通に考えたらおっさんが抱く側のが自然なんだろうとも思いましたし、視点の主も絶対そのつもりだっただろう所に乗られたら、きっとわけがわからないだろなと思ってしまって、結果あんな感じになりました。

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