片側のベッド端に腰掛ける自分の横に、同じように腰を下ろした相手は、緊張してるかと聞いてくる。緊張すると笑っちゃう系と言ってた相手の顔は不安気で、決して前回のようにニヤニヤ笑っては居ない。
「それとも、本当に怒ってたり、する?」
「え?」
「緊張してるだけなら、いいんだけど。でも、あいつみたいにはまだ、わからないから」
でも幸せで嬉しくて仕方ないって感じじゃないことだけはわかるよと続いた言葉は尻すぼみで、不安げな顔はなんだか泣きそうにも見えた。
「怒ってません」
「本当に?」
「本当に」
「でも緊張してるだけ、ではない?」
あいつみたいにはわからないと言うなら、そんなことは見通してくれなくていいのに。
あまり感情の出にくい顔を、それでも両手で覆って俯き隠しながら、深い溜め息を吐いた。情けないこの気持ちを、どう口に出して説明すればいいかわからない。
「ゴメン。やっぱなんか、失敗したっぽい、……よな」
「なんで、あなたが謝るんですか」
「君がさ、思ってたより人目が気になるみたいなのわかってたのに、人が多いデートコース選んじゃったし。しかも地元じゃないからとか、暗いからとか言って、ちょっとイチャイチャしすぎちゃった自覚もあるし?」
半個室のレストランで一口頂戴を口を開けて待たれたことや、イルミネーションきらめく中、押し切られて少しだけ手を繋いで歩いたことなどを思い出す。
仕方なく応じてやるような態度を取ってしまったけれど、仕掛けて貰わなかったら自分からなんて決して出来っこないそれらの事を、喜ぶ気持ちがないわけがない。これは恋人とのデートなのだと思い知らされるようなそれらの瞬間と、胸に残る甘いトキメキを、忘れたくないと強く思っている。初デートでそれらの思い出を残してくれた相手に、感謝すらしているのに。
「嬉しかった、ですよ」
「うん。でも嬉しいだけじゃなかった、だろ。不安にさせてゴメンね?」
相手の方こそ、今現在不安そうな顔をしているくせに、何を言っているんだろう。ああ、でも、彼を不安にさせているのは自分なのか。
顔を覆っていた手を外して、俯いていた顔を上げて、隣りに座る相手をジッと見つめた。戸惑うように揺れる瞳に、この人にこんな顔をさせているのは自分なのだと思う。優しい笑顔を向けられるよりも、こちらの方が嬉しいかも知れないだなんて、我ながら性質が悪い。もしくは長く抱えていた初恋を拗らせきっている。
「人目を気にして不安だったとかではないです。人に何かを言われて、あなたがこの関係を終わりにしようと言い出すのを恐れる気持ちはありますけど。でもあなたの様子からすると、見知らぬ他人に何か言われるくらいの事は、多分、平気なんでしょう?」
こちらが人目を気にしているのをわかっていながらやったと言っているのだから、クリスマスイブに男同士でデートしている事への好奇の視線など気にならないどころか、それを跳ね除けて大丈夫と笑えるくらいの気概があるんだろう。というか事実、大丈夫だよと言うように優しく笑ってくれていたのを覚えている。
「じゃあ何が不安だった?」
今後の参考までに出来たら教えておいてと、情けない顔でそれでも柔らかに笑いながら尋ねられて、本当に敵わないと落ち込みながらも、何故か唐突にキスがしたいなと思った。その衝動のまま顔を寄せれば、相手は一瞬目を瞠った後でゆっくりと瞼を下ろしていく。完全に瞼が落ちたのを見届けてから、唇を押し当てるだけのつたないキスを一つ。
顔を離してからもじっと見つめ続ける中、ゆっくりと目を開いた相手が、どこか困った様子でへらりと笑った。
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うう……
あんなに完結まで待とうと思ったのにまた読んでしまいました!!T_T
しかも「あ!今日更新日だ♪」とるんるんしながら来た確信犯です。
自分学習力が無さすぎる!
こんなの続きが待ち遠しくならないはずがないです!!T_T
このすれ違い方の絶妙さ!
でもキスしましたね♪
次は必ず完結まで待つつもりです。その間、違うお話読んでますT_T
レイ様本日も更新ありがとうございました。
睡魔さん、続き待ち遠しいと思って下さってありがとうございます♪
想い合ってる二人が、誤解や些細な思い違いで、気持ちがすれ違ってしんどくなってるの大好きなんですよね〜(*´Д`)
初めて同士(兄さんは抱かれるのはという意味で)なので無事に初エッチを終えるまでにはもうちょっとグダグダと掛かりそうなのですが、他の話を読みつつ、のんびり気長にお待ち頂けるとありがたいです。幸せ初エッチ目指して頑張ります!