昼休み中の下らない遊びの中で、告白されたら相手が誰だろうと最低一ヶ月はお付き合いする。などという罰ゲームを言い渡された翌日の一限が終わった直後、三年の教室に自分を訪ねてきたその一年生男子に見覚えはなかった。それどころか相手だって、多分こちらのことはたいして知らない。
相手が待つ教室の入口まで歩く途中、相手の顔が苦々しげに変わったのが印象的だったが、理由はすぐに理解した。
「好きです。付き合って下さい」
意を決した様子でよく通る大きな声で告白してきたくせに、最後に小さく舌打ちした上に、男じゃねぇかと呟いた声まで聞こえてしまったからだ。
なるほど。確かに男女どちらにも使われるような名前だが、どうやら相手はこちらの性別すら知らずに訪ねてきたらしい。
「何? 罰ゲーム?」
「そおっす」
正直でよろしい。
こちらの罰ゲームについては内容が内容なので、昨日の放課後には既にかなり広範囲に周知されていたと思う。だって万が一、知らずに本気の告白なんてしてくる子が居たら大変だ。
そんなわけで、今の自分に告白なんて真似事をしてくる可能性が高いのは、同じように罰ゲームでだろうと思っていたし、相手が男なのもはっきり言えば想定の範囲内だった。むしろ、罰ゲームで良かったとすら思う。
「いいよ。じゃあ宜しく」
「えっ!?」
今後一ヶ月ほどは、この見知らぬ一年生と恋人ごっこをするんだなぁなんて思いながら了承を告げたら、相手が心底びっくりした声を上げるから、こちらの方こそ驚いた。
「何驚いてんの。俺の罰ゲーム知ってて来たんでしょ?」
「なんすか、それ」
本気で驚かれた上、訝しげに眉を寄せるから、もしかしなくても本当に知らないらしい。マジかと思いながら苦笑する。
知らずに来たなら可哀想に。
「俺今、最初に告白してきた相手と一ヶ月以上お付き合いする罰ゲーム、発動中なんだよね」
目の前の一年生はゲッと呻いた後、忌々しそうにやられたと呟いている。
「そっちの罰ゲームの内容は?」
聞けば、自分相手に好きだから付き合ってくれと言ってくるだけだったらしい。相手まで指定されてた事に多少の疑問を持ちつつも、見知らぬ一年生に告白されてオッケーするわけがないと気楽に考え、だったらさっさと済ませてしまえと一限終了と同時にやってきたようだ。
「まぁどう考えても嵌められたよね、君」
「そっすね」
「でもまぁあんな堂々と告白してきた以上、俺の罰ゲームにも付き合ってくれるよね?」
「あ、はい。よろしくお願いします」
素直に肯定が返されて、ペコリと頭まで下げた相手に驚く。てっきり、冗談じゃないとゴネられると思っていた。
「じゃあ昼休みになったらまた来て。一緒にご飯食べよ」
「はい」
やっぱり素直に了承を告げる相手に、授業始まるからそろそろ戻りなと告げて、慌てて去っていく背中を見送る。
そういや制服のネクタイから学年だけはすぐにわかったけれど、名前すら聞かないままだった。こんな罰ゲームをやらされていることや、本人の雰囲気的にも、何がしかの運動部に所属しているのだろうとは思うが、何をやっているのかも聞きそびれてしまった。
「かわいー年下の恋人ゲットおめっとさん」
自分の席に戻る途中、そう声を掛けてヒヒヒと笑ったのは、もちろん昨日のゲームに参加していた友人の一人だ。
「お前、あいつ知ってる?」
「うちの後輩」
「てことはあいつの罰ゲーム考えたのお前かよ」
正解と笑った相手はバスケ部だ。期待の新人君だよーと続いた言葉は軽かったが、そこに嘘はないだろう。長身の自分と並んで目線がそう変わらなかったことだけでも、バスケではきっと重宝される。
「こっちの事情知らされてないとか、可哀想だろ」
「それなのにお前の罰ゲームにも付き合うって言ってくれるいい子だったろ?」
「まぁな」
「可愛がってあげてね。練習とか見に来てもいいからね」
罰ゲームを使って後輩をけしかけてきた本当の目的は多分それなんだろうと思った。自分も過去にバスケをやっていたことをこの友人は知っているし、辞めてしまったことを未だに随分と惜しんでくれている。
「行くわけ無いだろ」
「気にしないのにー」
「俺が気にするんですー」
相手の口調に乗ってこちらも軽く返しながら、一ヶ月とは言え恋人ごっこをする相手がバスケ部だったことに、小さなため息を吐き出した。
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このお話 おもしろいです!
この先何がおこるのか楽しみでワクワクしてきます♪
二人とも性格良さそうで一話読んだだけでハマっちゃいました。
つづき楽しみにしています!
あかねさん、1話から面白いと言って下さってありがとうございます!
嬉しいです!ヽ(=´▽`=)ノ
まだまだキャラも世界もぼんやりとしていて、今日の更新もさっそく試行錯誤しまくって大遅刻でしたが、最後まで楽しく読んで貰えるような物が書けるよう頑張っていきたいと思いますので、今回のシリーズもよろしくお願いします〜