カウントダウンが始まる前にたっぷり興奮できるようにと、家を出る前からあれこれ準備された彼の体は、友人たちと合流した後わずか三十分足らずで発情しだしてどんどんおかしなことになっていたから、さすがにこれ以上は無理そうだし一人で帰すのも不安だから送ってくと言えば、最初から体調悪そうだったもんなとあっさり納得されて、二人揃って無事友人たちの輪を抜けた。
でももちろん、そのまま素直に帰るわけがない。大学からは少し離れているけれど、仕送りの関係で兄と住むマンションの近くには、そこそこ有名な神社がある。初詣は絶対嫌だなんて言われなければ、間違いなく今夜のデート先にはそこを選んでいたはずだ。もちろん、明日彼を帰す前に、ちゃんと神様の前に立っても恥ずかしくない格好で、揃ってそこへ初詣に行くつもりでもある。
そんなわけで、大晦日から元旦にかけての電車内は当然かなり混み合っている。日々乗り慣れている電車なので、どの駅でどちら側の扉が開くかも把握済みだし、乗り込んだ後は開閉回数が少ない反対側のドアへ向かって、ぐいぐいと相手の体を押し込んでいく。駅を一つ過ぎた時には、相手の体をドアの窓にぺたりと押し付ける事に成功していた。
その体を、背後から抱え込むように腕を回す。もちろん両手とも、相手のポケットに差し込んでいる。
慌てて振り向こうとする相手にそれを許さず、窓に映る姿越しにうっとり笑いかけてやった。
「家の駅まで、後もうちょっとだけ頑張ろうね」
「む、むり……」
「頑張ってくれるだけでいいよ」
口に手を当ててと促せば、素直に両手とも口元へ持っていき、それをギュッと押し付けている。無理だなんて言ってたって、相手が期待してしまっていることは、手の中でビクビク震えるペニスが証明していた。
いい子だと囁いて、後は無言で彼の勃起ペニスを弄り倒す。今回は両手を使えるので、先程よりもずっと大胆に、ベルトもフロントボタンも外して尻が丸出しになるくらいまでズボンを下げてやったし、ペニスを擦るのと一緒にパンパンに膨らんだ陰嚢もやわやわと揉んでやった。
こんな空間で下手に抵抗して注目を浴びるのが怖いのか、相手はされるがまま、言われた通りに声を漏らしてしまわないよう頑張り続けている。必死に堪える顔が窓に映っていて、なんとも可愛らしい。
とっくに同じようにガチガチに硬くなっている自身の勃起ペニスを相手の尻の谷間に押し付けながら、相手のペニスの根本を戒める器具をゆっくりと取り外してやれば、さすがに驚き目を瞠ったのがわかった。この後何をさせられるのか、彼がした想像は間違いなく当たっているだろう。
「次の駅で降りるから、ね」
言葉にして伝えたのはそれだけでも、上手にイケたらご褒美が待っていることくらいは、まだ短いお付き合いの中でも身に沁みているだろう。普段何度も言葉にして繰り返してきたのは、こういう日のためにだ。
はっきりイかせる目的でしごけば、相手はいともあっさり吐精を果たしたけれど、耐えきれなかったらしい涙がホロホロと流れ出している。
汚れた手を取り敢えず仕方がないと彼の服で拭ってから、急いでズボンを引き上げ戻してやったあと、ポケットから抜いた両手を彼を間に挟んでドアに押し付け、グッと腕に力を込めた。そうしてむりやり小さなスペースを作り上げ、こちらへ体を向けるようにと促す。
最初少し躊躇う様子を見せたけれど、彼の泣き顔を隠したいこちらの目的を正直に伝えれば、相手はくるりと向きを変えてすぐさま目元をこちらの肩に押し付けてくる。腕の力を抜けばまたすぐに二人揃ってドアに押し付けられてしまったけれど、両手はしっかり彼の背に回っていた。
目的の駅について一斉に人が降りても、その流れに乗って降りることはしなかった。ガラガラに空いた車内にホッと息を吐きながら、相手の体を緩く抱き直す。声を殺して泣き続ける相手を宥めるように、何度も何度も背を撫でた。
結局、一駅先からタクシーを使って帰宅した。兄も友人たちとオールナイトで年越しだから、家の中は冷え切っている。
そんな冷えた玄関先で、先に靴を脱いで上がっていた相手が、こちらが鍵を掛けるのを不安そうに見守っていた。さすがにあんな泣かせ方をするつもりはなかったし、あれで互いの興奮が覚めてしまったのは明白だし、この後どうしようかと思う気持ちは当然ある。
だからこちらも黙ったまま見つめてしまったのだけれど、また相手の目にジワジワと涙が溜まっていくから焦る。
「ごめんっ」
咄嗟に口を出たのはやはり謝罪で、けれど相手はブンブンと首を横に振って、同じようにごめんと口に出す。
「なんでそっちまで謝るの」
「むしろお前は謝んなくっていい」
「だからなんでよ。どう考えたって、俺がやりすぎだったでしょ」
「どうしても無理なら、ちゃんとお前を止めればよかったのに、そうしないで感じまくってイッたくせに、泣くなんて興ざめなことして、ホント、ごめん」
一度も使われたことがないけれど、二人の間で決めたストップワードは確かにある。
「そんなのいいよ。というか、そっちだってどんなことになら耐えられて、どんなことはダメなのか、まだ自分でわかってないことばっかりでしょ。お互い知識ばっかり膨らませた臆病者で、実践面はまだまだ初心者同士だってのに、わかっててアレコレ詰め込みすぎた上に、相手の限界も判断できなかったんだから、俺が悪いよ」
互いの性癖が合致しただけでなく、実際には経験がないところも一緒で、だからこそ付き合ってみようと思えたし、彼と共にゆっくり経験を積んでいくつもりなのに。互いの就職先もそこまで離れていないことがわかっているし、卒業後も関係を続けていく予定で、今の段階で焦ってアレコレ試す必要もないのに。
信頼がないぶん不安が膨らむことまでわかっていながら、泣くまで追い詰めたのはこちらだ。
「でもっ!」
「わかった。じゃあ、今日のところはお互い様ってことにしよ。あそこまですることなかったろって怒ってないなら、俺はそれでいい。それより、今日、この後どうしたい? 抱きたいって言っても平気?」
大きくはっきり頷いた相手が、それから何を考えたのか頬を赤く染めていく。
「どうしたの?」
「さっきの」
「さっきの?」
「ご褒美、期待してる、からっ」
あまりに可愛い訴えに、もちろんだよとうっとり笑った。
「怯えて泣いている受けを甘やかしつつ、苛めるS攻め」のリクエストありがとうございました。
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