もう無理と言いたげに一度顔をあげた兄は、すぐにもっと前屈みになって、すり寄るみたいに肩口に顎を乗せてくる。抱きつくように背に回された腕にも、ぎゅっと力が込められた。
「ぁ、……ぁっ……ぁあ……」
激しくイイトコロを責め立てているわけではないからか、充分な呼気が確保されて幾分楽にはなったのかもしれない。抱きつく腕の力はそう変わらないものの、必死にしがみつかれているという感じはなく、漏れる声音も幾分甘く蕩けている。
キスは兄の意思で中断されてしまったが、体勢が辛いとか嫌だとかの不満は未だ一切ない。嫌だと言えないような関係ではないはずだから、きっと大丈夫ってことなんだろうけれど、いつもみたいにベッドに仰向けに転がっていたほうが絶対楽だろうとは思う。思うけれど、嫌がられないならこのまま続けていたいとも思う。
だって甘えるみたいに抱きつかれて、耳元で甘やかな声を蕩かせて貰ったことなんて、ない。そもそも媚びた演技みたいじゃない声そのものが初めてだけど、あのサービス的な声ですら、この近さで聞いたことはなかった。
「ぁ、そこ、」
膨らんだ前立腺を、指先に少しずつ力を入れながら、ぐぐっと押しこんでいく。
「うん。兄貴のきもちいとこ、な」
指の力を抜いて、押し戻された膨らみをなだめるように何度かクルクルと撫でてから、もう一度指先に力を掛けて、今度は軽く揺すってやった。
「ひぅ、ぁあ、あああ」
「きもちぃ? 辛くない?」
「ぁ、ぁうっ、きも、ちぃいっ」
「ん、じゃあ、もうちょっと弄るけど、もう無理ってなったら言って」
意地悪しないしちゃんと止めてあげるからと告げて、前立腺を中心に、兄のイイトコロを少しずつ強めに刺激していく。
「ぁっ、ぁあ、ああん、ぃいっ、きもちぃ、ぁ、あっ、そこぉ」
気持ちがいいところを弄られたら、素直に気持ちがいいと伝える、というのが兄の中ですっかり習慣づいているのかもしれない。作られた甘い声というよりは、我慢できずに漏れ出てしまう、という感じがするから、以前とは全然違って聞こえるし嬉しくてたまらない。
「うん、ここな。クリクリされんのきもちぃな」
「ん、ぅん、きもち、ぃ、きもちい、からぁ」
もっと、という訴えに、埋め込む指を2本から3本へと増やした。その場所を拡げるみたいに根本近くまで押し込めば、腰がわななき腿が震える。
「んぁあああ」
「キツイ?」
寝転がるかと声を掛ければ、首が振られる気配がした後、やだ、と確かな否定の声があがった。離れない意思表示なのか、抱きつく腕にまた力がこもる。
「へ、き、だから。このまま、して」
思わずなんでと聞き返してしまえば、ためらいがちに、ぎゅってしてたいから、と甘えた声音で返され胸が熱い。後ろを慣らす間、この近さが初めてなのは当然相手も同じで、でも、相手もそれが嬉しいんだなんてことまで、頭が回っていなかった。
「ね、まだちょっと早いかも、だけど、兄貴の中、入りたい」
慣らすの全部やらせて、なんて言ってしまったことをまたしても後悔しながら、ゆっくりするからと頼み込む。頼みながらも、少しでも挿入が楽なようにと、埋めた指でぐじゅぐじゅとその場所をかき回して、3本分の太さを早急に馴染ませていく。
「ぁ、ばか、指、ぬけっ」
入れんだろと言われて、ずるりと指を引き抜いた。
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