夢見る腐男子は理想の攻めを手に入れたい2

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2章 豹変

静かな部屋の中、二人の男が黙々と漫画を読み耽っている。

颯真:はぁ……
  :(ヤバい)
  :(なんかムラムラしてきた)

タク:どうした?

颯真:いえ、なんでも……
  :(エッチシーンが激しくて興奮したなんて言えない)

タク:顔赤くなってるけど
  :もしかして刺激強すぎた?

颯真:いや、あの
  :(バレバレじゃん)

タク:別に隠さなくっていいよ?

颯真:いやいやいや
  :普通に恥ずかしいですって

タク:まぁ恥ずかしがってるのもそれはそれでソソるけどね

颯真:え?

タク:寝室行こうか

颯真:は?

タク:おいで

本を置いて立ち上がったタクに腕を引かれて焦った。

颯真:ま、待っ、あのっ
  :し、寝室って、なんで……

タク:なんで、って、抱いてあげようと思って?
  :さすがにここで押し倒すのはムードなさすぎるしね

颯真:(当然みたいな顔して言われても困る)
  :俺、そんなつもりは……
  :(タクさんとは確かにめっちゃ盛り上がったけど)
  :(ここ来たのは本読ませて貰うだけのつもりだったし)

タク:うん、俺のBL本が目当てなのはわかってるよ

颯真:なら!

タク:でも勃ったんでしょ?

颯真:それは、だって
  :(タクさんのオススメ本って過激なの多いんだもん)

タク:別にそう大げさに考えなくても良くない?
  :ゲイじゃなくても腐男子でそういう事に興味津々なんだろ?
  :大丈夫、俺、上手いからさ

颯真:いやそんな、自信満々に言われても

タク:せっかく来たんだから試すだけでもしてみよ?
  :読んでた本と同じ事、されたくない?

颯真:それは……
  :(そりゃ興味はあるけど)
  :(でもタクさんとしたいかって言うとなぁ)
  :(だって今もちっともドキドキしてないし)

迷っている内に強引に立たされ隣室へ連れて行かれる。
部屋の中にはベッドに向けられたカメラが用意されていた。

颯真:なんでカメラ?
  :あっ……
  :(そういや掲示板の新しいコメント)
  :(業者だから気をつけろってまさか……)
  :タクさんってAV撮る人?

タク:何言ってんの違うよ
  :カメラはね、撮りながらするのが好きなだけ
  :不安なら最後にちゃんとデータ消してあげるからさ

颯真:(なにそれ絶対ウソだろ)

タク:普通にするより興奮するよ?
  :って言っても経験ないんだっけ
  :抱かれたことなくても女の子とはしたことある?

颯真:(それもないけど)
  :(でも言いたくない)

タク:あれれ?
  :もしかして童貞だったりする?

ニヤニヤ笑われてキュッと唇を噛み締める。

タク:ああ、やっぱ童貞っぽいなぁ
  :全然経験ないのにBL読みすぎて抱かれてみたくなっちゃったとか
  :腐男子くんは夢見がちだねぇ

颯真:BLがファンタジーだってのは俺だってわかってますよ

タク:いやいや別に悪くはないよ?
  :初めてなのにこんなに気持ちぃ〜みたいなの
  :ちゃんと経験させてあげるよ?

颯真:いいです要らないです
  :俺、帰りますから

タク:バカだねぇ、すんなり帰すわけ無いだろ

颯真:んぅっ

唇を塞がれとっさに口を閉じようとしたが間に合わない。
ぬるりと相手の舌が入り込んできた。

【ちゅ、ぴちゃ……ぢゅうっ】

颯真:(うぇ、なにこれ)
  :(ベロチューってこんななの!?)
  :(気持ち悪い気持ち悪い)
  :(ヤダヤダヤダ)

【ガリッ】

タク:痛っっ

相手の舌に思い切り歯を立ててしまえば相手が呻いて顔が離れていく。
しかしホッとする間もなく頬に熱い痛みが走る。

【バシッ】

タク:おいこら、いい度胸だな

【バシッ】

颯真:や、やだ、やめて

タク:痛い目見たくなきゃ大人しくしてな
  :あんま暴れっと縛るからな?
  :そういうプレイよか優しく気持ちよくのがいいんだろ?
  :ラブラブ恋人セックスがお好みっぽいもんなぁ?

颯真:(さっきまでのタクさんと全然違う)
  :(怒らせたんだろうけど顔も口調も怖すぎる)

タク:おい、返事は?

颯真:は、はいっ
  :(なに返事しちゃってんの俺)

タク:わかったならほら
  :ハメてるとこ撮るんだからベッド行けよ

颯真:(行ったらそのまま抱かれちゃうんだ)
  :(いくらBLはファンタジーって言ったって)
  :(こんなのってないだろ)

タク:やっぱ無理やりされる方がいいか?

掴まれた腕をとっさに振り払い相手のことを突き飛ばした。

颯真:こんな初めてやだっ
  :絶対いやだっ!

設置されたカメラを思い切り蹴り倒してやる。

タク:あ、この野郎
  :待てっ、ああくそ、カメラが

荷物を掴んでアパートを飛び出した。

【狭い路地裏】
颯真:ハァ、ハァ、ハァ
  :(足、震えて上手く走れない)
  :(追ってきてはいないみたいだけど)
  :(とりあえずここで様子見しよう)
  :(とにかく落ち着かないと)

携帯を取り出し例の掲示板を覗いてみる。

颯真:(これもうすっかり癖になってるな)
  :(でも人の悩み読んだり書き込みに返事貰ったりするの)
  :(なんか凄く安心するし落ち着くんだよな)
  :あ……
  :(さっきの返事来てる)

掲示板/通りすがり:君は他所の掲示板は覗いていないんだろうな
         :あちこちでタク・タクト・タッくんなどの名前で
         :誘いをかけてる男がいる
         :ゲイ掲示板慣れしてなさそうな若者がターゲットだ
         :巧みに誘い出し家に連れ込み行為を撮影するらしい
         :合意がなかっただの動画が流出しただの
         :被害報告をいくつか読んだことがある
         :当人とは限らないが直接会うのは止めたほうがいい

颯真:(これもっと早く知りたかったなぁ)

掲示板/通りすがり:その後の書き込みがないがもしかして遅かったか?
         :家には行ってないといいんだが
         :心配だな
         :無事なら何か一言書き込みして欲しい

颯真:(通りすがり、なんて名前なのに)
  :(凄い心配してくれてる)
  :うぅっ……

掲示板越しではあるが人の優しさに触れて涙が溢れてきてしまう。

掲示板/腐男子:助けて

颯真:(こんな書き込みしたって助けてくれるわけないんだけど)
  :(でもちょっとくらい夢見たっていいよね)
  :(大丈夫か、心配したぞって、イケメンが駆けつけてくれる的な)
  :(そもそも俺の居場所も知らないで駆けつけるもないけどさ)
  :はぁ〜……
  :あれ?

掲示板内をウロウロと眺めていると先程の書き込みに返信が付いている。

掲示板/通りすがり:連絡先を載せたから直接メールしておいで
         :今いる場所をここに書き込むようなことは
         :絶対にするなよ

颯真:う、そでしょ
  :(いくら地域別の掲示板だって言っても)
  :(それなりの範囲はあるのに)
  :(俺が今どこにいるかも知らないで)
  :(なのにまさか本気で助けに来てくれる気なの?)

半信半疑ながらもメールアイコンをクリックしてメッセージを打ち始めた。

続きました→

 
 
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