二十歳になった従兄弟を連れて酒を飲みに行くことになった4

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 狭い部屋の中にベッドが2つ並んだだけのシンプルなツインルームで、片方のベッドの上に転がり寝息を立てる男を見下ろしながら、どうしてこうなった、と思う。
 飲み慣れてない相手が飲みすぎないよう、かなり注意していたはずなのに。
 予定していた店を回り終えて、帰ろうと駅へ向かう途中、本当にこのまま帰るんですかと袖を引いて引き止めてきたのは相手の方だ。店を出たときよりも赤い顔をしていたから、歩いて酔いが回ったのだろうと思って、電車に乗ったら吐きそうとか言い出すならどこかで休憩を入れないとまずいかとは考えた。
 といっても、公園でも見つけて休むのが第一候補で、次点が酒以外のメニューが豊富な店に入る、ぐらいのことしか考えていなかったし、当然自分はアルコールを追加する気でいたし、ホテルに入って休憩なんて欠片だって想定していなかった。
「休憩するか?」
「俺は、いいですよ」
「ん? それは休憩したいの? したくないの?」
 そんな少し噛み合わない会話も、酔っぱらい相手だと思ってあまり気にしなかったのがいけない。ますます顔を赤くした相手が、休憩したいと告げた意味を理解したのは、歩き出そうとしたのを再度袖を引いて引き止められた後だ。
「ラブホより、こういう普通のとこのが、いい、です」
 こういう、と言われて初めて、自分たちがビジネスホテルの前で立ち止まっていることに気づいた。というかラブホってなんだと、そこで初めて、何か大きな勘違いをしていることにも気づいた。
 休憩したいというのは酔いを覚ましたいという話ではなく、セックスしたいという誘い、でいいのだろうか?
「え、つまり、やらせてくれんの?」
 ド直球に聞いてみれば、困ったように視線をさまよわせた後に俯いて、幾分小さくなった声が、いいですよと告げてくる。だってやれると思ったから奢ってくれたんですよね、と続いた言葉に、最初に誕生日プレゼント代わりだと言ったはずだけど、と返しはしなかった。その返事を聞いて考えていたのは、この据え膳を食うかどうかだ。
 男を抱いたことなんてないが、ヤリたい盛りに好奇心でアナルセックスを試したことならある。面倒さのが勝ってハマりはしなかったが、気持ちよさは普通に得られたので、突っ込んでいいなら突っ込みたい気はする。
 問題は、男の体相手に興奮できるかどうかと言う点と、相手が従兄弟だという点だ。勃たずにやれなかったら、ホテル代なんて無駄金もいいところだし、なにかの拍子に自身の親や相手の親にバレたら、何を言われるかわからない面倒さがある。まぁ親バレの可能性は限りなく低いだろうとは思っているが。
 それでも結局すぐ横のホテルに部屋を取ったのは、ホテル前に長いこと立ち尽くすのがいたたまれなくなったらしい相手が、諦めたように掴んでいた袖を放し、帰りましょうかと言ったからだ。その瞬間、この据え膳をこのまま見逃すのはさすがにもったいないなと、思ってしまった。枯れちゃいないんだから、多分きっと勃つだろう。
 歩き出そうとする相手を今度は自分が捕まえる。手首を掴んで、ホテルの入口へ向かって歩けば、抵抗されることなく付いてくる。
 なんの変哲もないただの平日なので、飛び込みだろうと部屋は余裕で空いていて、あっという間にこのシンプルなツインルームまで移動したのはいいが、相手が男である以上、そのまま押し倒してことを進められないことはさすがにわかっていた。勢いで入ってしまったが、考えたらローションもゴムもない。
 仕方がないので、ローションとゴムを買ってくるからその間に準備しといてと言いおいて、一息つくまもなく出掛けたのが何分前だろうか。
 戻ってきたら相手はベッドの上ですっかり寝息を立てていて、しかもシャワーを浴びた様子もない。つまり何の準備もされていない。
 いくらアナルセックス経験があろうと、むしろ経験があるからこそかもしれないが、さすがに洗ってもいないアナルを相手の了承もなく弄り回すのは抵抗がある。というかヤリたい盛りだったらどうかわからないが、意識のない相手に突っ込むなら、オナホとそう変わらないよなと思ってしまった。
 すごい勢いで気持ちが白けて、大きなため息を一つ吐いた後。無駄金を使ってしまった後悔とともに、空いたもう片方のベッドに横になって目を閉じた。

続きました→

 
 
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