周りのざわつく気配に意識が浮上する。
「あ、起きたぞ」
「マジかよどーすんだ」
目を開けたらそのざわつきが大きくなって、ついでに、ヒョコッと2つの見知らぬ顔が上から見下ろしてくる。
「ぎゃっ!」
思わず叫んでしまったのは仕方がないと思う。てか誰だ。つうかどこだここ。
「おいこらヤメロ。ビビらせんな。あとみんな少し落ち着け。起きたなら説明しないとまずい」
「あ、ごめ」
「すまん」
その声に2つの顔はさっと引っ込んでいき、さきほどまでのざわつきも収まり逆に静まり返っている。
「あー、とりあえず、目が冷めたのなら起き上がっていただけると嬉しいのですが」
促されてゆっくりと身を起こし、ついでに周りをくるっと眺めて、最後に自身が寝ていたのだろう床を確かめた。
見知らぬ部屋に見知らぬ男たちに極めつけは床に描かれた魔法陣らしき模様。
「あー……異世界召喚てきな?」
もしくは夢。今まさに、夢を見ている真っ最中の可能性。
「違うなら夢」
「いえ夢ではないです」
速攻否定された。
「というか召喚された自覚がおありなんですか?」
「流行ってたんで」
「だから冷静なんですね」
主に創作の世界でだけど。という割と肝心な部分を抜かしたせいか、また周りが一瞬ざわついたけれど、その葉に納得したのかすぐに収まっていく。
「そうだと思います」
「ただ何かの手違いと言うか、その、申し上げにくいのですが、お呼びしたのは貴方ではないと言いますか」
「じゃあ帰れる?」
「多分、無理かと」
「じゃあ手違いで呼ばれた俺が、こいつ要らねって殺される心配は?」
「それはない!」
速攻否定したのは眼の前で丁寧な口調で話してくれている男ではなく外野で、多分、最初に顔を覗き込んできた男の一人だと思う。まぁ声が似てた気がするってだけで、確証はないんだけど。
「じゃあいいや」
いやホントは全然良くないんだけど。でも速攻殺されて終わりってわけじゃないなら、さっさと気持ちを切り替えて早めに対処しておかないと、あとから結局殺される羽目になりかねない。
ここが異世界なら、アルファだとかオメガだとか、第3の性が存在しない可能性だって高い気がする。抑制剤なんて期待できないし、こんな目に合うのがヒート直後だったのは多分運が良い。
「え、いいんですか?」
「あっちの世界にあんま未練ないんで。てか正直死にたいとか思ってたくらいなんで」
大嫌いで大嫌いで避けまくっていたアルファ相手に、家の都合で強制的に嫁がされるかも。なんて話が出てたところだったから、むしろ絶対追ってこれないだろう異世界なんてところに逃げれたのはマジで運が良いと思う。
「そうなんですか?」
「そうなんですよ。というわけで、言葉は通じるみたいだけどこっちの生活のこととか教えて欲しいのと、俺にもできそうな仕事とか紹介して貰えれば。あ、ちょっと特殊な体質で、3ヶ月に2週間ほど家を出れないと言うか、引きこもって安静に過ごしたい期間があるんですけど、仕事はそれを考慮して紹介して欲しいです」
「わかりました。というかこちらの事情とかは……?」
「手違いで呼ばれたなら俺が聞いても意味ないかなと」
それはそう、という雰囲気が周りからも伝わってくる。
「わかりました。では、当面生活していただく予定の部屋へご案内いたします」
くるりと回りの男たちに順番に視線を移していくその男に習って、同じように視線を周りに向けてみれば、一人の男が挙手するのが見えた。最初に覗き込んできた男の一人で、多分さっき殺さないと言い切ってくれた彼だ。
その男の名前らしきものが呼ばれて、どうやらここからの移動は眼の前の丁寧語の男と、その男と二人だけらしい。
まぁ手違いだとか言ってたから、残った男たちには他にやることが色々有るんだろう。部屋を出る直前、何やら色々指示しているのが聞こえてきたし。
当面生活して良い部屋、というのはなんともファンシーと言うか、女の子が好みそうな可愛らしい部屋だった。というかレースの天蓋付きベッドなんて初めてみた。
「なんか、その」
「不要であれば後ほどはずさせます」
こちらの視線の先に気づいて苦笑とともにそう告げられたので、お願いしますと返しておく。あんなベッドで落ち着いて眠れると思えない。
その後、簡単な自己紹介をしあって、この国の情勢という名の事情説明がされた。さっき聞いても意味ないかなと断ったはずだが、ここで仕事を得て生活していく気がお有りなのでこの国がどんな状況であるかを知ってほしいと言われてしまえば断れない。
どうやらこの世界では、ここ数年どの国も急速な出生率の低下を辿っているらしい。そして前回同じような状況に陥った時には、他の世界から聖女を呼んでその聖女に子を産んでもらったそうだ。
国の規模やら数やら考えたら相当数呼ばれた可能性があるようで、今回は早めに対処しようということになり、数百年ぶりの聖女召喚だったらしい。が、結果来たのは男だったと。
そこまで聞いて、呼ばれた理由には納得してしまったわけだが、もちろん、じゃあ手違いじゃなかったですねとも、子ども産めますよなんてのも教える気はなく、基本はそうなんですねと聞き流すだけだ。
だってここが、子どもは女が産むもの、という世界らしいのは間違いない。というか抑制剤が存在しないのも確定したなと思う。
ああ、だから理由なんて聞きたくなかったのに。
タイトル通り続きません。異世界召喚も転生もオメガバースも読むのとか妄想するのは好きだけど、形にするのは難しいね。
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