類友のクズ

 先日、友人が恋人と別れたらしい。
 好きになったと言い出してから別れたと言い出すまでが過去一長かったので、男の方が付き合いやすかったのか聞いてみたら、落ちるまでと信用を得るまでが長くかかって楽しかったと、相変わらずクズな言葉が返ってきた。
 可哀想にと言いながらも、内心は当然のようにワクワクとしていて、その場で別れたという友人の元恋人相手にメッセージを送る。
 付き合ってると紹介された時に連絡先は交換済みだし、二人きりで会ったことはなくても、友人込みでなら何度も顔を合わせている。

 別れたって聞いたけど大丈夫? 話聞こうか?

 そう送ったメッセージにはすぐに話を聞いて欲しい旨が返ってきたから、近くのカラオケ店を指定して呼び出した。カラオケなのは、経験上、泣かれることが多いせいだ。
「てわけで、着いたって連絡きたらちょっと行ってくるわ」
「結局お前だって男試すんじゃねぇか」
 一連のやりとりを眼の前の友人に見せれば、相手は呆れた様子でそう返してくる。
 今回好きになった相手は男だと言い出した時に、とうとう男にと呆れたのを根に持っているのかも知れない。
「それはまだわからないだろ」
「8割イケるって話だったろ」
「そんなにないって。半分近くはただ話聞いて慰めるだけだって」
 まぁここ何回かは全てお持ち帰りに成功しているけど、なんせ今回は初の男の子なわけだし。
「嘘つけヘンタイ」
「ヘンタイなのは認めても良いけど、それ言ったらお前だって相当タチ悪いだろ」
 恋愛は相手を本気にさせるまでが楽しいとか言って、散々相手が本気になるよう仕向けるくせに、いざ本気になられると鬱陶しくなって捨てるとか、ホント、相手がひたすら可哀想だ。
 そしてその可哀想な元恋人たちに、ひたすら興奮してきた自分の性癖がヤバい、って事はもちろん認めている。ついでに言えば、慰めエッチで抱くまではしても、次の恋人として立候補したりはしないので、眼の前の友人をどうこう言える立場にはないことも自覚している。
 こんなクズ相手に友人を続けられるのは、似た者同士のクズだからでしかないだろう。いわゆる類友ってやつだ。
「認めんのかよ。てかお前のあれ、マジなの?」
「あれって何が?」
「相手が可哀想なほど興奮するとかいう」
「じゃなきゃお前と友人なんかやってないわ」
「なにげに酷いな。つかホントは俺のお古が抱きたいとか、そういう方向のヘンタイではないって認識でいい?」
「なんだそれ?」
 本気で意味がわからないと首を傾げれば、男抱けたしお前のことも抱いてやろうか、などと言い出して笑ってしまった。
「お前、男試したせいでとうとう俺のことをそんな目で……」
「ないないない。さすがにお前落とすとか絶対ない。けどまぁ、やれるかやれないかで言えばヤれそう。ってちょっと思っただけ」
「あー……クズなお前がいつかしっぺ返し食らって失恋したって泣いたら、俺もお前相手に慰めエッチ出来なくない……かも?」
「それ俺が抱かれる側想定してね?」
「それはそう」
「つか俺が抱かれる側で男の恋人作って振ったら、お前、そんな相手でも慰める? 抱かれる?」
「さすがにそれは無理そう。だけど話聞いて慰めるくらいはすると思うし、抱く側でなら慰める……かも?」
 まさか男を抱いたら男に抱かれるセックスも試したくなったんだろうか?
 なにやら真剣に考え出してしまうから、次に紹介される恋人も男になるのかも知れない。なんて思ったところで、手の中のスマホが小さく震えた。
「あ、連絡きたわ」
「おー、がんばれー」
 棒読み過ぎる声援に小さく笑いながら席を立つ。こいつの次の恋人のことは、紹介されてから考えればいい。
 とりあえずは、振られたばかりのこいつの元恋人を慰めに行こう。

 
 
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