既に何度も果てた後の、甘く掠れた嬌声が、部屋の中を満たしている。お願いだから今日はもっと奥まで触れて欲しいと請われて、初めて、彼の中に全てを受け入れて貰った。
大丈夫だからの言葉どおり、確かに全て入ったし、腕の中の男は甘い嬌声を零しているのだけれど、無茶しやがってという気持ちと嘘だろうという驚きが心の中の大半を占めていた。
充分に慣らして、感じさせて、蕩けきった後だとしても、苦痛を感じて当然だってくらい自分の性器がデカい自覚がある。男のステイタスとして羨まれることもあるけれど、同性相手の見栄以外でいい思いをした経験なんてそう多くはない。というよりも、苦労した経験のほうが圧倒的に多いと思う。
プロなら、と思って風俗を利用してみたこともあるけれど、ほぼ躊躇はされるし、挿入は無理だと断られたこともある。わざわざ金を払って傷つけられに行く趣味はないので、プロからも断られるレベルとわかってからは行かなくなったし、いろいろな意味で諦めも付いた。
なんて話を、酔ったついでに愚痴った相手は、少し前に趣味の世界で知り合って、なんだかんだ意気投合して飲みに行くようになった男だった。
ここ数年恋人はいないという話をしたら、凄くモテそうだし彼女だってすぐに作れそうなのにと言われて、彼女は出来てもどうせセックス出来ないしすぐに振られてしまうと言ったのだ。お互い酔ってたから、ずばっと、インポなの? 薬試した? なんて言われて、でかすぎて入らないだけと理由まで話してしまった。
その時は、なんて贅沢な悩みだとやっかまれなかっただけ、やっぱり良い奴だなって思っただけだったのに。
それからしばらくして、そんなシモな話をしたことすら忘れかけた頃に、相手から、実はゲイなんだとカミングアウトされた。しかも、女性が好きなのはわかっているが、彼とのセックスを試してもらえないかと頼まれた。懇願された、と言ってもいい。
曰く、デカチンじゃなきゃ満足できない体だから、だそうだ。プロに嫌がられるレベルのちんこをぜひ見てみたい、とも言われた。
以前酔った際に聞いた話がどうしても忘れられなくて、無事にセックス出来る可能性のが高いし、そうすればお前にとってもそこまで損はないんじゃないかと説かれた。男がどうしても生理的に受け入れられないなら諦めるけれど、ちょっとでも迷ったなら試すだけでもいいからと必死に口説かれて、結果、彼と一緒にホテルに入った。
色々と諦めすぎていて、本当にデカチンが好きで規格外ちんこで気持ちよくなれるってなら、この際男だっていいかと思ってしまった。さすがにここまであけっぴろげにカミングアウトされた後じゃ、無理って断っても、上手く出来ずに終わっても、多分もう、彼との関係はここで終わりだ。だったら試すだけ試して、無理そうならそのときに無理だと言えばいいかとも思った。
万が一、本当にお互いに気持ち良くなれたら儲けもの、くらいの気持ちだった。
結論から言えば、彼のデカチン好きは本当だったし、自分も男の体相手に勃たせることが出来たし、つまり、セックスは成立した。
セックス中、すげぇ、最高、気持ちいい、なんて言ってもらったのは初めてで、その後あっさり彼とのセックスに嵌ったのは言うまでもない。
ただ、奥の壁を強引に開かせて、相手の尻タブに自分の腰が密着するほど押し込む真似は、どうしても出来なかった。入るよ、とも入っていいよ、とも言われたけれど、閉じた場所をこじ開ける、というのが無理だ。
もし本気で奥にまで欲しいというなら、自分で迎え入れて欲しい。せめて、最初の一回は。
彼とのセックスだって、初回は、彼が自分から自分の意志で、体を開いて飲み込んでくれた。あの時みたいに、本当に大丈夫だってことを、彼の方から示して欲しい。
そもそも、根本まで全部を受け入れて貰わなくたって充分に気持ちが良かったし、こちらの快楽重視で腰を振っても気持ちがいいと言って貰えるだけで満足だった。
それを言ってからもっと入ってもいいよとは言われなくなったけれど、だからと言って、彼の方から強引に迎え入れに来ることもなかった。きっと、入らないことはないけれど、無理に入れたいものでもないんだろう。それなら、入っていいよの言葉に乗せられて、強引に進んでしまわなくて本当に良かった。だって無理をさせたいなんて、これっぽっちも思っていないのだ。
そう、思っていたのだけれど。
ただただ体の相性がいいだけのセフレみたいな関係を、先程とうとう恋人へと進化させたら、お願いだから奥まで入れて欲しいと頼まれた。入っていいよ、ではなく、入れてくれ、というのが珍しくて、なんでそんなことを言うんだと聞けば、さすがに自分からそんな奥へ迎え入れた経験がないからだと返された。
そこまで挿れられた経験そのものは皆無ではないけれど、自分からするのは無理、だそうだ。でも恋人になったんだから全部頂戴、なんて言われてしまったら、こちらが頑張るしかないだろう。
とはいえ、やっぱり強引に押し込むのは躊躇われて、どうすれば少しでも閉じた先が緩むのかと、探り探り奥の壁をつついたせいで、いつになく感じさせて何度も果てさせてしまったけれど、でもきっと、それで正解だったんだろうと思う。
腕の中で掠れた甘い声をこぼし続ける恋人にホッとしながら、全てを包みこんでぎゅうと締め付けて貰う感動を堪能する。なんて、あたたかで幸せなんだろう。
とうとう奥まで入った、という衝撃が落ち着けば、次に胸の中へ押し寄せてくるのは相手への愛しさだった。
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