弟は何かを企んでいる2

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 ノックの後、部屋に入ってきた弟の機嫌は良さそうだった。
 家の中でエロいことはしない、というのは恋人になったところで変える気はなかったのだけれど、さすがに軽く触れるキスくらいならと許容するようになっている。つまりは恒例になりつつある、おやすみのキスをねだりに来ただけではないようで、弟はそのままどかりと部屋の真ん中辺りに腰を下ろしてしまう。
「何かいいことあった?」
「うん。そろそろ家を出ようと思って」
 その報告がしたいんだろうと思って話を振れば、そんな言葉が返ってきて、一瞬何を言われたかわからなかった。
「ようやく色々準備整ったんだ。だから、兄貴にも一度ちゃんと相談したくて」
「……は?」
 随分間を開けて、それでもまだ理解が及ばず、間抜けな音が一つ口から漏れる。
「あー、兄貴にとっては急だと思うけど、ずっと家は出たいって思ってて、」
「待て待て待て。え、家出るって、お前が? 一人暮らし? 出来んの?」
 ようやく何を言われたかは理解したけれど、何を言っているんだという気持ちは大きい。すぐに理解できなかったのも、この弟に一人暮らしなど出来るイメージがないせいだ。
 いやまぁ、自分が家を出ないのだって、似たような理由ではあるんだけど。
 必要ないと連絡しない限りは日々食事が用意され、汚れた衣服も洗濯かごに突っ込んでおけば、後日綺麗に畳まれ自室のベッドの上に乗っているような生活をしているのだ。それらを自分の手でと考えただけで、あっさり白旗を揚げてしまう。
「だぁから、そのために色々準備してたんだって。あと、一人暮らしになるかは兄貴次第かな」
「俺?」
「一緒に暮らさない?」
「はぁ?」
「兄貴と同棲したい」
「いやいやいやいや」
「やっぱ嫌?」
 そうじゃない。てか嫌かどうか以前の話だろう。
「嫌かどうかより、まず無理だろ。お互いに。家出てどう生活すんだよ。ってか準備したって何?」
「あー、引っ越し資金というか初期費用的なの貯めてたのと、あと、自炊できるように料理覚えたり。掃除と洗濯は元々そこそこ出来る、はず」
「え、お前、休みの日にこっそり何やってんのかと思ってたけど、料理習ったりしてたの? え、で、さらに初期費用まで貯めたって、お前、入社一年目でそこまで稼げるような会社、入ってた? そこまで残業もないような会社で???」
 頭の中を疑問符が巡りまくる。
 若干ブラック気味の自社は入社一年目でもけっこう容赦なくこき使ってくれたし、でもその分が給料に上乗せされていたから、その気になれば1年足らずで初期費用くらい貯まっただろうけど。料理教室的なものに通う費用も出せなくないかもだけど。かくいう自分も、結婚資金と思って結構貯め込んでいたんだけど。
 まぁ、結婚に至る前にその激務のせいで振られたし、そのおかげで、今じゃ弟相手に抱かれる側で恋人だ。
「いや、アルバイト。てか副業?」
 知り合いの飲食店で、料理を教わりながら手伝いをしていた、らしい。知り合いというか、友人の親の店だそうだ。
「それ、なんで言わなかったんだよ。ずっと隠れてなにかやってるとは思ってたけど、バイトしてるならしてるって言えば良かったのに」
「えー、だって、阻止されたくなかったし」
「つまり? お前は俺が、お前の自立を反対すると思ってる、ってことでいい?」
「まぁね。だって兄貴、今の生活で満足そうだもん。その満足を維持するために、俺を今のまま、側に置いておきたいかなって」
 確かに今の生活になんら不満はないし、むしろ幸せを満喫しているところがあるし、その幸せをもたらしているのがこの弟だってこともわかっている。
「お前は不満ってこと?」
「不満っていうより、欲張りなだけ。手に入れたいもののために、出来そうなこと頑張るのは基本だろ」
「手に入れたいもの? 恋人ってだけじゃまだ何か足りないのか?」
「わざとはぐらかしてる? 兄貴の言い分わかるから引いてるけど、お願い自体は何度かしてる」
 そう言われて思い当たることはあった。
「あー……家でヤりたい、って?」
「そう。正確には、俺のベッドで抱きたいってやつな」
 弟の匂いが染み付いたベッドの中で、ドロドロに甘やかされながら乱れまくる姿を見たい、らしい。兄貴の匂いで俺のベッドにマーキングして、とかなんとか言ってたような気もする。

続きました→

 
 
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