可愛いが好きで何が悪い40

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 布越しに触れた相手の熱には、今更すぎて、躊躇いも抵抗感も特にないらしい。それよりも、息を潜めてこちらの挙動を見守る相手の気配や、布の下で脈打つペニスの存在感に、こちらの興奮が引き出される気がする。
 見上げて窺う相手の顔は、羞恥と期待とを混ぜてかなり興奮しているようだ。
「これ、まだデカくなるよな?」
 掌の下に感じる存在は、自分のモノと比べてもやや小ぶりで、しっかりとした硬さはあるがガチガチに張り詰めているという感じではない。
「うん。サービスに期待しちゃって、思ったほどは萎えなかったけど。てかサービス待てなくて、そのまま下着越しに撫でられてるだけでもマックス行きそうだけど」
 言われなくてもわかっていたが、見てるだけで興奮しちゃうと言葉でも伝えてくる。そりゃ良かったと思いながら、口には出さず、とりあえずは布越しに軽く握り込む。
「ふ、ぁ……」
 その輪郭を辿るように手を滑らせ、形を確かめながら扱いてみれば、気持ち良さげな吐息が上から降ってくる。同時に、硬さと存在感がグッと増した気がする。
「お前も、結構漏らしてたんだな」
 レースが多いことと布の色の関係か、育ったペニスの先端が触れる辺りの布が思いの外ぐっしょりと湿っていることに、触れるまで気づかなかった。
「カウパー?」
「そう」
「そりゃあ、あんなの見てたらそうなるって」
「今度から、お前のスカートの中も、もうちょっと想像するわ」
「ツッコミどころが多いんだけど、それは俺が、お前の体の準備しながらカウパー出しまくってるって思うと安心するって話? それとも興奮する方?」
 やはり自分だけが興奮させられているわけじゃない安心のが大きいだろうか。いやでも、相手の興奮は顔やら声やらからも充分伝わっていたし、相手の興奮に釣られる快感もあるのだから、興奮が増す方かも知れない。
「どっちも、だな」
「興奮もするんだ」
 意外という顔をされる方が意外だ。
「そりゃするだろ。俺の興奮の何割かは、お前の興奮に釣られてる分だし。てかお前だって俺が感じるの見て煽られるんだから、俺だってお前が興奮してるの見せられたら煽られるんだよ」
 なるほどと納得する相手に、ついでとばかりに、お前の女装もそう悪くないよと伝えておく。
「俺のために、目一杯俺好みに寄せてくる健気さとか、好みの顔の子がエロい顔晒して俺に興奮してるのとか、俺が感じてるの見て嬉しそうに笑うのとか、自分が抱かれる側でも普通に興奮はするっぽい」
「ああ、積極的に俺を抱きたいとは思わないだけで、そういうとこはしっかり男目線てことね」
「そういうこと」
「そっか。俺に、興奮してくれるんだ」
 とろけるみたいな「嬉しいなぁ」の声と、手の中で脈打つ熱。随分と甘やかな声を出しながら、下半身はこんなにも興奮を示すのかと思うと、そっちの方がなんだか意外だった。
 次からは、嬉しそうにとろける声を出された時に、彼の興奮をより感じ取るようになりそうだ。この手の中の熱を、覚えておこうと思う。
「なぁ、これ、まだデカくなる?」
 嬉しいなぁの言葉とともに脈打ちはしたが、軽く扱いたときのように、質量がぐっと増すような感じはなかった。手の中の感触からすると、今のところ、ドン引きするほどのデカはなさそうだ。
「多分、ほぼほぼマックス」
 もっと大きくなると言われなかったことにまずはホッとする。
 ほんとに下着越しに擦られただけでマックスじゃんと自嘲する相手に、脱がすぞと声をかけて下着のウエスト部分に手をかけた。張ったペニスに引っかからないように気をつけながら引き下げれば、ボロリと目の前に相手の勃起ペニスが現れる。
「うーん……」
「ちょ、何その微妙な反応!?」
 目の前のペニスを凝視しつつ思わず唸れば、相手が少し荒らげた声を上げた。羞恥と焦りらしきものが滲んでいるようだ。
「ちょっと太め、の、ちょっとがちょっとで良かった」
 確かにディルドよりは少し太いかもしれない。自身のと比べたら、太い上に長さもある。むしろ太さよりも長さのが、比較したときの差を感じるかもしれない。
 布越しで感じていた太さはそこまで外していなかったが、この長さはわからなかったな。
「そりゃどうも。って、全然、良かったって反応じゃなくない?」
「いやだって、お前、こんなだったし」
 言いながら、掲げた手の真ん中3本の指を大きめに開いて見せる。
「いやそこまで広げてないでしょ。てかあれはわかりやすく説明しただけっていうか」
「まぁそれは誇張だったってことでいいんだけど」
「いいんだ」
「太さどうこうより、思ったより長くてどうしようかと」
「あー……まぁまぁ大きい、は、実は長さにも掛かってる」
 なのに、ちょっと太いだけとか言ったわけか。
 ただ、長いなとは思ったが、怯むほど長大かといわれるとそこまででもない微妙さだ。微妙すぎて迷っているともいう。
「今、指よりディルドのが長さあるよなとは思ってる」
「ああ、そういう話」
 つまりは、できればディルドは使いたくない相手の意志を尊重してやりたい気持ちと、ディルドで慣らしておいたほうがいいんじゃないかという葛藤だ。

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可愛いが好きで何が悪い39

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 相手は少し気まずそうに、あれよりはもうちょっと太めだと申告してくる。もうちょっとってどれくらいだ。
 こちらの想像する「だいぶ」とあちらが想像する「ちょっと」に差がありそうで怖い。
 確かに指3本よりは太いかも知れないが、あのディルドよりはっきりと太いのなら、指が嫌ならディルドでと提案されたところで果たしてどれほどの意味があるのか。
 いっそ見せてみろと要求するのもありかも知れないと思いつつ、とりあえずは話が違うという不満を訴えておく。
「てか3本で慣らせるって話はどこいった」
「いやだから、まだ慣らしてる途中でしょって」
「けど指、全部入ってるよな?」
 既に指の付け根まで押し込まれているのは感覚でわかっている。
「そうだけど、こう、もっと柔らかく広げていくっていうか、あー……」
 口での説明が難しいと思ったのか、ごめん一回抜くねと言われて、尻穴から突っ込まれていた指がゆるゆると抜けていく。それすら気持ちが良くて小さく喘いでしまったし、抜かれて空いた穴が物欲しげに収縮するのを感じてしまって、さすがに少し恥ずかしい。
「だからさ、今、ちゃんと3本入ってたけど、それってこういう状態なわけ」
 3本の指先を細くまとめて尖らせた手を掲げて見せつけてくる。
 ローションでどろどろに濡れているし、その指先が自分の腹の中に収まっていたのだと意識せずにはいられない。恥ずかしさに視線を逸らしたい気持ちもあったけれど、こちらを説得しようとしているらしい相手の顔は真剣だから、その手をしっかり見つめたまま頷き先を促した。
「それをさ、こう、」
 言いながら、まとめた指先を逆の手の親指と人差指で作った輪で囲み、輪から突き出た指をこちらに向ける。
「広げていけるから」
 まとめた指先を開くのに合わせて、指で作った輪はあっさりと指先が離れて広がっていく。
 何を見せられたかはわかったし、彼がやろうとしていることも理解はした。突っ込むにはまだ早いというのも、わざとこちらを焦らそうとしているわけではなく、単なる事実だろうこともわかった。
 ただし、理解したからと言って、すぐに再開できるかと言えば別だ。じゃあもうちょっと広がるまで頑張るからよろしく、なんて気持ちには到底なれない。やはり一度、確かめないと。
 こちらに向かう指先が開かれていくのを見て、正直に言えば戦いた。
 何をしたいかを示すためだけの誇張ならいいが、本気であの太さまで広げる気だとしたら、正直、新たにかなりの覚悟を決めなければならない。
 相手の「もうちょっと太い」がますます信用ならなくなって、確かめずにはいられなくなった。
「なぁ、そのスカートの中どうなってる? お前ももう勃ってるのか?」
「そりゃ、勃ってるよ」
 スカートという単語に突然何をという顔をされたけれど、続けた言葉で理解したのか、相手からは躊躇うことも恥じらうこともなく肯定が返る。
「じゃ、見せて」
「えっ?」
「見せろ」
「ちょ、そんな凄まなくても。てか見せてってのは……」
「お前のデカさを直接確認する」
「だよねぇ」
 こちらの、見せるまでは再開させない強い意志を感じ取ったのか、諦めたように一つため息を吐き、置いてあったタオルに手を伸ばす。
 濡れた手を拭った後で立ち上がるのに合わせて、こちらも上体だけは起こした。
「なんだろこのストリップでも披露するような恥ずかしさ」
「上手に脱げたら興奮するかも知れないな」
「それ絶対嘘」
 確かに。相手のナニの大きさへ意識の大半が持っていかれているので、どれだけ色っぽく脱いでくれたところで、それに煽られることはなさそうだ。
「てかそんな睨むみたいに見られたら萎えそうなんだけど」
「いいからさっさと脱げよ。萎えてたらちょっとくらいはサービスしてやる」
「ま、じで」
 口を開けて舌を出す仕草で、どんなサービスを期待したのやら。相手はそそくさとスカートのファスナーを下ろしていく。
 その場にストンとスカートが落ちて、ニットのプルオーバーの裾から半分ほどレースの下着が見えている。そういや下着まで女性用なんだっけ。
「下着まで女性物とか、お前の女装、かなり拘ってるよな」
「や、これは一応メンズ」
「メンズ?」
「あるんだよ、メンズでもレースの下着」
「上は?」
「ブラも。やっぱ上下セットのがいいかなって思って」
 ほらと言いながら、プルオーバーの裾を胸の上まで豪快に引き上げて見せる。恥じらいどこいった。
 いやまぁ、ストリップだの恥ずかしいだのは、こちらの睨むような視線への揶揄だっただけだろうけど。
「へぇ」
「可愛い?」
「評価し難い」
「どのへんが?」
「そもそも下着に興味が薄い」
「なんだ残念」
「ただまぁ、スカートの下からトランクスやらボクサーやらが出てくるよりは、好感が持てる。金かかってんなとは思うけど、そういうとこへの拘りは好きかな」
「だよね。知ってる」
「てことは、お前の拘りじゃなくて、俺のため?」
「巡り巡って結局は俺のためだよ」
「そっか」
「それより、サービスしてくれる気があるなら、見せろじゃなくて、直接触って大きさ確かめてよ」
 それもそうかと、請われるままに相手の股間の膨らみへ手を伸ばした。

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可愛いが好きで何が悪い38

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 そして確かにローションは優秀だ。指が2本に増やされても、そこから更に3本に増えても、特に痛みは感じなかった。相手のテクも関係しているとは思うが、だとしたって、たっぷり使われたローションの滑りには大いに助けられている。
 さすがに3本ともなると圧迫感は付きまとうが、それでも、思ったよりは苦しくなかった。それよりも、質量と凹凸が増えたせいで、間違いなく感じる刺激も増している。
 苦しいよりも気持ちいいが勝ってしまって、じわじわと与えられる快感はどんどん広がり、もどかしさが募っていく。
「も、はやく、しろ……ってぇ」
 もっと強い刺激が欲しくて先を急かす。強い刺激と言うか、いい加減、イケる刺激が欲しかった。それくらい、気持ちいい状態で焦らされている。
 勃起ペニスを握ってしごけば、尻穴に指を突っ込まれていても、多分間違いなく射精まで到れるのに。イッてしまうとその後が多分辛いからという理由で、勃起ペニスは放置されていた。
 理由には納得しているので、自分で弄ろうと手を伸ばすこともしていないが、色々な意味でつらい状況ともいえる。
 尻穴だけ弄られてしっかり勃起しているのも、触れられても居ないのに先走りが漏れまくって濡れているのも、どうしたって目に入ってしまうのだ。股を開いてその間に相手を迎えている体勢だし、相手の顔を見ていたいという欲求が羞恥を上回っているせいだ。
 相手任せに身を投げ出して、自身は目を閉じてやり過ごす、なんて選択肢は自分の中にない。
 女装した相手に迫られるのは、始まってしまえばそこまで抵抗はなかった。というよりも、多分あっさり慣れた。
 がっつりめのメイクは見慣れないものではあるけれど、今回はウィッグを使っていないのと、いちいち声を作っても居ないせいだと思う。現代コーデのプリンセス風ではあるが、メイクにしろ衣装にしろ、ガチプリンセスばりの近寄りがたさもない。
 ただただ、恋人が自分のためにめかし込んでくれているだけ、という認識であれば、好みの顔の子が楽しげに興奮する姿というのは決して悪くない。どころか、それなりに興奮が煽られもする。
 しっかり勃起している何割かは、絶対にそっちの興奮からだ。
 そんなわけで、彼の姿を思う存分に堪能しようとすれば、自分の痴態も自然と視界に入ってしまう。ついでに言えば、しっかりと勃ち上がりだらだらと先走りを零して快感を示すペニスは、当然相手を喜ばせたし、かなり興奮を煽ったとも思う。
 相手の喜びに、引きずられて湧き上がる快感は間違いなくある。こちらが感じれば、相手はさらに喜び興奮する。
 つまりは延々と互いに興奮を煽りまくっているような状況で、つらいのは自分だけじゃないと思いたいし、相手だってさっさと突っ込んで気持ちよくイきたいはずだった。
「もうちょっと、むり?」
 なのに相手は、なかなかこちらの誘いに応じて突っ込んではこない。いったいどれだけ焦らす気なのか。
「も、むり。てかもぉ早くイきたい」
「うーん……それなりに広がったし、入らなくはないかもだけど」
「じゃ、いいだろ。こいよ、もう」
「いやでも、もう少しだけ。指で弄られるのつらいなら、やっぱりディルドも使ってみる?」
 その提案には、思わず声が荒ぶってしまう。
「おっまえ、さっき!」
 2本目から3本目に指を増やす前、1番細いディルドを使うかどうかで迷いを見せたのは相手の方だった。何を迷っているのかと思ったら、せっかくまっさらの初めてなら、全部欲しい気がするとかなんとか言って、要するに、無機物の疑似ペニスで処女を散らすのは勿体ない、みたいな話だった。
 なんかもう色々思考がおかしい。おかしいんだけど、相手の言い分がわからなくはなかったので、好きにしろと言ってしまった。その時、指だけで慣らすのでも問題ないなら使わなくていいんじゃないかと言ったら、多分大丈夫と返したくせに。
「そうなんだけど。ディルドとか、ほんと、使いたくないんだけど」
「だけど、なんだよ」
「俺の、まぁまぁ大きい方だから」
「自慢か!」
「ただの事実だよ!」
「それって、あのディルドよりだいぶデカいのかよ」
 あの、と言いながら視線を送ったのは一番大きなディルドだが、大きいとは言っても布団に出ていた中で一番というだけで、驚くようなサイズではない。というか、こちらの勃起サイズを知っている彼が、抱かれる側になるつもりで用意したものだから、つまりはそういう大きさだ。
 指3本よりは多少太さがある程度で、だからこそ、指だけで慣らすのでも構わないと思ったし、大丈夫という彼の言葉も素直に信じたのに。
 一緒に暮らしていた時期が長かったし、相手の裸を見たことがないとは言わないが、さすがに勃起状態の相手のペニスサイズまでは知らない。実はめちゃくちゃデカいとかいう事実が、この場面で発覚したらどうしよう。

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可愛いが好きで何が悪い37

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 ジッと見られると照れるだとか緊張するだとか言いながらも、ローションの扱いには躊躇いも戸惑いもなく、手早く準備を終えたらしきローションまみれの手が股の間に伸びてくる。
「まずは触るだけね」
 いきなり突っ込んだりはしないから大丈夫と言われても、さすがに身構えずにはいられない。
「うっ」
 ぬるぬるの指先が肌に触れた瞬間に小さく呻いた。ゾワッと腕のあたりが粟立つのがわかる。
「冷たかった?」
「つめたくは、な、ぁっ」
 指の腹がキュッと尻穴に押し当てられて、多分反射で身が竦む。
「どう?」
「どう、って」
「くすぐったいとか、気持ち悪いとか。怖い、とか」
 言いながら、ぬるぬると滑る指先が尻穴を何度も行き来して、その周辺をベッタリとローションで濡らしていく。
 確かにくすぐったさも、慣れない気持ち悪さもある。人の手でそんな場所をまさぐられるのが初めてなのだから、未知の体験に恐れる気持ちもある。でも。
「ぞわぞわ、する」
「うん。鳥肌すごいたってる」
 気持ちぃの? と尋ねる相手の興奮がわかるから、多分、と曖昧ながらも肯定しておく。
「怖くないなら、少しずつ挿れていくけど、いい?」
 ここに、と言いたげな指先が、尻穴をトントンと突いている。
「ああ」
 頷いて身構えたのに、指先は尻穴を突くばかりでなかなか入っては来なかった。周りに塗りつけたローションを集めて穴の中へと押し込めるような動きを何度もされている。
 少しずつ押し込む時に触れる圧が高くなって、再度離れて動き出すまでの時間が長くなってはいるものの、入り込もうという強い意志は感じない。
「挿れないのか?」
 だんだんと慣れていくのに合わせて、身構えるのにも疲れてしまって、頭の中の疑問を相手に向かって投げてみた。
「挿れてるよ。かなりちょっとずつだけど」
 ほら、さっきより少し深く入ってる、と言いながら、指先がぐっと尻穴を押してくる。しかし、押されてるとは思うが、指が入っているという感覚はない。と思った瞬間。
「あっ……」
 つぷっと指先が肉の輪を抜ける感覚がして声を上げた。
「入った感じした?」
「してる」
「痛くない?」
「ない」
「ん、良かった」
 痛くないならもうちょっと挿れさせてねと、そのままぬるっと指が入り込んでくるのがわかる。入っている、というのはわかるが、思ったよりも異物感は少ない。
「なんだこんなもんか、みたいな顔してる」
 ふふっと笑いながら指摘されたけれど、そう思っているのも事実ではある。
「思ったよりイケそう、かも。てかもちょっとペース早めても、多分、イケる」
「そうだね。もうちょっと慣れたらね」
 初めてなんだからじれったいくらいがちょうどいいよと言い切って、埋めていた指をゆるゆると時間を掛けて引き抜いていく。挿れられるときよりも、ゾワゾワと肌が粟立つ感じがした。
「んんっ」
「気持ちぃ?」
「たぶん」
 やっぱり曖昧に肯定を返したけれど、相手は満足そうに頷いている。
 そうして何度もゆるゆると指を抜き差しされて、じわじわと体の熱が上がっていく。こんなもんかという余裕が無くなり、実感として「じれったい」を感じるようになって、もどかしさに腰が揺れた。
「ちゃんとお尻で感じられてるね」
 良かったと嬉しそうに笑われると、恥じらいやらが安堵で塗りつぶされる気がする。
 初めてで感じるようなものじゃないだろ、とか、お前は気持ちよくなれなかったって言ってたよな、とか。しっかり感じているらしい自身の体に対する疑問がないわけではないのに、頭の片隅に浮かぶその疑問は、相手の嬉しげな笑顔に押しやられて言葉になって漏れることはなかった。
 気持ちいいに集中できるかどうかは気持ちの問題とは言っていたが、恋人の嬉しそうな笑顔、というのは自分にとってはかなり大きな要因だと思う。もちろん、経験を生かした相手のテクによって引き出されている部分も、間違いなく大きいのだろうけれど。

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可愛いが好きで何が悪い36

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 即座にマジだよと返してきた相手は、俺の女装は基本お前だけのものだよ、などと続けてくる。そんなものを求めたことはないどころか、女装を頑張る方向は無しでと言ったはずなのに。
「てか恋人になってセックスもするってのに、今後もまだ女装は続けるわけ? 俺に見せるためだけに?」
 女装で迫って落とす、が第一の目的だったはずだし、そんなに金銭的な余裕があるわけでもないのだから、続ける必要はないのではという気がしてしまう。それを口に出してみれば、相手は少しばかり考える素振りを見せた後。
「だってお前、素のままの俺より、化粧した俺の顔のが好きじゃない? もっと言うなら、着飾ってる俺のが好きだよね?」
「それは俺の元々の好みに、お前が目一杯寄せてきてるからだろ」
 年季の入った可愛いもの好きに向かって、可愛い方がいいでしょと言っているのだから、否定が返るはずがない。
「それはそう」
「別に素のままのお前に迫られたって、今更嫌いになったり恋人やめたりとかしないんだから、その女装続ける必要あるか? って話なんだけど」
 ループしてないかと思いながらも再度必要ないのではと訴えてみたが、相手はやはり頷かなかった。
「素のままの俺のが良い、とか言われない限りは続けるんじゃないの。だってお前に、少しでもたくさん好きって思ってもらいたいし、使えるってわかってるものを使わないの勿体ないじゃん。お前が俺の女装にうっとりしたら、それだけで頑張る価値めっちゃある」
「よく化けてると思うし、好みかどうかで言えばちゃんと俺好みの見た目なのは事実だし、正直に言えば可愛いけど、女装したお前に迫られたりエロいことされたりを考えたら、素のままのお前のがいい気がする」
「それは追々考えると言うか、本気で素のままの俺のがいいんだなって思えたときには、止めると思うよ。だからもし俺に本気で女装やめさせたいなら、素のままお前に迫った時に、女装した時よりいい反応してねって感じかな。でもそれ、現状無理っぽくない?」
 その指摘には唸るしかない。
 言いたいことはけっこうちゃんと言えているけれど、女装した彼を前に、バカなことやってるなよとは言えていないのだ。無駄だとも意味がないとも言えてない以上、その女装に意味があることを認めてしまっているに等しい。
 小さく笑って距離を詰めてきた相手が、チュッと軽い音を立てて唇を奪っていく。
「これからエロいことするのに俺だけ着込んでるのズルい、とか言わないくらいには、この格好の俺、気に入ってるよね?」
「好みだし可愛いとはもう言った」
「うん。すごく、嬉しい。それだけでも女装披露したかいあったから、本気で素のままの俺のがいいって言うなら、化粧落として着替えてもいいよ。ちょっと時間掛かっちゃうけど」
「保険って話は?」
「お前がどうしてもって言うから着替えたのに。って訴えたら、ヤダとか無理とか言いにくくなるのは一緒かなって」
「嫌な分析だな。そもそも、途中でヤダとか無理とか泣きごという想定がないわ」
 そう言ってやれば、やっぱり男前すぎると、相手が楽しげに笑う。
 否定はしないが、男前だと言われたせいか、相手の女装に気圧されている現状を恥じるような気持ちが湧いた。見た目が好みに寄りすぎているせいで、こちらが強気に出にくい弊害はあるが、中身が彼であることには代わりがないのだ。
「男前ついでに、お前がどんな格好してようとどうでもいいかって気になってきた」
「それは男前な判断とは違う気もするけど」
「端的に言うと、さっさと始めたい」
「情緒!」
 言われると思った。けれど、思っていたよりもその単語が出てくるまでには時間がかかったなとも思う。まぁ、相手がガッツリ女装を決め込んでいたせいだけど。
「ほぼ裸で、やる気満々に出てきた相手に求めるものじゃないだろ」
「俺だって別に、今更恥じらいとか求めてるわけじゃないし、いいんだけどさぁ」
 手を取られて引かれるまま布団の上へと移動し、相手が腰を下ろすのに合わせて自分も腰を落とせば、相手の顔が近づいてくる。瞼を落として気持ち唇を差し出し待てば、すぐに唇が塞がれた。
 舌先で唇をつつかれて迎え入れれば、器用な舌が勝手知ったるとばかりに感じる場所を刺激してくる。気持ちの良さに身を任せているうちに、布団の上に転がされて開いた足の間に相手の体を受け入れていた。
 なるほど、これは手際が良い。
 経験の差というものをありありと感じながら、キスを中断して身を起こす相手の姿を目で追った。

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可愛いが好きで何が悪い35

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 どうにか準備を終えてバスルームを出てきたところ、バスタオルと共に彼の部屋着が置いてあって少々悩む。用意してあるということはこれを着てこいという意味かもしれないが、わざわざ着込む必要があるのかどうかだ。
 自分の手で脱がせたいとか、恋人に自分の服を着せてみたいとか、そんな思惑でもあるんだろうか。
 彼が泊まっていく時に部屋着を貸したことがあるから、その感覚でとりあえず用意してみただけという可能性も高い気がする。バスタオルと一緒に部屋着を置いてやったことが何度もあるから、同じように対応しただけかも知れない。
 結果、下着もつけずにバスタオルを腰に巻いただけで部屋へと戻る。気が早いとか情緒がないとか言われるかも知れないが、好きに言えばいいという判断だ。
「おい、なんだそれ」
 ただ、こちらの格好に何か言われるよりも、相手の格好に驚いたこちらが先に口を開く羽目になった。
「なに、って、泣いた目どうにかしろとか、萎えるとか言うから」
「だからって、なんで女装なんて……」
 顔にはしっかりメイクが施されていて、さきほど布団の横に散らかっていた布の塊が、レースの下着も含めてきれいに無くなっている。
「強いて言うなら保険?」
「保険?」
「男の俺に迫られるより、女装した俺に迫られる方が弱いの知ってるから、だね。途中でやっぱヤダとか無理とか、少しでも言いにくくしたい下心」
 確かに男のままの相手を前にするより、好き勝手言いにくくはなるかも知れない。見た目に引っ張られて、彼に対して甘えにくくなるとも言えそうだ。
「それと、たまには可愛い俺も披露しておきたい、みたいな」
「なんだそれ」
「だって、お前が部屋来るの避けてたから、女装頑張っても見せる機会がなかったんだもん」
 どう? と言いながら、立ち上がってクルリと回る。見た目だけなら問題なく女性に見えた。
 光沢のあるつるりとした長めのスカートと、首元まで隠れるふわっとしたニットのプルオーバーで、ドレスではないからガチプリンセスとまではならないけれど、先程よりも少し豪華なヘアアクセサリーを複数使用しているせいで、「プリンセスが現代コーデでお忍びのお出掛け風」ではある。
 というか姉たちの協力無しで既にここまで出来るのかと、若干引くような気持ちはあるものの、率直に言えば結構凄い。
「喋らなきゃ男には見えない。てか一人でそこまで化けれるなら、充分外歩けるだろ」
 確かに部屋で二人きりは避けてたけれど、だからこそ、女装してデートしたいとか言い出さなかったのが不思議な出来栄えとも言う。
「声出したらバレそうってのと、立ち居振る舞いでバレないか不安なとこはあるよね」
 意識的に高めの声を出したとしても、やはり声を聞いてしまうと違和感はある。黙って立っていれば女に見える女装と、動いて喋っても女に見える女装では、そのハードルが大きく違うとわからないわけじゃないけれど。
「学科の奴らにバレて問題あるわけ? 既にプリンセス写真披露しまくってんのに?」
 教授がどう思うかはわからないけれど、周りから凄いとか綺麗とか持て囃されて、注目の的になる未来しか想像できない。
「あー、うん。それは別の意味でちょっと避けたいんだよね。学科の奴らにはあんまり見せたくないっていうか、これから先も、大学に女装していくことは多分ないと思う」
「そうなのか?」
「お前にだけ見て欲しい、が正直な気持ち。お前が女装した俺を夢の国に連れていきたいとか言い出したらガッツポーズ決めるし喜んでついて行くと思うけど、でもそれ以外で出かけたいとかもないかなぁ」
 女子に褒められたらきっと嬉しいけど、男に可愛いとか綺麗とか言われても萎えるだけだし、とぼやくように言われて、それはまぁそうだろうと思う。
「お前がその格好で外歩いてたら、男にナンパされそうではあるよな」
「でしょ。既にあの完璧プリンセス写真のせいで、俺を恋愛対象から外した女の子より、俺をヤレル対象にした男のほうが多いって可能性もあってさぁ」
「マジか」
 ボヤかれて初めて知ったが、嘘だろとは言い難い説得力があった。

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