親切なお隣さん35

1話戻る→   目次へ→

「ちょっと!」
 思った通りに、怒ったみたいな焦ったみたいな、少し呆れを含んだ声を掛けられてニヤリと笑った。
「気持ちよかったすか?」
「良かったからこうなってるんでしょ」
 ちょっと棘がある声音に、やっぱ怒ってんのかなと思う。
「最後飲んだの怒ってます?」
「怒ってるっていうか、ちょっと嫌なこと想像しちゃって自己嫌悪してる」
「嫌なことって?」
「したことないって話を信じると、誰かに口でして貰ってめちゃくちゃ気持ちよくなった経験でもあるのかな、みたいな」
「ゲッ」
「ほら、図星」
 口でするのに執着しすぎと指摘されて、なんでそこまで口でしたいのって考えたら思い至ってしまった、らしい。
「引きました?」
「何に?」
「したことないのにされたことはある、って」
「何かしらのパパ活経験あるのはわかってるし、別に引きはしないけど、良く無事で、みたいな気持ちはあるかな」
 抱かれたことないのも本当なんでしょと聞かれて、本当ですと返したけれど。でもはっきりと目が泳いでしまった自覚はあって、それを見逃してくれる相手ではなかった。
「何か後ろめたいこと抱えてるなら、いっそ全部話してみる?」
「え?」
「パパ活やってたの大学入学前でしょ。家庭の事情とか色々あるのわかってるし、好奇心で試したってよりお金に困って仕方なくだと思ってるし、さっきも言ったけど、君がパパ活経験してなかったら君に恋愛感情持ったりしなかった可能性高いし、エロいサービスって単語が出た時点で一緒に御飯食べるだけ〜みたいな健全寄りなパパ活じゃなかった可能性は高いって思ってたし、だから今更、それを理由に君への気持ちが無しになるわけじゃないからさ」
 話したくないだろうから聞かなくていいと思ってたけど、いっそ全部ぶちまけたほうが気が楽になるんじゃないの。どんなパパ活してて、どんなことして、どんなことされたの。
 なんて畳み掛けるように聞かれて言葉に詰まる。
「そ、れは……」
「嫌だったのに無理やり何かされた、みたいな嫌な思い出にはなってないよね? でも正直に言ったら多分俺が引くようなことは何かしてるんだよね?」
「え、ええ……?」
 指摘されてもさすがにそんな認識はなくて戸惑った。いい人にあたったと思ってるし嫌な思い出になってないのは事実だけど、言ったら引かれるような何か凄いことをされたって記憶はない。
 というかそもそも、パパ活でエロい経験したことあるって部分が、知られたら引かれるはずの隠したいことだったはずだ。
「や、その、パパ活経験済みでエロいサービスもしたことある、なんて知られたらもうそこでドン引きなんじゃ? だって未成年だったんすよ」
 そういうのは絶対嫌いだと思って口にすれば、未成年だってわかってて手を出す大人は総じてクズだと思うし周りの大人は何やってんだって思うけど、止めてくれる大人が周りにいなかった君を責める理由はないよねと言われて、なんだか少し胸が痛い。
「ああ、後ろめたいのはそこか」
「え?」
「パパ活しないで済む方法があったら、周りに助けてくれる大人がいたら。パパ活なんて本当はしたくなかったよね」
「そ、な、」
 胸の痛みが増して息苦しい。混乱が頭どころか体の中を駆け巡ってるみたいで、目眩までしてきた。どこか他人事みたいに、ベッドに座った状態で良かった、なんて思ってしまう。
「初めてパパ活したのって幾つの時?」
「初めて……っていうか、一回だけしか」
 優しい声に促されるまま口を開いた。
「一回だけ? 何にお金が必要だったの?」
「修学旅行」
「もしかして中学の?」
「高校はバイト、できたから」
「ああ、うん。そうだね」
 中学時代!? って驚かれるかと思ってたのに、やっぱり穏やかな声がただただ肯定してくるから、そのまま当時に思いを馳せていく。
「積立はさすがに親が払ってたけど、お小遣いとかはなくて、自由行動の日とかあってそれとは別にお金は持ってかなきゃいけなくて。小学生の時はまだそこまで貧乏じゃなくて、お土産用のお小遣いとかあったから、そういうのも持ってくものだと思ってて」
 でもお土産なんか買って帰ったらどこから出たお金か追求されるって気づいたのは旅先だった。だからせっかく手にしたお金は修学旅行先では殆ど使わなかったけど、でもなんだかんだ自由に使えるお金はありがたくて、気づいたらなくなってた。ような気がする。
 なくなってホッとしたくらいには、手元に置いておくのが苦しいお金だった。
 あんな真似までして手にしたのに、結局無駄に消費しただけに終わったから。
「だから一回だけなんだ」
 つらつらと話すのを黙って聞いていた相手が納得した様子で頷くのを見て、その通りだなと思う。結局無駄になったから、二度目なんか考えなかった。
 いつの間にか、そう悪い経験じゃなかったとか、いい人にあたってお金を手に入れたって部分だけ、記憶に残していたらしい。
 ずっと、無駄にしたってことをなるべく思い出さないようにしてたのに。でも、久々に思い出してしまった。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親切なお隣さん34

*R18ですので18歳未満の方はこちらへ→

1話戻る→   目次へ→

「いや気持ちはいいんだけど。なんていうか奇妙な気分?」
「奇妙って?」
 気持ちいいならそのまま続けてって言ってくれればいいのに。そう思いながらも相手の言葉を拾って聞き返す。
「だって君、興奮してないよね? それどころか、なんか味を確かめられてるみたいな、味について何か考えてる、みたいな」
 ものすごく変な言い方だけど、初めての食材を味わってるようにも見える、なんて言われてさすがに笑ってしまった。
「あー、まぁ、すごく独特な味だけど、慣れたら不味いとか思わなくなんのか、とか、逆にこれが癖になるとかも有り得るのか、とかは考えてたかも?」
「そういうの真剣に考えながらするような行為じゃなくない? そもそも、美味しいとか思うようになる必要、全く無いからね?」
「んー、でも、美味しいってむしゃぶりつかれた方が興奮する的な」
 少なくとも自分はそれで興奮したわけで。
「普段どんなオカズ使ってんのか知らないけど、そういうの基本フィクションって思ってたほうがいいと思うよ?」
 そう言われてしまうと、実体験ですとか絶対言えない。いやまぁ、された経験ならある、を知らせるつもりは一切ないんだけど。
「俺が美味いってむしゃぶりついても、興奮しないすか?」
「そういうこと言ってんじゃなくて、美味しいってむしゃぶりつく、なんていうのは演技だったり演出だったりが殆どだから、出来るようになろうとしなくていいよって話」
 確かに、あれが演技だったり演出だったりには思えなかったけど、どこまで本気で美味しいと思ってたかも結局のところわからない。マジに味覚が狂ってる可能性もあるし、互いの興奮を煽るために言ってただけって可能性もある。
 大事なのは、美味しいかどうかじゃなくて、それによってどれだけ興奮するかだ。つい、初めて口にした味に、意識が持っていかれてたけど。
 そう思うと、興奮してるとは言い難い顔で、奇妙な気分だと言われてしまったのも納得だった。
「でもアンタに興奮してほしいし、気持ちよくしたいし、早くイクとこ見せて欲しいんすけど」
 だから、最初の目的は間違いなくそれ。という部分を改めて訴えてみた。
「その気持ちだけで充分だから、手で握ってくれる?」
「それ、やっぱ下手だったってことっすよね?」
「ちゃんと気持ちよかったよ。てか反応してたのわかってるでしょ」
 独特な味って思ったんでしょ、不味かったんでしょ、と言葉を重ねられて、そうだけど、だからって止めたかったわけじゃないのにと思う。でももう、させてはくれないのかも知れない。
 失敗した。
 しかしどうやらそんな不満や落胆が、相手にも伝わっていたらしい。
「やっぱり口でしたいの?」
「したい、す」
「じゃあ手でしながら、口も使って。深くまで咥えなくていいし、先走りは飲み込まないで擦り付けて。それとこれが一番大事なんだけど」
 なるべくおれを見て、と言われながら顎を取られて視線を合わせられる。
「興奮してって思うなら、おれが興奮できてるか、ちゃんと確かめながらして。気持ちよくしたいって思うなら、おれがどうすると気持ちいいか、おれを見ながら探って」
 わかった? と念押しされて、コクコクと首を縦に振った。なぜか言葉は出なかった。
 そうして再開したフェラは、フェラと言うよりも手で扱く方がメインになったけど、それでも間違いなく、互いにさっきより断然興奮できていた。
 一人でするのと違って相手がいる行為で、相手任せの受け身じゃなくて自分が相手を喜ばせたいんだから、どうすると相手が興奮するのか気持ちがいいのか、確かめながらしなきゃダメだったらしい。
 それに相手が興奮しているとわかるのはこちらの興奮も煽られる。ちゃんと自分を見ていろという相手の訴えは正しかった。というか多分それが一番効いた。
 たしかに、一番大事なことと念を押されただけはある。
「ん、そろそろ」
 イきそうだという訴えに少しだけ迷って、最後の最後に、相手の言いつけを破って深くまで咥えに行った。
「あっ、」
 驚いた様子で腰をひこうとしたけれど、それを許さず追いかけて、吐き出されてくるものを口の中で受け止める。だけでなく、勢い任せに飲み下した。
「ぅう゛ぇっっ」
 喉の奥に粘つく感じが引っかかって、鼻に青臭さが抜けて、不味い以前になんとも気持ちが悪い。なのに、飲んでやった、という達成感に気持ちが高揚する。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親切なお隣さん33

*R18ですので18歳未満の方はこちらへ→

1話戻る→   目次へ→

 したことはないがされたことはあるので、どうすると気持ちがいいかは一応この身を持って知っている。ついでにいえば、相手のサイズを勝手に想像して買った例のディルドを、口に咥えてみたこともある。というか、端的に言うとそういう練習も一応していた。
 いきなり抱いてはくれはさすがに無理かも、と思っていたのもある。その気がない相手をその気にさせるには、やっぱり気持ちよくさせるのが手っ取り早いだろうし、口を使った奉仕に大概の男は興奮する。はずだ。
 だから今は絶好のチャンスで、練習の成果を試すとき!
 そんな意気込みで相手から下着を剥ぎ取って、反応はしてるがガチガチに張り詰めてるってほどではないソレに向かって口を寄せていく。なのに。
「待って待って待って」
 焦った声とともに頭を掴まれてしまって、物理的に阻止された。
「ちょっ、なんで」
「なんではこっちのセリフだよ!」
「だって俺もアンタをイカセていいんじゃ……?」
「言ったけど。でもあの流れだったら、君も手でしてくれるつもりって思うでしょ」
 いきなり咥えようとしてくるとか思わないでしょ、なんて言われても困る。
 手でするより気持ちいいはずだ、というだけの判断だ。早く相手にも気持ちょくなって欲しいし、早く相手がイクところを見たいってだけだ。急ぎ過ぎと言われたら、まぁ、そうかもしれないけど。
「なら、舐めちゃダメなんすか」
「ダメっていうか、いや、ダメじゃないけど」
「え、どっち?」
「ダメじゃないよ。けどそこまでしなくていいっていうか、君が触ってくれるなら手でも充分に嬉しいし絶対気持ちいいから、口でしようなんて思わなくていいよっていうか、無理はしないで欲しいっていうか」
「別に無理は……」
「本気で言ってる? 抵抗ないの?」
 本気で疑っているらしい目を向けられたから、普通は抵抗があるものなのかも知れない。普通なんてよくわからないけど、言われてみれば、中学時代のパパ活相手には無理だと言って断ったことを思い出す。あのときは好きに弄られ何回かイカされたあと、相手のは最後に手でして終わりだった。
 じゃあなんでこの人相手には出来ると思ったんだろう?
 してもらって気持ちよかったのを覚えてるから、その気にさせるには口でするのも一つの手、くらいの気持ちだったけど。でもディルドを咥えて練習してるとき、相手がそれで興奮してくれる想像に自分自身が興奮したし、楽しんでいた面は間違いなくあった。
「どっちかっていったら、けっこう楽しかった……?」
「楽しかった!?」
 盛大に驚かれた後、今度は何かを考え出してしまう。深刻そうな顔をどうしようかと見守ってしまえば、「パパ活?」という呟きが口から漏れて相手の誤解に気づいた。
「や、誰かにしたことあるってわけじゃなくて!」
 されたことならあるけど、なんてことはもちろん言わない。
「アンタが興奮してくれる想像しながらディルドしゃぶってたときは、けっこう楽しかったっつー」
「ちょっと!」
「えっ」
「反則がすぎる」
「ええ……」
「抵抗ないのはわかったし、してみたいのもわかったから、もう止めないけど。でもホント、無理はしなくていいから。思ってたのと違うって思ったら止めていいからね」
 言っとくけど絶対美味しいようなものじゃないよ、という謎の忠告は、実際に咥えてみて少し経ったところで実感した。
 確かに美味しいどころか普通に不味いというか、苦しょっぱいような変な味だ。自分の先走りやら精液やらを舐めてみたことはないから皆こんな味なのかはわからないが、多分そこまで大きな差はないと思うから、美味しいって言いながら人のちんこを舐め啜って、吐き出した白濁もあっさり飲んでいたあのパパ活相手は間違いなくかなり味覚が狂っている。
 いやでも吐き出したいほど不味いかっていうと、唾液に絡めて誤魔化せば飲み下せているから、慣れればそこまで不味いとは感じなくなるのかもしれない?
 むしろこの変な味が癖になるとか?
「もしかして、あんま良くない、すか?」
 ふと視線を感じて目線を上げたら、興奮してるとは言い難い顔が心配気にこちらを見下ろしていた。
 下着を下ろした最初に比べたら硬度は増してるし、はっきり不味いと感じるくらいには先走りをこぼしてて、しっかり興奮してくれてるんだと思ってたのに。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親切なお隣さん32

*R18ですので18歳未満の方はこちらへ→

1話戻る→   目次へ→

 良かったと笑った相手が腕を広げて見せる。おいでとはっきり言われたわけじゃなかったけど、でもそんな幻聴が聞こえた気がした。
 目があったあと止めてしまっていた足を動かして、残り少しの距離を詰める。相手の前に立てば、嬉しそうな笑顔が見上げてくると同時に腕を引かれて身を寄せた。
 片膝をベッドにつく形で少し前のめりになりながらも、相手の肩を掴んでなんとかバランスを保ったのに、次には腰に腕が回って緩く抱きしめられてしまう。
 体勢がきつい。
「ね、キスして?」
 それでも請われるまま顔を寄せて、チュッチュと何度か軽く唇を触れ合わす。でもすぐにそれだけじゃ物足りなくなる。さっきみたいにもっと深くで触れ合いたい。
 ただ、今度はこちらが舌を伸ばして催促するより先に、相手の舌がチロリと唇を舐めてきた。迎え入れるように唇を解けば、そのまま口内に舌が差し込まれて、チロチロと口の中を舌先がくすぐっていく。
「んっ、ふっ、はぁ」
 やっぱり時々ゾワゾワした快感が走るけれど、でも、さっきみたいに腰がズンと重くなるみたいな痺れはなかった。さっきと何が違うんだろう?
 さっきはなんであんなに痺れるみたいに気持ちよかったんだっけと考えながら、相手の舌を追いかけて絡め取る。もっと深くへと誘うように、吸い上げる。
「っふ……」
 こちらが快感に鼻を鳴らしてしまうのとは違う、笑うみたいな、でもちゃんと快感も滲んだ吐息が漏れて、相手も気持ちがいいなら良かったと思ったのもつかの間。腰に回っていた腕が背中を辿って這い上がってきたかと思うと、頭を抱えられてしまう。
 なんで? と思う頃には、相手の舌に絡んだこちらの舌をズリと強く磨上げられて、ビクッと体が跳ねてしまった。
「んんん゛ん゛ぅっ」
 舌の付け根から上顎の奥の方まで、舐めると言うより擦られる勢いで相手の舌が這って、一気に快感が溜まっていく。さっき以上に腰が甘く痺れて、今すぐにでも射精してしまいたい。
 湧いた欲求に抗うことなく、相手の腹に勃起したちんこを押し付けてしまえば、気付いた相手が服の裾から突っ込んできた片手を添えてくる。だけでなく、すぐにキュッと握られてしまう。
 着てるのは脱衣所のカゴに用意されていた部屋着で、上下に別れていない丈の長いシャツみたいなもので、下着は付けていなかった。つまりは、いきなり剥き出しの勃起ちんぽを握られ擦られて、そんなのされたらイッちゃう、と思ったときにはもう果てていた。実質1分保ったかどうかすら怪しい。
「うっそ……」
 いつの間にか開放されていた口から、信じられない気持ちがこぼれ落ちる。
「嘘って何が?」
 言いながら、トントンと背中を叩いて促されて、結局途中から相手の腿に乗り上げるように崩れ落ちていた体を、どうにかベッドの上へと移動させた。だけでなく、いたたまれなさと恥ずかしさで熱くなった顔を隠すように、うつ伏せに寝転んで顔を枕に押し付ける。
「あっさりイッちゃったの、そんなショックだった?」
「う゛う〜〜」
 宥めるみたいに背中を擦られながらそんなことを言われて、わかってんじゃんと思いながら、とりあえず抗議の気持ちを込めて唸っておいた。
「まぁさっき一度お預けしちゃってたし、それでじゃない? おれは嬉しいばっかりだったから、出来れば早めに復活して欲しいんだけど」
「う゛う〜〜」
 クスクスと笑う気配にもう一度唸ってから、意を決してガバリと起き上がる。
「ん? 復活した?」
「俺もやります」
「え?」
「俺も、アンタをイかせたい」
 さっき部屋でキスしたときは相手もちゃんと反応してたんだから、今だってきっと相手も勃起してるはずだ。そんな気持ちで伸ばした手は払われなかった。
 さっき一度確かめた熱は、間違いなく今もそこにある。だから一度部屋着の上から確かめたあとは、相手がしたのと同じように、服の裾から手を突っ込んだのだけど。
「あ……」
 自分と違って、相手は下着を着用していた。思わず相手の顔を見つめてしまえば、脱がしていいよと笑われてしまう。その笑いは、相手に直接触れたくてがっついてることへなのか、やる気満々で下着を着けずに部屋に戻ったことへなのか。
 まぁ、どっちだっていいけど。とは思うものの、なんだか少し恥ずかしくて、またちょっと顔が熱い。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親切なお隣さん31

1話戻る→   目次へ→

 そしてあからさまに気を抜いたせいで、相手にも相当気にしていたと思われたらしい。
「もしかしてそれを気にしてた?」
「それ?」
「初めてなのに初めてじゃないみたいな反応しちゃいそう、って」
「まぁそれも多少は。てか俺が初めてなの、やっぱ嬉しいとか思います?」
「そりゃあ素直に嬉しいよ。だって君が実は経験済みですって言うとしたら、それ、高確率でパパ活とかだろ?」
「グゥッ」
 見事すぎる指摘に、言葉が喉に詰まって変な音が鳴った。そんな反応を見せたら、経験あるって言ってるようなものなのに。
 そしてまんまと、パパ活経験済みと認定されたっぽい。
「まぁ君がパパ活したことあっても、おれと出会う前の話なら仕方ないとも思ってるから大丈夫。もっと早く出会いたかったってちょっと悔しい気持ちも沸くけど、早く出会ってたからってそれが阻止できるかもわからないし、そもそも君を同じように好きになってるかもわからないし」
「あんなにパパ活否定してたのに?」
「それは君が金銭的に困ってるなら助けたいと思ってたし思ってるからだよ。だから学費の問題を相談してくれたときは本当に嬉しかった。あと君を明確にお金でどうこうするのは絶対に嫌だったから、牽制の意味合いが大きかったよ」
 おれがパパ活してくれたらいいのにって割と本気で思ってたでしょ? と、疑問符付きだけどやっぱり指摘には違いない言葉が続いて、諦めの境地でハイと返した。
「ちなみに、君がご飯作ってくれるのをパパ活みたいなものって言ったり、おれとパパ活するのがありっぽいお誘いしてこなかったら、おれは自分の中に湧いた君への感情を、恋愛感情とは思わなかった可能性がある。というかその可能性が高い」
 だからまぁ、君が何かしらのパパ活経験済みだったからこそ今があるとも言える、なんて言われて一気に頭の中に疑問符が湧きまくった。
「えっ??? なんで???」
「いやだって、お金払ったらおれとエロいことしてもいいって思ってるんだ、ってのは結構衝撃的だったというか、あれがなかったらそういう対象に考えなかったと思うんだよね」
 じゃあもし、食費以外にもお金出す気があるならエロいサービスも考える、なんて言わなかったら。もしもバイト感覚で手間賃をねだっていたら。好きにはならなかったってことだろうか。
「まるで俺のせいでおれを好きになったみたいな……」
「それはちょっと違う。昔貰った恩を返すのがそもそもの目的だったし、最初は大家さんとかと同じカテゴリに入れてたっていうか、好意を持つのはいいけど恋愛対象にしていい相手ではない認識だったの。それが、君のパパ活発言で、もしかして恋愛対象にしてもいいのかなってなっちゃった」
「あー……大家さん大好きっすもんね」
 思わず呆れ混じりに苦笑すれば、同じように苦笑を返しながらも。
「まぁ君におれと恋愛したい気持ちがなかったのも知ってるんだけどね。恋愛感情抜きでお金を挟んでエロいことをする、というのがおれにはどうにも受け入れられなくて、君をこっちに引きずり込んだとも言える」
「あの、もしも俺が、エロいサービスとか言い出さないで、食事作り続けてもいいけど手間賃出してってバイト感覚で頼んでたら、俺と結婚とか言い出さなかったんすか?」
「そうだね。そういう形でおれからお金を引き出してくれてたら、君を恋愛対象にはしなかったかもね。君のご飯の魅力の前で、就職後も副業として続けないか、とか、エロいこと抜きでいいからパートナシップ契約しない? みたいなぶっとんだ提案してる可能性もなくはないけど」
「そこまで凄いもの作ってる認識、ぜんぜんないんすけど」
 これは度々感じていることでもある。嬉しいなとは思うけど、妙に評価が高すぎるとも思う。
「ご飯の味だけの話じゃなくて。君がおれの好みとか健康とか考えながら作ってくれてるってわかるのが、まず凄く嬉しいんだよね」
 もしかしたらこれは弟くんの影響もあるのかもだけど、と言われて、たしかにそれはあるかもなと思う。
 美味しいとかは言ってくれなくても、不味いと残されることがあまりなかったのは、弟の好みを意識してたからという気はするし、食材の産地まで気にするくらい健康意識が高かったから、栄養面をそれなりに考慮するのだって当たり前だった。
「それに、君と一緒に食べる時間も、お弁当を開ける時のワクワク感も、特売品が買えたって喜んだり、食材の値段が上がって落ち込んだり、レシートまとめて食費報告してくれたり、そういうの全部ひっくるめて、君が作るご飯の魅力と思ってる」
「後半ちょっとよくわかんないすね。特売品買えたとか食材高くなったとかの報告が? 魅力に? なるんすか?」
「だってもう君への好意は恋愛感情だし、愛しいって気持ちで見ちゃうし、君を恋愛対象にしてなかった場合どうなってたかなんて正しく想像するのは無理だよね」
 開き直って言い切られたけど、恋愛感情だからと言われたところで、特売品だの食材高騰だのの報告が魅力に感じるって話に納得が行くわけではないんだけど。
「エロいサービスも考える、なんて言ったこと、後悔してる?」
 納得行かない気持ちをどう受け取ったのか、そんなことを聞かれて首を横に振った。後悔なんて、欠片もしていない。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

親切なお隣さん30

1話戻る→   目次へ→

 それでもどうにか、核心に触れてしまわないように言葉を選びつつ口を開く。なんでもないですで押し切れる気がしなかったというか、あれだけぶち上げていたテンションが、この土壇場でガクッと落ちてしまったことを気にするなとも言えないからだ。
「あの、俺、自分で弄ってた、って、言ったじゃないすか」
「そうだね」
「しかも壁向こうのアンタにバレるくらい、喘いでたわけじゃないすか」
「うん、まぁ、君の話を聞く限りではそうなるよね」
「で、ずっとアンタに抱いて貰う想像で気持ちよくなってたのが、今、現実になろうとしてて、しかも今のアンタは俺の恋人で、でもそこまでは想像したことなくて、あー、その、ずっと都合がいい妄想ばっかしてて、アンタが実際にどんな反応するのかわかんないのは怖いっつうか、がっつく気満々だったのに引かれたらやだなとか、そもそもホントに俺を抱けんのかな、とか、なんか色々考えすぎて、その、お尻使うセックスに抵抗とか、は、ない……ってことでいいんすか?」
 黙って聞いてくれたので、何言ってんだろと思いながらも思いつく限りのことをダラダラとぶちまけてしまえば、相手はまず、大丈夫だよと口にした。ただし、続いた言葉はその大丈夫を全く保証していなかったけど。
「正直なところ、経験のあるなしで言えばアナルセックスはしたことがないんだけど」
「ちょ、っと!」
 思わず、それでよく大丈夫とか言い切るよな、という気持ちが溢れてしまった。
「気持ちはわかるけど、取り敢えず最後まで聞いてよ」
 自身のとりとめのない吐露を黙って聞いてもらったあとなので、そう言われてしまったら黙って最後まで聞くしかない。そう思ったのに。
「君が口へのキスを許してくれたあと、いつかはって思いながら男同士でのアレコレをおれもかなり調べたし、一応自分の体で試してみたりもしたわけ」
「は? えっ? 試した?」
 初っ端から聞き捨てならない単語が飛び出てきて、口を挟まず聞き続けるのは無理だった。
「そう。試してみたの。だって君が抱く側ならって言い出す可能性だってあったわけでしょ。おれとしては、君が結婚というかおれとのパートナーシップに応じてくれるなら、そこは譲ってもいい。って言えたほうがいいよなって思って」
「言えたほうがいいと思って?」
 なんか変な言い回しだと思いながら繰り返してしまえば、いくら好きになっちゃったからって年下の男の子に抱かれたいって感情が素直に湧いてはこないよと、苦笑とともに告げてくる。
「つまりね、君に抱かれる想像で弄って気持ちよくなるのは無理だったし、君に抱かれたいなと思ったこともないんだけど、君にどうしても抱く側がいいってお願いされたら頷けるかな、くらいにはなってるんだよね。って言ったらやっぱドン引き?」
「ドン引きっていうか、えぇぇ……」
 引くというより戸惑いが凄い。相手が抱かれる側になる可能性を考えたことは欠片もなかったせいだ。
「俺が抱く側とか考えたことなかった、す」
「できればそのままそんなこと考えずに、抱かれる側で満足してもらえるといいなと思ってるよ。というかおれとしては、おれが君を抱けないとしたら、君がやっぱり無理だとか痛いとか言いだす場合だけだと思ってる」
 経験はないけど抵抗なんてないし、むしろ期待ばっかり膨らんでると言って、やっぱり相手は苦笑している。
「めちゃくちゃデカいとかじゃなければダイジョブ、す」
 こんくらいなら、と思わず所持しているディルドのサイズを手で示してしまって、やっちまったと思うが後の祭りだ。
「あ、や、その……」
「もしかして、随分具体的だねって突っ込むべきとこなの?」
 慌てすぎてて怪しいよと言いながらも、笑ってくれているだけマシだろうか。
「アンタのちんぽ、勝手に想像して買ったんすよ。ディルド」
 がっくりと肩を落として、仕方なく正直に告げる。隠しても仕方がないと言うか、隠して経験済みと思われたくはなかった。
「バイブじゃなくて?」
「え、気にするのそこ、すか?」
「いやだって君がアンアンしまくってたのがバイブの性能のおかげとかだったら、おれに勝ち目ないかもって思って」
「勝ち目……」
「だからけっこう期待しちゃってるんだって。そんな経験あるわけじゃないし、アナルセックス初めてだし、君を満足させられる自信なんか全然ないんだけど。でもそれはそれとして、君が気持ちぃって喘いでくれる姿が見たいと思うのは当然じゃない?」
 結構力説されてしまったが、そんな力説されても困る。というか、当然じゃない? なんて聞かれても答えに困る。
「俺がアンアンしまくっても引かないんすか?」
「なんで引くと思うの?」
「全然初めてっぽくないから? つかディルド突っ込んだ時点で処女じゃないとか言われたら、まぁ、そうなんすけど。でも、」
「誰かに抱かれた経験があるわけじゃないなら初めてでいいと思うよ」
「そ、すか」
 本物ちんぽは突っ込まれたことないですと申告する前に、相手がこちらの言いたいことを汲んでくれて、しかも肯定してくれたから、一気に気が抜けたと言うか、気が楽になったのは間違いない。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁