聞きたいことは色々14

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 泊めてと言ったからには、車は相手宅へ向かうのだろうと思っていたのに。途中からどこへ向かってるのかわからない景色になって、というよりは明らかに街中から逸れて山道を登り始めて、やがて辿り着いたのはどうやら展望スポットらしい。
「いいとこ、とか言うから、馴染のラブホでもあるのかと思ってました」
 いったいどこ向かってるんですか、というのは当然尋ねていて、その時の返答が「いいとこ」だった。
 確かに見下ろす景色は綺麗だし、多分、知る人ぞ知る的な穴場スポットなんだろう。なんせ車が3台停まれるかどうか程度の広さしかない。
「ラブホ街はもうちょっと違う方向だなぁ」
 じゃあ次のデートはラブホ行こうかと言われてしまって、ラブホ予測を口にしたのは完全に失言でヤブヘビだったけど。
「ホントは夜景がオススメなんだけどね」
 良い案ですねとも嫌ですとも言えずに、黙って眼の前の景色に見入るふりをすれば、隣に並んだ相手が、さすがに早すぎるなと残念がった。昼に待ち合わせて買い物とランチくらいしかしていなかったので、日が暮れるのはまだまだ先だ。
「でもまぁこの時間も悪くないよね、人居ないし」
 特に週末だと、車が停められない、なんて場合もないわけじゃないらしい。
「そんな人気観光スポットなんですか」
「ここからの夜景がけっこう綺麗、ってのはそこそこ知られてるんじゃないの」
 全然知らない? と聞かれても、知りませんと返すしかない。車を持ってるかどうかで、気に留める観光情報はだいぶ違うだろって話な気がするけど。だって知ってたって、こんなとこ一人じゃ来れない。
「じゃあここの夜景も候補に入れとこう」
「デート先の?」
「そう」
「デートはちゃんとするんですね」
「だってセックスしかしないなら恋人じゃなくてセフレじゃない?」
「なるほど」
 そういう基準か、と「恋人」の解像度が上がっていく。
 今日の買い物やドライブやこの展望スポットもそうだけど、デートに誘ってるってはっきり言われたし、さっきはデートっぽくドライブしようとも言ってたし、ちゃんと恋人っぽいことをしてくれる気はあるらしい。
 ここの夜景はともかく、さっきラブホも今後のデート先候補に入れられてたっぽいけど。映画だの水族館だの動物園だの遊園地だのの定番デートスポットでも、行きたいって言えば一緒に行ってくれるんだろうか?
 そもそも、映画はともかくそれ以外は行きたいと言えないと思うけど。というか憧れ的なものはあるけど、男二人で? 定番デートスポットに? と考えて尻込みしてしまうに決まってる。
「俺、デートするの好きなんだよね」
「へぇ意外……ではないか?」
 反射的に意外だと思ったのは、男同士でデートすることに躊躇いがないらしい、って部分に対してだからだ。というか多分自分は人目をそれなりに気にすると思うし、純粋にデートを楽しめるかは正直あまり自信がない。
 今日だって、買い物中は買い物に付き合って貰ってるだけって内心いっぱい言い訳してたし、車出して貰えて良かったって心底思ったし、人の居ないデートスポットを知ってるのも、そこにシレッと連れてくるのも、さすがだなって感心しきりだ。
 でもこの人はゲイであることを隠してないから、同性とのデートも、人目なんか関係なく楽しめるのかも知れない。
「お、理解して貰えそう?」
「賛同は出来ませんけど、まぁ」
「賛同は出来ないか。でもちょっとずつ慣れれば、ね」
「ですかね。こういう人が居ないデート先なら、安心して楽しめる、かも?」
「多少は人が居たほうが、俺はスリルあって楽しいけど。それも含めて、慣れてけば、かな」
「いやスリルとかは求めてないんで」
「だとしてもやっぱ多少の刺激は必要でしょ」
 ふいに横から伸びてきた腕に肩を抱かれて、グッと引き寄せる力に従えば、顔を覗き込まれる気配と唇が触れ合う感触と、チュッと小さく響くリップ音。
「え……」
 前触れがなさすぎるキスに驚きよりも戸惑いが大きいが、相手はいたずらが成功した子どもみたいに上機嫌に笑っている。
「誰も居ないところで掠め取るキスより、人目を盗んで掠め取るキスのが興奮するけど、まぁ、嫌がられない程度に、と自制する気も一応はあるから」
 あまり警戒しすぎないで欲しいと言われても無理な話だ。
「社内でとか絶対なしですから! 慣れとか関係ないですから!」
「ああ、まぁ、そこはね。さすがに懲りてる」
 デート中以外で手ぇ出したりしないからと言われても、やっぱり欠片も安心できない。だって再度のキスは外でするにはあまりに濃厚だったし、勃っちゃったなら車の中で抜いてあげようかって提案されたし、それをお断りしてさっさと相手宅に向かってもらうよう説得するのはなかなかに大変だった。

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聞きたいことは色々13

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 何が不満? と聞かれて、逆に何が良いんですかと尋ね返した。
「俺が未経験だったから抱いてみたかった、ってだけじゃないんすか。一回やったら興味なくしてポイなんだとばかり思ってたんですけど。てか、恋人になろうって言ったのは俺が抱かれる気になれるようにだし、俺が本気で好きになったらどのみちポイするんですよね?」
「なんか色々誤解されてる気もするけど、恋人になったと思ってたから、お前を落とすゲームをやってる気はなかったよ。でもあの晩限りの恋人と思ってて、今はもう恋人じゃないって言い張るなら、今からお前を落とすゲームを始めるのもありだよな」
「待って待って。だってもう抱かれたのに? 俺を落としてどうすんですか?」
 好きにさせてから振るのが楽しいとか言い出したらドン引きなんですけど、と続けたら、おかしそうに笑われて、そこまで悪趣味じゃないけど、と返された。
「けど、なんですか。結果的にそうなっちゃうよね、みたいな話ですか」
「どうだろね。結果的にそうなる、と言えないこともないのかもだけど、説明が難しいな」
 好きになって貰う過程を楽しむのは事実で、だけど別れを楽しんだりはしてなくて、でも惜しいとも悲しいとも思わないから薄情なのもきっと事実、らしい。好きになって貰うまでが楽しければ楽しいほど、ある程度満足したところで急激に気持ちが冷める、らしい。
「標的にされる相手が可哀想すぎじゃないですか。てかそれが俺になるかもとか、大迷惑なんすけど」
 恋愛未経験者を弄ばないで下さいよと言ったら、やっぱり可笑しそうに笑っている。こっちはちっとも笑えないのに。
「だからそんなゲームなしで、もう恋人ってことでいいだろ」
「だから! 俺の何が良くて恋人とか言ってんですか、てのを聞きたいんですって。そういや抱かれてる間『いいね』って何度も言われた記憶あるんですけど、あれって何が良かったんですか?」
「そうだな。端的に言えば、恋愛未経験でセックスも俺とのあの1回しかまだ知らないとこ」
「つまり体目当てなんだ……」
 知ってた!
 てかそれくらいしかないだろうことを、まんまと言われてしまっただけだ。
 特別鍛えてるわけでもないけど、運動は嫌いじゃないと言うか勉強に比べたら体を動かすほうが断然好きだったから、そこまで見劣りする体ではないはずという自覚はあった。それに、色々経験してそうだけど、むしろ経験してるからこそ、他の男を知らない体がいいのかも知れない。なんてことを思ったりもしていた。
「男なんて結局そこでしょ」
「ですよね」
 はぁああ、と大きなため息が零れ落ちていく。
 だって見た目なんか至って平凡で、相手と比べたら完全に見劣りするレベルだし。こんな人だと思わなかったって感じたくらい、相手だってこちらのことなんか大して知りはしないだろうし。って考えたら、魅力があると言って貰えるのなんか体だけなのは納得でしかないんだけど。一応は可愛いとも言ってくれてたんだから、何かしら、こういうところが好ましい的なものが聞けたら良かったんだけど。
 この人にとっての「恋人」ってのはセックスをする相手のことを指していて、恋愛する相手を指していないんだろう。欲しかったのは恋愛相手で、互いに恋情を持って付き合うことを「恋人」と呼ぶのだと思っていたのに。
 この人と恋人として過ごす時間が増えたら、こういう人だってわかってたって、本気で好きになったらポイされるって知ってたって、絶対好きになってしまう。今現在、強引に恋人関係に持ち込もうとされたり、体目当てを隠しもしない態度を取られているのに、ちっとも嫌えそうにないのがそれを証明している。
 こんなの、体だけが目当ての恋人相手に虚しい片想いが確定だし、本気の好きがバレたら捨てられるって不安が常に付きまとうことも確定だ。こんな確定事項、憂鬱になるに決まってる。
「そんなに嫌?」
「嫌じゃないです。てか俺を落とすゲーム始められる方が断然嫌です」
「だよねぇ」
 今度は相手から、小さなため息が吐き出されてくる。
「正直、なんかもう色々面倒だから落とすゲーム始めたい」
「やですってば。てか恋人でいいです。文句ないです」
 今夜また泊めてくださいよと誘いをかければ、「いいよ」と短いながらも機嫌の良さそうな肯定が返った。

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聞きたいことは色々12

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 相手からの申し出だったのと、人目を気にせず話をするのに良さそうかもと思って、買い物デートは相手に車を出して貰うことにした。
 ただ、もともと強引に捻り出した「買い物」は当然のようにあっさり終えて、さぁじゃあじっくり話し合いを、と思ったところで次の目的地をどうするか聞かれて迷う。駐車場に停めた車の中で話せばいいかと思っていたけど、それじゃダメなんだろうか。
「ダメ、ではないけど。つか今のは、お前の家まで荷物運ぼうか、っていう提案だったんだけど」
「あ、次の目的地ってそういう……」
 重いものも嵩張るものも買ってないので、送ってもらう必要はない。車を出してもらった理由はそこじゃない。
 必要ないですと言えば、わかったと相手も即座に了承する。同時に、なんのために車を出してもらったかも思い出したらしい。
「話し合う時間が必要だろとは確かに言ったけど、そんな話すことないよなとも思ってんだよね。だって俺が恋人で不都合とかある?」
 身近なとこで欲しかったんでしょ、恋人。と言われてしまうと、そうだけど、とは思うんだけど。
「じゃあとりあえず俺の家向かうのでいい?」
「え、なんで!?」
 急に話が変わったのと、想定外すぎる次の目的地に驚いた。恋人が欲しい自身の気持ちに向き合ってる場合じゃない。
「家送らなくていいみたいだし、他に行きたいとこがあるわけでもなさそうだし」
「いやいや、ちょ、それは。えと時間下さい」
 行きたいとこ探しますって言ったら、あからさまに避けるねって苦笑されてしまった。
「だって家にお邪魔したら結局またエッチなことする流れになりそうで」
「うん。でもそれ、何か問題ある?」
 恋人が2週間ぶりに二人きりになってヤらないとかある? と聞かれても困る。だって恋人と2週間ぶりの恋人らしい時間、なんてウキウキと期待する気持ちが全然ない。
「だから! そもそも! 2週間ぶりの逢瀬、みたいに思ってんのそっちだけなんですって」
 なるほど、って返ってきたら、理解はしてくれたらしい。
「じゃあ適当にドライブでもするか、デートっぽく。さすがにこのままここで話し合うよりいいだろ」
 さすがにそれを引き止める言葉は持っていなかったので、車はあっさり動き出す。
「でさ、話戻すけど」
 しばらくして、相手がそう切り出してくる。
「どこに戻るんですか?」
「俺が恋人で不都合があるかって話」
 そういや相手の家に向かうのを阻止するやり取りの前はそんな話題だったっけ。
「むしろかなり都合のいい相手だろ、って思ってんだけど」
「でもこの2週間、恋人っぽいこと何もなかったですけど?」
 付き合ってるって認識だったんですよね? と確かめてしまえば、職場でゲイバレするのは嫌だろうと思ってただけと返ってきた。こちらからのそれっぽい行動が一切ないのも、同様の理由と思ってたらしい。
「まさか恋人になった認識がなかったせいだとはな。まぁプライベートの連絡先を交換しそこねてたのと、それに気づかず結果的に2週間も放置になったのはこっちのミスだが」
 会社でも恋人っぽいやり取りが必要? と聞かれて、慌てて首を横に振りつつ否定した。身近なとこで恋人が欲しいのは事実だけど、だからって職場バレなんか気にしない、という心境にはどうしたってなれそうにない。
 それに、校内でエロいことして退学になった過去持ち相手に、会社でも恋人扱いしてなんて言ったら、何されるかわかったもんじゃない。せっかく入った会社なんだから、あまり変な理由で退職したくはない。
「逆に言えば、俺の方からの会社バレはないって言い切れるくらい、完璧に隠し通せるのが証明されたんじゃないか?」
 会社にゲイバレしないし、ちゃんとゴム使うし、自分の快楽だけ優先しないし、むしろお前がイキまくりな気持ちぃセックスできる、身近な恋人だぞ。これ以上都合がいい相手とか居る? と自信満々に言い切られてしまうと否定はしづらい。しづらいんだけど、だからって歓迎出来るかは別だ。
 恋人が出来たってワクワク感はないし、どうしたって不安が大きい。

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聞きたいことは色々11

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 明日どうする? という声が掛かったのは、セックスをした夜から2週間後の昼休憩時だった。ちょっと昼飯付き合ってと言われたところからして、いったい何を言われるんだろうとかなり緊張していたので、拍子抜けって気もするし、意味がわからなくて怖い気もする。
「どうするも何も、約束とかしてないですよね?」
 そもそもあれ以降、まともに会話するのが初めてだ。同じ部署なんだから業務絡みの会話はあるけれど、そこに親しみ込めたやり取りなんかは発生してないし、多少の雑談も他愛のないものばかりだった。
 特別気まずくなったわけでもないけど、ヤッたからって相手との距離が縮んだわけでもない。
 あんなドロドロに疲れ果てるセックスをしたのが嘘みたいに、翌朝顔を合わせた時からもう、けっこう素っ気ない対応をされている。
 まぁ素っ気ないなりに体の調子は気遣ってくれたし、遅い朝食というか早い昼食というかは出してくれたんだけど。初エッチの感想を求められたり、逆にこちらの振る舞いやら体やらを評価されたりするのかと思ってたから、そんなの全然なくてホッとしてたんだけど。
 抱いて興味が満たされたんだろうと思ったし、エッチの最中ですら殆ど甘やかしてくれなかった男に期待なんかするだけ無駄だと思ったし、自分自身、なんだかなぁって微妙な気分でいっぱいだったから、素っ気ない相手の態度に言及したりはしなかった。
 初エッチに対して思い描いていたアレコレが叶わなかったのと同様に、初エッチ後の朝に思い描いていたアレコレも叶わなかったけど、色々夢見過ぎだったよね、ってことで納得済みと言うか諦めがついているから、もうそっとしておいて欲しい。くらいの気持ちだったんだけど。
 なんで2週間も経過してから、昼食に誘ってきたりしたんだろう。しかも明日どうするってどういうことだ。
「まぁそうだけど。でも2週間経ったし」
「2週間経ったから?」
「そろそろ次のデートを誘っておいたほうがいいかなと」
「は?」
「デートに誘ってる」
「え?」
「俺達、付き合ってるんだよな?」
 驚きでまともな言葉が返せずにいたら、とうとう相手が不機嫌そうにというか、意味がわからないと言いたげに眉を寄せる。意味がわからないのはこっちの方なんだけど。
「え、ちょ、いやいやいや」
「なんでそんな驚くかな。別れ話された記憶、ないんだけど?」
 確かに別れ話をした記憶はないが、あれはあの夜限定の恋人って話だと思っていた。というか、付き合いが続いてるなんて到底思えるわけがない2週間だったんだけど!?
 え、俺等付き合ってるよねって、この人本気で言ってんの?
「嘘でしょ」
「何が嘘だって?」
「だってあの夜限定の話だとばかり」
「ああ、なるほど。こっちはそんなつもりじゃなかったよ。てわけで、明日どうする?」
 合点がいったと頷くものの、じゃあデートの話は撤回で、とはならないらしい。
「いやいやいや待ってくださいよ」
「どのみち話し合う時間が必要だろ?」
 特に予定ないならまた家でいいか、と続いた言葉に、慌てて予定を捻出する。いやだってそれ、相手の家に行ったら結局またなんだかんだでセックスする流れだよね?
 互いの認識に大きな隔たりを感じているのは事実だし、話し合いは必要かもしれないが、でもできれば相手の家は避けたい。もちろん自宅も無しだ。でも安心して話が出来る場所に心当たりなんてない。
「あ、え、その、買い物を。欲しいものがあって」
 とりあえず問題は先送りにして、話し合いやらをどうするかは後でじっくり考えよう。そう、思ったのに。
「わかった。欲しいものって何? 場所は? 車出すか?」
 相手の中で買い物デートが決定してしまって、どうやら逃げられそうにない。
「あーえと、詳細はまた後で、で」
「もうそんな時間か。じゃあ後で、」
 メッセージを送れとでも言いたかったんだろう相手が、そこで一度口を閉じた。
「まずプライベートの連絡先を交換するか」
「ですね」
 これで俺等付き合ってるんだって。と思ってしまうのは仕方がないと思う。零れそうになるため息をどうにか飲み込んで、連絡先を交換するためにポケットからスマホを取り出した。

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聞きたいことは色々10

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 人の手でイかされるって凄い。なんて感慨に浸る間もなく、ズルっと引き抜かれていく指にイッた直後でまだ整わない息を更に乱される。
「んぁあっっ」
「気持ちよかった? なんて聞くまでもないか」
 お尻だけでイケる体で良かったと笑いながら、相手が手早くゴムを装着していく。とうとう抱かれるんだと思うと同時に、ちょっと待ってくれとも思う。
「きゅ、休憩。い、イッたばっか、だから」
 どうにか絞り出した声に、相手がクスッと笑う気配がして、相手の言葉を待たずとも結果がわかって気が滅入る。
「イッたばっかなのがいいんでしょ」
「こ、怖い、んすけど」
「だいじょぶだいじょぶ」
 めちゃくちゃ気持ちいいだけ、なんて言葉、素直に信じられるわけがないのに。でも相手を止める言葉は見つからないし、強引に逃げ出す勇気も気力も体力もない。
「顔みたいから最初は正常位ね」
 キスもしやすいし、と言いながらチュッと軽く唇を吸っていったから、キスしての要望はこのあとも叶えてくれるらしい。
「怯えた顔」
 足を抱えあげられ、ピトッと先端がアナルに押し当てられて息を飲みつつその瞬間を待つというその時になって、上から見下ろす相手がフフッと笑う。
 やっぱりどこか楽しげだし、嫌そうな反応を返したら喜ばせそうだから、極力無反応を心がけるけれど、なかなかそう上手くは行かないようだ。
「言いたいことあるなら言いな」
「怯えた顔見て笑えるとか、ホント悪趣味すね。ついでにここで焦らすのとかも」
「怯えてるから、イッたばっかだから休憩したいってお願いをちょっとは聞いてあげようかな、って思っただけだったんだけど。そっか焦らされちゃうか」
 どこまで本気で言ってんだか。と思うくらいには、相手の笑顔が胡散臭い。しかもこちらの返答を聞く気はないようで、じゃあ待たなくていいよねって言葉とともに、相手のペニスがグッとお腹に入り込んでくる。
「ひぁあああっっ」
 容赦なく相手の下生えがお尻にくっつくくらい深くまで一気に侵入されて、なのに痛いとか苦しいとかより、圧倒的にキモチガイイ。ずっとじわじわ気持ちよくされていたあちこちが、さっきまでとは比べ物にならない快感を生んでいる。
 手加減しないってのは、この状況を指していたのかもしれない。と思ってしまうくらいには、内心かなり驚きだった。優しさの欠片も見えないこの扱いでこんなに快感が生まれているのが、本当、信じられない。
「良い声だすね。気持ちよさそ」
 軽くイッたかな、と言われると、そんな気もする。
「じゃ、いっぱいイッていいからね」
 イクと俺も気持ちぃし、と漏れたそれこそが相手の目的って気もするくらい、その後はひたすらイイ場所を擦られて突かれて喘ぎまくった。
 相手のゴム替えは3回までは覚えがあるが、結局自分は何回イカされたんだろう。お尻でイケるのが早々にバレたせいで、ペニスは全然弄って貰えなかったけど、触れられないままの吐精だけでも結構な回数になっていた気がする。といっても、最後の方はちゃんと出てたのかもわからないんだけど。というか出てなかったような気がするんだけど。
 なんかもう、最後の最後なんて、ずっとイッてるみたいな状態になってた気もするんだけど。
 つまりは記憶が曖昧になるほどイカされまくって、いつ終わったのかわからないくらい疲れ果てた。というのが、初セックスの思い出になった。
 こんなの、相手がいるセックスじゃなきゃ絶対経験できない。というのは明白だけど、なんだかなぁと思って深い溜め息が出てしまうのも仕方がないと思う。
 思い描いていた初エッチとは全然違うし、最後までどちらも「好き」とは口にしなかったのに、ドロドロにイカされまくって泣き喘ぎながら縋った相手は結構甘い顔を見せていたし、可愛いって繰り返し言ってもくれたから、最終的な満足感はそこまで酷いものでもないという、なんとも言えない微妙な気分だった。

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聞きたいことは色々9

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 何がいいのかは結局わからないものの、その後も時々「いいね」と言われながらお腹の中を探られて、どんどん息が上がっていく。
 当然そんな場所を他人に弄られるのは初めてで、人の手でされてるって興奮は間違いなくあるんだけど。でもきっと、相手が上手いんだろうなとも思う。
 気持ちいいかは大事、みたいなことを言ってたし。初めてが彼で良かったと思わせる自信がありそうだったし。
 なんでそんなことを考えてしまうかと言うと、自慰では感じたことのない場所で、感じたことのない快感を得てしまっているからだ。
 自覚しているイイ場所は、多分意図的に避けられている。触れられた時にしっかり反応してしまったから、気づいてないとは思えないのに、そこをしつこく弄ったりはしてこない。
 自分からイイ場所を申告して、もっとちゃんと弄ってってお願いしないと、触ってくれないのかもしれない。
 協力するなら手加減がどうとか言ってたけど、つまりは意図的に感じる場所を避けて、この時間を引き伸ばしてるってことなんだろうか。申告されるより自分で探る方が断然楽しいとかも言ってたし、その可能性は高そうだった。
 でもやっぱり手加減の意味がわからない。だって自覚してるイイトコを執拗に弄られるより、今のほうがじわじわ気持ちがいい。知らなかった快感に酔いしれるみたいに、甘く喘いでしまう。
 恋人っぽい扱いを全然して貰えてないのに、あっさり喘ぎまくってて、そんな自身の体にガッカリではあるけれど。恋人とのセックスに夢見過ぎと言われたら、多分きっとそうなんだろうとも思うけど。
 「いいね」は繰り返されるのに「可愛い」はあれきりなのも、あえて言わないようにされているみたいで寂しい。もしあの時、素直に嬉しいって言ってたら繰り返してくれてたんだろうか。素直に嬉しいって言っても、結局あれきりだった可能性のがやっぱり高いだろうか。
 恋人って言ったって形だけのものなのはわかってるから、好きと言って欲しいとまでは思わないけど。自分だって相手に好きだなんて言えないんだけど。
 でも体の気持ちよさ優先というか、気持ちよければいいよねってセックスじゃなくて、もうちょっと甘い雰囲気が欲しかったと、どうしても思ってしまう。
 キスだって最初に少し長めにされて以降は、軽く触れ合うものすら与えられていない。肌を撫でてくれる手の平もない。
 お腹の中をいじられて気持ち良く喘いでしまっているけど、「いいね」以外の言葉が欲しい。この体を楽しく弄り回してるだけって事実をせめて隠して欲しいし、仮にも恋人なんだから、できれば恋人を抱こうとしている男の顔をしていて欲しい。
 楽しげに煌めく瞳じゃなくて、もう少し熱を持った瞳で見つめられてみたかった。なんて思いながら相手の顔を見つめてしまえば、言いたいことがあるなら言っていいよと笑われてしまった。
 気持ち良さそうに喘ぐ割にずっと不満そうだよね、と続いた言葉に、不満を言ったところでちゃんと伝わるのかを危ぶんでしまう。この人にとっては、これが「恋人扱いしたセックス」なのかも知れないし。
「なら、キス、して下さい」
 もっと恋人らしい甘い雰囲気が、とか言っても伝わらないかも知れないけれど、キスしてなら通じるはずだし、拒否されることもないだろう。
 そんなこちらの思惑通り、わかったと短く答えた相手がグッと顔を寄せてくる。
 さっきと同じ様にチュッチュと軽く吸うみたいなキスを数度繰り返してから、じわじわと深く触れ合うようになっていく。
 上顎を舌先でくすぐられるのはやっぱりゾワゾワと気持ちよくて、しかも今回はお腹に彼の指がある。快感にキュッとお腹に力が入ると、そこにある相手の指を強く意識してしまう。だけでなく、お腹の快感も増してしまう。というかキスと連動して、指の動きが加速している。
「ん、んっ、んんっぁあっ、ま、まって、まって」
 強すぎる刺激に相手の肩を押せばキスは中断してくれたけれど、お腹の中を蠢く指の動きはそのままだ。
「待つわけないよね」
「あっ、あっ、んぅうっっ」
 再度口を塞がれて、指先に狙ったように今までは避けられていたイイ場所をグリグリと押し掻かれて、あっさり頭の中が白く爆ぜた。

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