抱かれたら慰めてくれんじゃないのかよ17

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 例えばキスとか、直接アレを触ってくれるとか、もっとわかりやすく感じる場所はあるのに、多分相手は意図的にそれを避けていたし、自分からねだることもしないのは、相手の手で自分の知らない性感帯を探られるのが嬉しいって気持ちがあるからなんだろう。
 淡々と慣らすためだけの行為を受けた後だから尚更、楽しげに性感帯を探られるって事のありがたみが分かる。相手の興味と関心を、ちゃんと自分が引きつけているのだと安堵する。
 だってこんなの、好きじゃなきゃ面倒くさいだけだろう。開発し放題を実践するなら、わかりやすく感じる場所へ同時に触れながら、快感を錯覚させる方が早いとも思う。
 ただ、そうした方が早いだろうと言うだけで、こうやってじわじわと広がる快感にじりじりと焦らされながらだって、快感の錯覚は起こっていく。もちろん錯覚だけではなくて、相手の手で丁寧に慣らされたその場所が、実際に快感を拾うことを覚えてもいるんだろう。ついでに言えば、そうやって丁寧に慣らされているという事実に、喜ぶ心が反応している分もあると思う。
 つまり、要するに。自分で慣らす時には全く感じられなかった快感を、はっきりと尻の中の指に引き出されているのを自覚させられている。
「ぁっ、あぁっ」
 それを感じ取ったらしい相手が、他の性感帯を探るのを止めてその場所だけを集中的に弄りだすから、最初に慣らされた時には漏れなかったような歓喜の声がこぼれて、そこだけでも感じられている事実を、相手にもはっきりと知らせてしまう。
「お尻、気持ちよくなってきた?」
 喜びと興奮とが滲む声で聞かれて、自分だって嬉しい気持ちはもちろんある。あるけど。
「はは、いいよ。素直に気持ちぃって言えなくても、さすがにここで悲しい誤解が生じたりはしないでしょ」
 言ってくれたら嬉しいけど、言うかを迷ってくれるだけでも嬉しいだとか。言ったほうがいいと思いながらも、言えずに葛藤している姿が可愛いだとか。そんなことを、甘い声がうっとりと続けてくるから。
「気持ちぃ、けどっ、恥ずかしい、のと、悔しい、のも、あるっ」
 こちらが相手の気持ちをはかって余計な不安を抱かないようにと、沢山の言葉を、柔らかな声に乗せて伝えてくれているのがわかるから、素直に振る舞って欲しいという相手の希望に沿って、素直な気持ちを全部、言葉にして伝えてみた。
 相手は一瞬驚いたように動きを止めたけれど、すぐにおかしそうに、愛しそうに、んふふと含み笑いを零す。笑うな、と咬みつきたい気持ちもゼロではないけれど、あんまり幸せそうだったから、まぁいいかと思った。思ってしまった。
「ありがと。嬉しい。あと、可愛すぎるんだけど。なに? 俺がなるべく素直に振る舞ってってお願いしたから、素直になって、全部ぶちまけてくれたの?」
 言ってくれたら嬉しい、という相手の気持ちを汲んだ、という部分が伝わったならそれでいいという気持ちだったのに。なんのツボに入ったのか、くふくふと小さく笑われ続けて、さすがにまぁいいかと黙っていられなくなる。
「そーだよっ悪いかよっ」
「やだな。嬉しいし、可愛すぎるって言ってるのに、悪いわけないじゃない。あと、多分わかってないだろうから教えるけど、俺が一番嬉しかったのは、悔しいって言われた部分だから」
「は?」
「ねぇ、自分じゃ気持ちよくなれなかったのに俺の手で気持ちよくなれてる事が、というか俺のテクニックを認めざるを得ない的な悔しい、って事でいい?」
「んなの、いちいち確かめんなって」
「大事な事だよ。だって、俺に想像もつかない何かを抱えて、悔しいって思ってるのかも知れないじゃない」
 多分まだ言葉が足りてないねと言いながら、相手は悔しいと言われたのが一番嬉しかった理由を教えてくれる。
「ちゃんと気持ちよくなれてる事も、お尻で気持ち良くなれてるって事に戸惑ってるのも、安心してるのも、恥ずかしいのも、見てて想像が出来るけど、悔しいって思ってる事には気づけてなかったからだよ」
 相手の説明は、きっと悔しいなんて言いたくなかっただろうから余計に嬉しい、とも続いた。

続きました→

 
 
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