それは、と言葉を濁せば、ほらみろと言わんばかりに溜め息を吐かれてしまう。
「あーもー俺が悪かったってば!」
自分が抱かれる側で得た知識やらを誰かに試そうなんて思っていない。自慢のテクを盗んでやろうとも思っていない。というよりもあれは、こちらとしてはもっと単純に、相手のテクを凄いと讃えただけでしかなかった。
「あんなの言葉の綾だろ。お前のテクが、真似できそうにないくらい凄いと思った、てだけだって」
「うん、まぁ、さすがに俺も、意図的に悪く受け取った自覚は有るから、謝らなくてもいいと言うか、むしろこっちが謝るべきなんだけど」
「おいこら。俺の謝罪を返せっ」
「それはごめんって。ただ、俺はこれから先も、あんたに抱かれてやる気はないんだよね」
それを気にするのはやはり、次は抱かれる側になる可能性を考えろなんて言ってしまったからだろうか。でも別にあれは、次は抱かせろなんて意味で言ったわけじゃない。相手を抱く以上に、他の誰かを抱くって話が突飛もないって言いたかっただけで。
「知ってるけど」
抱かれてくれる気が無いことは知ってるし、それを問題にはしていないし、相手のテクの前にメロメロしている現状、抱かれる側に不満があるわけでもない。というか、こんな状態になってるのに、じゃあ次は自分が抱く番だなんて言えるはずがなかった。それこそテクニックの問題で、相手にここまで善い思いをさせてやれる自信が欠片もないのだから。
「え、それがなんか関係あんの?」
知ってる、と言った後の妙な沈黙に首を傾げながら、さらに言葉を重ねる。どうにも、知ってるならいいけど、って感じではなかったからだ。
「関係有るっていうか、俺が譲らないから抱かれる側に甘んじてるだけで、本当は抱きたい側でしょ? 俺が抱かせなかったら、他の誰か、抱きたくならない?」
「あれ? じゃあもしかして、嫉妬っつうより不安?」
「そうだね。後は独占欲とか?」
「へぇ……」
独占欲だなんて、聞き慣れないというか、似合わないというか、まさかそんな単語が溢れてくるとは思わなかった。
「うひっ?!」
なぜか唐突に、首の後ろにカプッと歯を立てられて、声を上げてしまう。
会話に意識を集中していれば、繋がった下半身を意識しなければ、そこまでドキドキすることも、体がどんどんと興奮してしまうこともなかったのに。そんなことをされたら、今自分がどんな状態かを意識せずに居られなくなる。
「あっ、ちょっ、おまっ」
やめろと手足をバタつかせれば、首の後をヂュっと吸われてチリとした痛みが走った後、ようやく開放されたけれど、もしかしなくてもこれは、キスマークを付けられたんだろうか。
「なぁ、跡……」
「独占欲が暴走しちゃって」
シレッと言われたけれど、つまりは独占欲と言われたのを「へぇ」なんて言葉で流したのが気に入らなかったらしい。でもって、否定されないってことは、しっかり跡が残されているんだろう。
「マジかよ。つかお前こそ、俺をどうしたいの」
「どうしたいってどういう意味?」
「俺、別に本命が居ても恋人作ってた屑だけど、最低限、二股掛けたことってないんだよ。だから、お前が俺を恋人にするってなら、お前が俺に抱かれてくれなくたって、他の誰かを抱くことはしないけど。でもセフレだってなら、お前の独占欲なんか知ったこっちゃねぇっつうか、よそで誰抱こうと口出して欲しくない」
「俺がセフレで、って言ったら、あんた、俺のセフレになる気があるの?」
セフレなんて持ったことないくせにと言われたけれど、それを言ったら、相手は恋人を持ったことがないじゃないかと思う。
「やだけど、お前が恋人作りたくないなら、仕方ないだろ」
「あんた本当に、変なとこで謙虚。あと、ほんっとーに、どうしようもないバカ」
呆れた口調で言われて、このやりとり、今日何回目かな、なんてことを頭の隅で考えた。
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