それを聞いた相手は、想像と違わずまたしても嫌そうに眉を寄せて、別に慰めなんて要らないと言う。慰めてやろうとして言ったわけじゃない。
「そーゆー意味じゃねぇ」
わかっていたことだが行為が再開する気配が全くないので、すっかり諦め気分で、言いながら上体を起こした。
「そういう意味って?」
「お前のことも慰めてやるよ、なんて意味じゃない」
「でもこれ、そっちが抱かれる側を受け入れるから慰め合おう、って提案じゃなかった?」
「そーだけど」
そうだけど、そうじゃない。そもそもそっちに慰め合おうなんて気がないどころか、慰めてくれる気もたいしてないくせに、まるで慰め合いをしているみたいな言い方をするのはどうなんだ。というのをどう説明していいかわからなくてため息を吐けば、相手も不服そうに小さく息を吐いてから続きを促してくる。
「そうだけど、の続きは? 何?」
「だって、ちっとも慰めて貰ってる気になれねぇんだもん」
「だから、俺の態度が不満なら止めなよって言ったでしょ。あいつの名前呼ぶくらいなら受け入れてもいいけど、それ以上は無理だよ」
「うん、だから、あいつの代わりになって抱いてくれなんて思ってないし、逆に、もしお前が俺をあいつの代わりに抱けるってなら、そうしてくれよって話」
「なんで? 慰められたいのは主にそっちでしょ?」
「そうだけど、お前に俺を慰めてやろう的な優しい気持ち、どう考えてもないじゃん」
バカみたいな提案に無理やり付き合わされてるくらいの気分だろ、と指摘してやれば、あっさりそうだねと肯定されて苦しい。
「お前が言うみたいに、見知らぬ誰かを買って済まそうなんて気にはなれないけど、お前に優しさの欠片もないまま抱かれんのもキツイから、もしお前が、俺をあいつの代わりに出来るなら、そうしていいから、もーちょい優しくしてくれってだけだよ」
バカバカしい説明をしている自覚はあるが、バカじゃないのと言い放たれればやっぱり傷つく。
「うっせ。バカなこと言ってるのはわかってる」
バカな誘い方をして、更にバカな提案を重ねている。あいつの代わりになんてならないと突っぱねられても、あいつの代わりとして優しく抱かれる事が出来ても、辛いことには変わりがないのに。
相手が出来ると言っても出来ないと言っても、自分自身が更に酷く傷つくだろう自覚はある。でも、仕方がないだろとも思っていた。
最初で最後かもしれないチャンスを、少しでも優しく触れられたいと思って何が悪い。少しでも可能性がありそうだと思ってしまったら、聞かずにいられなかっただけだ。
「つか、無理なら無理って、さっさと言えばいいだろ。欠片だって似てねぇのはわかってるし、あいつの代わりになりたいなんておこがましいとでもなんとでも言えよ」
「それはさすがに自虐が過ぎるでしょ。別に、欠片も似てないとは思ってないけど」
「は? なんの冗談」
「いや、冗談じゃなくて。でもだからこそ、あいつ抱く代わりにあんた抱くとか、実行したら最高に面倒なことが起こる気配しかないんだけど」
「なんだよその最高に面倒なことって。てか、似てないだろ、ちっとも」
「見た目とか言動には似てるとこほぼないけど、プライド高くてセンシティブなとことか、似てるなと思うとこは意外とあるんだよ。まぁ、無自覚だろうとは思ってたけど。ただ、だからこそ、たとえ可能だとして、あいつ抱く代わりとしてあんたに触れたら、あんた、内心めちゃくちゃ傷ついちゃうでしょ?」
プライドの高さから、想い人の代わりに抱かれてやる屈辱、なんてものを感じるより先に、あいつ相手ならこんなに優しく触れるんだって事実を突きつけられて傷つく羽目になるんだけど。でも、惜しいとこ突いてる。内心めちゃくちゃ傷ついて、面倒くさいことにはなりそうだ。
「可能なんだ?」
「人の話聞いてた?」
「おまえこそ、俺の話ちゃんと聞いてた? 傷ついて面倒くさいことになる俺ほっぽって帰っていいし、あいつの代わりでいいから、取り敢えず俺にもっと優しくしろってば」
言い張れば大きなため息を吐かれた上に、ほんとバカだとしみじみ言われたけれど、それでも最後には諦めた様子でわかったよと返された。
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