イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった12

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「うーん、イチャイチャってより、最後だからもっとゆっくり気持ちよくなりたいっていうか、未練なのかな。なるべく終わりを引き伸ばしたいだけ、かも?」
 終わりを引き伸ばしたい、という言葉に、今更ながら最後を強く意識した。卒業後も続ける気はないし、ちゃんと終わる気はあったのに。
 でも、それが今日だなんて欠片も思っていなかった。卒研発表を控えてバタバタしていたのもあるし、卒業まではまだそれなりの日数があるせいだ。
「卒業式、まだ先だろ」
「そうだけど。でももう引っ越しちゃうし」
 連れ込めなくなっちゃうからと言われて頭の中にたくさんの疑問符が浮かんだ。自宅へ戻るのは知っているし、当然引っ越すのだってわかっているが。
「後もう卒業式くらいだから、ここは早めに出て、卒業式は実家から来るつもりなんだよ」
 こちらが理解していないことに気づいて説明を加えてくれたが、なんで、という気持ちばかりが湧いてくる。
「んなの、聞いてない」
「卒研忙しかったし、そういうの話す機会なくて。まさかそこ気にされるとも思ってなかったし。というか、最後はもっと先だと思ってた、ってことかな。驚かしてごめんね?」
 呆然と呟けば、申し訳無さそうに謝られてしまった。
 曖昧な関係を続けていたのはお互い様なのに。自分だって、卒業したら終わるつもりだと、明確に伝えたりはしていなかった。最後をいつにするか、自分から話を振ることだって出来たのに。
「ほんとに、今日が最後、なんだ……」
「うん。そのつもり」
「おれ、の……」
 何を言いかけているんだと、慌てて口を閉じた。ここを引き払っても俺の部屋があるだなんて、口に出せるわけがない。
 自室に呼んだことはあるが、自室でこういった行為をしたことはなかった。というよりも、そういう雰囲気になりかけた時に派手に拒んだせいか、それ以降は部屋に呼んでもそういう雰囲気にはならなかったからだ。多分、気を遣ってそうならないように避けてくれていたんだろう。
 だって自室でそんなことをしてしまったら、部屋に一人でいる時にもあれこれ思い出してしまいそうで嫌だった。自室にこいつとのエロい記憶が結びつくのが怖かった。
 だいたい、俺の部屋があるからって言ったところで、わざわざ時間と交通費とをかけて出向いてくるとも思えない。
 互いにそれなりの好意があるから成立している関係ではあるだろうけれど、明確に友情以上の感情を向けられたことがないのに。恋人になってとも恋愛感情があるとも言われたことがなく、かといってセフレと呼べるような関係でも無い気がするし、結局、なんで自分相手にこんなことを続けているのかもよくわからないままだった。
 まぁ、どうしてするのか、何が楽しくてしてるのか、一度も聞いたことがないせいなんだけど。聞いたら答えてくれたのかすら、確かめずに終わるんだけど。
「どうしたの?」
 何かを言いかけたまま黙り込んだせいで、待ちきれなくなった相手から先を促されてしまったけれど、もちろん言いかけた言葉の続きを言うつもりはないので、軽く首を振ってなんでもないと示す。
「ぃや、もぅいい。わかった、から」
「わかったって何が?」
「今日で最後なんだ、って」
「ごめん、ね?」
「謝る必要ないだろ。最後はもーちょい先だと思ってたから、驚いただけ」
 伸ばした手でくしゃくしゃっと乱雑に頭を撫でてやった。イケメンがションボリすると絆されて、つい余計なことをしてしまうし言ってしまう。
「いーよ。でも、尻穴弄るのはナシな」
 イチャイチャしたいの許可を聞き逃すことなく、相手はありがとうと嬉しそうに笑った。

続きました→

 
 
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