「そんな顔しないでよ。ね、俺のことも洗って?」
促されるままスポンジを手に取り、今度は相手を洗ってやった。他人の体を洗うなんて経験は初めてだったが、相手は気持ちいいよと口にしてニコニコしているので、本当に上手く洗えているかはともかく、特に問題はなさそうだ。
そうして一通りあちこち擦った後は、手の中でスポンジを揉み込み泡立ててから、スポンジを手放した。
泡だらけの手を上向けて泡が落ちないようにしながら、相手の股間をまじまじ見つめて数秒。
「じゃ、触るぞ」
覚悟を決めてそう告げながら、相手のペニスに手を伸ばした。
「うん」
視線は完全に相手の股間に向かっていたが、短なその頷きだけでも凄く嬉しそうなのがわかる。
なんせ直接触ってやるのは初めてだ。一度だけ、卒業前の最後の日に焦らされまくって手を伸ばしたことがあるけれど、結局未遂に終わっている。
「ふっ、」
「う、わぁ……」
相手が気持ちよさそうに漏らす息を遮るように、なんとも微妙な気持ちを口に出してしまった。だって相手のペニスは既に結構そこそこ質量を持っていたはずなのに、握って軽く手を動かしただけで、手の中でムクムクと更に大きく育っていったのだ。
そうだった。こいつのは顔に似合わないバキバキにスジの浮いたカリデカちんぽなんだった。
完全勃起状態をじっくり見たのなんて一度だけで、それも1年半以上前のことだから、立派だったイメージはあるものの、詳細までは忘れていたらしい。というよりも見慣れているし触り慣れても居る自分のペニスとの違いに、戸惑いが隠しきれなかった。
「ちょ、なにそれ。感想?」
「いやだってなんか、自分のと違いすぎて……」
「あー……やっぱ怖気づいちゃった感じ?」
無理しなくていいけどと続く声は残念そうだったから、考えるより先に、口からは否定の言葉が漏れていた。
「いやいやいや。ダイジョブ。洗うだけだし」
洗うだけで怖気づいててどうすると、気持ちを奮い立たせて手を動かす。絶対今以上に怖じ気づくし上手く出来るとも思えないけど、口でしてやるつもりだって残っているので、結構しっかり隅々まで念入りに指を這わした。
相手から、もうちょっと優しく、と言われるくらい圧を掛けてゴシゴシ擦ってしまったのは、正直申し訳なかったとは思う。触れた瞬間は間違いなく気持ちよさそうな息を漏らしていた相手は、どうやら途中から息を詰めていたようだから、もしかしたら痛かったのかも知れない。
恥ずかしさもあってずっと下を向いていたから、ペニスを洗っている間、相手がどんな顔をしていたかはわからないが、泡を流そうとシャワーに手を伸ばす時に見た顔は安堵の表情と言えそうだ。
痛かったなら、もうちょっと優しく、なんてぬるいことを言わずに止めてくれて良かったのに。
「わりぃ、痛かったか」
「ちょっとね。でもそれより嬉しいのが勝ってた」
なるほど。そういう理由で。
本気で言ってるらしいのは、その緩んだ嬉しそうな顔でわかるが、いいのかそれで。
そう思ってしまったのが、顔に出たらしい。
「だって初めてだよ?」
「そうだな」
「口でしてくれるつもりで一生懸命洗ってくれてるんだと思ったら、ちょっと痛いのだって、むしろ幸せ感じちゃうって」
隅々までしっかり磨いてやれと思った理由にも感づいていたようだ。
恥ずかしいような居た堪れないような。痛いのも幸せ感じる発言への、ちょっと引いてしまう気持ちとか。めちゃくちゃ幸せそうに緩んだ顔をしている相手にホッとしたり、少し嬉しかったり。こいつのこんな顔見れるのなんて家族と自分くらいなんだろうと思ってしまう優越感とか。
そんな気持ちが混ざり合ってぐちゃぐちゃな内心に、いったいどんな顔をしてればいいのかわからなかった。
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