イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった33

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「そんな顔しないでよ。ね、俺のことも洗って?」
 促されるままスポンジを手に取り、今度は相手を洗ってやった。他人の体を洗うなんて経験は初めてだったが、相手は気持ちいいよと口にしてニコニコしているので、本当に上手く洗えているかはともかく、特に問題はなさそうだ。
 そうして一通りあちこち擦った後は、手の中でスポンジを揉み込み泡立ててから、スポンジを手放した。
 泡だらけの手を上向けて泡が落ちないようにしながら、相手の股間をまじまじ見つめて数秒。
「じゃ、触るぞ」
 覚悟を決めてそう告げながら、相手のペニスに手を伸ばした。
「うん」
 視線は完全に相手の股間に向かっていたが、短なその頷きだけでも凄く嬉しそうなのがわかる。
 なんせ直接触ってやるのは初めてだ。一度だけ、卒業前の最後の日に焦らされまくって手を伸ばしたことがあるけれど、結局未遂に終わっている。
「ふっ、」
「う、わぁ……」
 相手が気持ちよさそうに漏らす息を遮るように、なんとも微妙な気持ちを口に出してしまった。だって相手のペニスは既に結構そこそこ質量を持っていたはずなのに、握って軽く手を動かしただけで、手の中でムクムクと更に大きく育っていったのだ。
 そうだった。こいつのは顔に似合わないバキバキにスジの浮いたカリデカちんぽなんだった。
 完全勃起状態をじっくり見たのなんて一度だけで、それも1年半以上前のことだから、立派だったイメージはあるものの、詳細までは忘れていたらしい。というよりも見慣れているし触り慣れても居る自分のペニスとの違いに、戸惑いが隠しきれなかった。
「ちょ、なにそれ。感想?」
「いやだってなんか、自分のと違いすぎて……」
「あー……やっぱ怖気づいちゃった感じ?」
 無理しなくていいけどと続く声は残念そうだったから、考えるより先に、口からは否定の言葉が漏れていた。
「いやいやいや。ダイジョブ。洗うだけだし」
 洗うだけで怖気づいててどうすると、気持ちを奮い立たせて手を動かす。絶対今以上に怖じ気づくし上手く出来るとも思えないけど、口でしてやるつもりだって残っているので、結構しっかり隅々まで念入りに指を這わした。
 相手から、もうちょっと優しく、と言われるくらい圧を掛けてゴシゴシ擦ってしまったのは、正直申し訳なかったとは思う。触れた瞬間は間違いなく気持ちよさそうな息を漏らしていた相手は、どうやら途中から息を詰めていたようだから、もしかしたら痛かったのかも知れない。
 恥ずかしさもあってずっと下を向いていたから、ペニスを洗っている間、相手がどんな顔をしていたかはわからないが、泡を流そうとシャワーに手を伸ばす時に見た顔は安堵の表情と言えそうだ。
 痛かったなら、もうちょっと優しく、なんてぬるいことを言わずに止めてくれて良かったのに。
「わりぃ、痛かったか」
「ちょっとね。でもそれより嬉しいのが勝ってた」
 なるほど。そういう理由で。
 本気で言ってるらしいのは、その緩んだ嬉しそうな顔でわかるが、いいのかそれで。
 そう思ってしまったのが、顔に出たらしい。
「だって初めてだよ?」
「そうだな」
「口でしてくれるつもりで一生懸命洗ってくれてるんだと思ったら、ちょっと痛いのだって、むしろ幸せ感じちゃうって」
 隅々までしっかり磨いてやれと思った理由にも感づいていたようだ。
 恥ずかしいような居た堪れないような。痛いのも幸せ感じる発言への、ちょっと引いてしまう気持ちとか。めちゃくちゃ幸せそうに緩んだ顔をしている相手にホッとしたり、少し嬉しかったり。こいつのこんな顔見れるのなんて家族と自分くらいなんだろうと思ってしまう優越感とか。
 そんな気持ちが混ざり合ってぐちゃぐちゃな内心に、いったいどんな顔をしてればいいのかわからなかった。

続きました→

 
 
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あの日の自分にもう一度(目次)

pixivで開催されているジーンピクシブ「ゆるキュンBL(ボーイズライフ)マンガ原作コンテスト2」に参加したくなって、以前書いた「あの日の自分にもう一度」を応募できる形の1万文字以上に膨らませた話になります。全8話。

視点の主:春野紘汰(はるのこうた) もう一度女装がしたい大学生。
メイク係:今田龍則(いまだたつのり) 紘汰の友人。以前酔った勢いで紘汰が女装した時にもメイクした。
ボーイズライフということで、付き合わないかというやりとりはするものの、恋人エンドではなく、「紘汰の体を使って互いの理想の女の子を作る遊び」をするという秘密を共有する仲止まりです。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。

1話 コンビニへ
2話 もう一度メイクして
3話 酔ってないから意識しちゃう
4話 前回より可愛い
5話 次回の話
6話 ハルちゃん
7話 お付き合い、する?
8話 互いに協力しよう

 
 
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あの日の自分にもう一度8(終)

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「くっそ。その気持ちがわからなくないから、なんか悔しいんだけど!」
 龍則はだよなと肯定を返しながらも楽しげに笑っている。
「今のハルちゃんも充分可愛いし、紘汰がこれを理想の女の子っていうのもわかるし、自分相手じゃ付き合えないとか悔しがってんのには同情するけどさ。でも俺の場合は、自分の手で作り上げる理想の女の子と、デートできる可能性がある。というのはなかなか魅力的な誘惑だった」
「それはズルすぎだろ」
「だな。ただ、ハルちゃん落としたら手っ取り早いとか思ったのは謝るけど、やってみたい気持ちめっちゃあるのは本当だから、どうしたら協力する気になるか教えてくれ」
 理由を聞いたらなんだか気が抜けてしまった。龍則も考えることは同じと思って納得してしまったせいか、あんなにドキドキしていたのがなんだかバカらしい。
「なぁ、俺がもっと俺の理想に近い子作ってって言っても、協力してくれんの?」
「そりゃもちろん協力するけど」
 つまりは、互いに互いの理想の女の子を、紘汰の体を使って三次元で作り上げる遊びをしよう、というだけの話だ。それなら、出来上がる理想が別の体って所が、龍則のほうがお得な感じがするから、その分だけは多めに出資してもらえばいい気がする。
 それを言えば、龍則は少し考えたあとで、メイク道具は俺が揃えると言った。
「で、後は割り勘でもいいんだけど、好みの服の値段にも、差がありそうな気がしないこともないよな」
 確かに、あのウィッグの半額を要求されるのはキツイ。なんせ写真を見たところで、すげーいい、とはならなかったので。やはり自分の好みに合うものに金を出したい。
「ならそれも、着せたい服をそれぞれ自分で用意すりゃいいんじゃね?」
「だよなぁ。バイト、増やさないと」
「どんな服着せる気だよ。めっちゃ高い服持ってきたら、引かない自信がない」
「俺は趣味には金かけたいタイプ」
「龍則が彼女要らない理由って、そっちじゃないの?」
 デート金かかるから彼女要らないとか言われても、今なら素直に納得しそうだ。でもそれを理由に挙げない所が、龍則らしいとも思うのだけれど。
「それは言わない方がいいやつ」
「そういうとこ、なんかほんと、モテそうで憎らしい。俺らが知らないとこで、いっぱい告白とかされてそう」
「妄想で嫉妬すんの止めろって。男友達女装させるためにバイト増やそうとしてる男に、彼女なんかいなくていいんだって」
「それは確かに。龍則に彼女いたら、今、めっちゃ同情できる」
「架空の俺彼女に同情も要らないから。つか、次回は俺が揃えたもの着て、俺好みにメイクしていい、ってことでいいのかよ」
「ん、いいよ」
「じゃあ衣装選びはもういいか。飲もうぜ」
 随分と楽しそうなのは、このあと飲む酒が楽しみなのではなく、次回の女装へ思いを馳せているからなんだろう。次回は龍則の理想の女の子が見れるのだと思えば、紘汰自身、ちょっと楽しみでもある。
 なんだかオカシナ秘密を抱えてしまった。とも思うが、一人でこっそり女装を重ねる日々が始まる可能性があったことを思えば、この結果は多分そう悪くはない。龍則と一緒なら、女装を楽しむ罪悪感やら背徳感やらで押し潰されそうになることもなさそうだ。だって紘汰と違って、龍則は女装にめちゃくちゃ肯定的だから。
 コンビニで声を掛けてくれたのが龍則で本当に良かったなと思いながら、手伝うと言って先に立ち上がった龍則を追って、紘汰も酒盛りの準備をするためにと立ち上がった。

<終>

 
 
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あの日の自分にもう一度7

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 ズルいという気持ちが先に膨らんでしまったけれど、あれはお前狙いと言われたに等しくて、でも、直前の何か企んでるみたいな笑みを思うと、からかわれただけって可能性も大きい。というか、本気だろうと冗談だろうと、お前狙いって言われて心臓を跳ねさせていることが一番の問題って気がする。
 更に、化粧をしてもらっていた時のドキドキまで思い出してしまって、顔が熱くなってきた。化粧をしていたら顔が赤くなってもバレないものだろうか。だといいんだけど。
「なぁ、何にそんな照れてんの? 紘汰の女装は可愛いよって、俺、最初っから言ってたと思うんだけど」
「う、るせぇ」
 思ったそばから指摘されてしまって、耐えられないと顔を背けた。女装が似合ってるだとか、女装した自分が好みの女でもおかしくないだとか、それを言われたことに照れているわけじゃない。
「もしかして、ハルちゃん狙いって言ったやつ?」
「言うなって!」
「あーやっぱそっちか。てかそれでそんな照れるとかどうなの。脈アリだったりすんの?」
「ねぇよ。つか龍則、彼女要らないんじゃないのかよ」
「ハルちゃんとお付き合いしたって彼女出来たことにならなくね?」
「彼氏なら作るっていいたいわけか?」
「いやそれもないけど」
「だいたい付き合って何すんだよ。デートする時間取れないとか言っといて」
「えーそんなの、ハルちゃん着飾って遊ぶに決まってんじゃん。それをお家デートってことにするなら、ハルちゃんとならデートも出来て一挙両得、みたいな?」
 冗談でからかっていたわけではなさそうだけれど、どうやら、女装した紘汰と恋愛したいという話でもなさそうだ。ホッとしていいのかガッカリしていいのかわからない。というか、ガッカリってなんだと、その発想にまた慌ててしまう。そんな事を考えたって言うのがやっぱり恥ずかしくて、顔の熱は引きそうになかった。
「ハルちゃん、俺とお付き合い、する?」
「しないっ!」
「断るならせめてこっち向いて、もっとマジな感じで言ってくんないと。そんなで嫌って言われても、ますます脈アリっぽく見えんぞ」
 クスクスと小さな笑いが溢れているから、これはさすがに遊ばれていると言うか、きっとからかわれているんだろう。
「ハールーちゃーん」
「呼ぶなってば」
「俺と付き合ってくれたら、俺の出資額多めにしてもいいよ、っていったらちょっとはその気になるか?」
「え?」
「服とかウィッグとか、あと化粧品も増やしたかったりするんだけど、あれこれ揃えるとなると結構な出費になりそうでさぁ」
 ちょっとこれ見てよと、携帯を正面の位置に置かれてしまって、紘汰は背けていた顔を思わず携帯に向けてしまう。そこには彩りも形状も様々なウィッグ写真が並んでいた。安いものは数千円だけれど、数万の値が付いたものもある。
「俺はこれが欲しい」
 そう言って龍則の指が示したウィッグは、確かにロングでふわふわとしたウェーブが掛かっている。色もグレーなのか銀なのか、さっき言っていた薄い髪色というのが茶や金ですらなかった事には正直少し驚いた。そして値段は少しばかり万を超えている。まぁまぁの高さだ。
「こういうのが好きなの? それとも、俺に似合いそうって話?」
「さっき長めウェーブのウィッグも合いそうって言ったろ。でもまぁ、こういうのが好きってのも事実で、だからまぁ、ちょっと高いけど、俺が多めに金だすのも当然っちゃ当然という気はしてる」
「あー……わかった、気がする」
「わかったって何が?」
「龍則がハルちゃんと付き合って何したいか」
「ああ、俺も好みの女の子を作ってみたい、だな」
 紘汰が告げるより先に、本人の口から告げられてしまった。ですよね。

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あの日の自分にもう一度6

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 みるからにイケメンの部類ではなくても、間違いなくブサイクの部類には入らないフツメンで、背は高いし優しいしノリもいいし器用だ。女の子にメイクの腕を披露する機会はないかもしれないけど、それ以外でもこの器用さは色々と活用されるだろう。
「どうした?」
「龍則って、モテそうだよな」
「え、何だよ突然」
「彼女作ろうとか思わねぇの? てか実は彼女いたりする?」
「もし彼女いたら、この状況はかなりの誤解を生みそうでヤバいな」
「てことはやっぱ彼女はいないんだ」
「いないな。あとまぁ、今の所そんな欲しいとも思ってないなぁ」
 やりたい事もやらなきゃいけない事も色々あって、デートとかにまで時間が割けない。というのが理由らしい。
「俺の女装にはノリノリで付き合うのに?」
「だって女の子とデートするより、紘汰の女装手伝う方が絶対面白いだろ」
 断言されてしまったが、そこからしてちょっと理解不能だ。
「なんでそんな面白がれるのか、イマイチわかんないんだよな。だって、どんだけ可愛くメイクしたって、俺相手じゃ付き合えもしないんだぞ?」
「んー、服とウィッグの力がでかいとはいえ、目の前で、しかも俺自身の手で、男から女になってくの、マジに面白いけどな」
 メイクでビフォーアフターすげー変わる動画見たことないか、と言われれば、確かに幾つか思い浮かぶ物はある。
「あれに感動するのと似てる。まぁ、今はそこまで大きな変化じゃないけど、腕磨いたら幾つもの顔作れる様になったりするのかも?」
「え、龍則が目指してんの、そこ!? メイク動画撮りたいとか言われても無理だかんな」
「言わねぇよ。絶対内緒にするって言ったろ。まぁ俺も、秘密にしとくのには賛成だしな」
「そうなの?」
「そりゃあ、だって、なぁ」
「なぁ?」
 何かを企んでいる意味深な笑みを見せられて首をかしげた。
「紘汰とって言うのはさすがに俺も抵抗あるけど、ハルちゃんとは付き合えるかも知れないし? それを他の男に邪魔されたくはないだろ?」
「ん?」
 何を言われているかわからなくて、ますます首が倒れそうだ。
「ハルちゃんて?」
 とりあえずは聞き慣れない名前について聞いてみる。
「春野紘汰のハル、に、女の子だからちゃん付けた」
「あーなるほど。てかズルい!!」
「は? ズルいってなんだ?」
「どんなに可愛くなれたって、俺は俺と付き合えないのに! って、あ、今のナシ」
 余計なことを言ってしまったと気づいたけれど、今のナシ、なんて言葉でなかったことには当然ならない。
「何、自分と付き合いたいの? もしかして紘汰が女装すんのって、自分の女装姿がタイプだったりするから?」
「いやホント、聞かなかったことにして。てかナルシストっぽくてキモいのは自覚してるから。わかってるから」
「いや別にいいんじゃね?」
「いいって何が?」
「女装した自分が好みの女だって。てか好きな女のイメージで服とかウィッグとか選んだら、そうなってもおかしくないだろ。俺がそれやっても女装そのものがキモくなってダメそうだけど、紘汰は女装似合ってんだしさ」
 ケロッと当たり前みたいに言われると、そういうものかと思ってしまいそうになる。確かにナルシストでキモいと肯定されて笑われるよりずっといいのに、なんとなく困った気持ちになるのはなんでだろう。
 それに、こんなに優しくていい男なのに、彼女要らないとか言ってんのも勿体無いよな。と思ったところで、先程のハルちゃんとは付き合えるかも、という言葉を思い出す。思い出したら、ドクンと心臓が大きく跳ねた。

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「可愛いんだから、女装ハマったってので良くね?」
「良くねぇよ!」
「えー、勿体ねぇな。てか、紘汰だってわかんなきゃ写真残していいわけ?」
「そりゃまぁ。でも無理だろ。多少メイク変わったところで、服が前と一緒だもん」
「服もだけど、ウィッグもだな。髪色と髪型変わったら、かなり印象変わるし。もっと髪色薄くして、ロングでもっとフワフワっつーかナミナミっつーか、あー、ウェーブか。ウェーブ掛かってるのとかも、合いそう」
 そのストレートボブも悪くないけど、などと言い募る龍則を、思わずマジマジと見つめてしまった。何を言っているんだこいつは。
「何の話してんの?」
「次は服とウィッグ変えようぜって話?」
「次?」
「次。またするだろ?」
「いやそれは……」
 しないとは言い切れないが、だからといって次を確定されても困る。
「紘汰が女装ハマッたの、他のやつらに知られたくないのはわかったから、絶対内緒にする。だから次も俺呼べよ。てか、俺を紘汰専属のメイク係に任命してくれ」
 確かに龍則のメイクの腕は捨てがたい。しかも既に今日、こうして付き合わせてしまったのだから、秘密を共有してくれるというなら断る理由がない。
 でも、と躊躇ってしまうのは、明らかにノリノリの龍則をこのまま引き込んだら、確実に次が来てしまうし、引き返せなくなりそうだからだ。女装ハマったと割り切れるような性格ではないし、ズルズルと深みに嵌っていくのは怖い。なのに。
「服とかウィッグとか、俺も出資するしさ。一人で楽しむより、絶対お得だぞ」
 紘汰の躊躇いを感じてか、更に追加された提案はあまりに魅力的だった。これを魅力的な提案と思う時点で、結局の所、紘汰だって次を望んでいるんだろう。
「わかった。でもホント、絶対、他のやつらには内緒だからな」
「おう。任せろ」
 じゃあ服とウィッグ選ぼうと言って、龍則は手の中の携帯を弄りだす。
「あ、待って。どうせなら、飲みながら選ぼう」
「さっき買ってきた酒?」
「そう。お前も飲んでくだろ?」
「まぁ、飲み会参加のつもりで来てるしな。けど、酔って服やら選ぶのは危険じゃね?」
 気づいたら際どい下着とか買ってるかも、などと笑われたが笑い事じゃない。それは充分ありえる展開な気がする。
「じゃあ酒は後回しで。ま、買ってきた荷物テーブルに置きっぱだし、一旦冷蔵庫入れた方がいいだろうしな。でもそれはそれとして何か飲みたい。喉乾いた」
「だな」
 同意して頷く龍則を促してロフトから降りた後、こたつテーブルの上の荷物を片して、取り敢えずで麦茶を入れたグラスを二つ用意した。それの片方を手に、先に腰を下ろした龍則が、紘汰を待ちながら弄り続けていたのだろう携帯を横から覗き込めば、驚いた様子で軽く身を引かれてしまったからこっちも驚く。というか若干ショックだ。けれど。
「あ、悪い。てか今の格好でいきなり寄られると心臓に悪い」
「あー、なるほど。わかる」
 逆の立場なら、もっと盛大に反応していたかも知れない。そう思うと、女の子に急に寄られてもちょっと身を引く程度で済ます龍則は女子慣れしてる感じがする。まぁ正確には、女装しただけの男友達だけど。でもあの咄嗟にって感じから、本当に女の子が身を寄せたとしても、そう違った反応はしないんだろう。
 学部的に男子が多いのもあって、普段から男とばかりつるんでいるし、彼女の話を聞いたこともなかったけれど、もしかしなくても結構モテてたりするんだろうか。というかモテそうだよな、と思う。

続きました→

 
 
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