あの日の自分にもう一度(目次)

pixivで開催されているジーンピクシブ「ゆるキュンBL(ボーイズライフ)マンガ原作コンテスト2」に参加したくなって、以前書いた「あの日の自分にもう一度」を応募できる形の1万文字以上に膨らませた話になります。全8話。

視点の主:春野紘汰(はるのこうた) もう一度女装がしたい大学生。
メイク係:今田龍則(いまだたつのり) 紘汰の友人。以前酔った勢いで紘汰が女装した時にもメイクした。
ボーイズライフということで、付き合わないかというやりとりはするものの、恋人エンドではなく、「紘汰の体を使って互いの理想の女の子を作る遊び」をするという秘密を共有する仲止まりです。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。

1話 コンビニへ
2話 もう一度メイクして
3話 酔ってないから意識しちゃう
4話 前回より可愛い
5話 次回の話
6話 ハルちゃん
7話 お付き合い、する?
8話 互いに協力しよう

 
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あの日の自分にもう一度

 だってしこたま酔っていた。お前は絶対イケるとおだてられて、某お店のコスプレコーナーになだれ込み、その場で店員巻き込んで一式着替えて化粧までして写真を撮りまくった。新たな自分が誕生した瞬間だった。
 ノリノリで女装したのは自分を含めて数人いたのだが、着用した服や化粧品類は全員で割り勘だったから、そこまで懐が傷んだわけじゃない。しかも自分が着た服となぜか使った化粧品全てが譲られたので、むしろ出した金以上のものを得てしまった。
 そして今、全く酔っていない状態で、服と化粧品一式を前に延々と思案している。酔ってもないのにこれを着て化粧をする、というハードルはかなり高いが、でも、だって。
 携帯の中に残されたあの日の自分は、自分で言うのも何だが、なかなかに可愛かった。しかもめちゃくちゃ笑顔だ。
 あの日の興奮とあの妙な快感を、できればもう一度味わいたい。
「あ、飲めばいいのか」
 ぽんと手を打って、財布を手にコンビニへ向かった。そうだ。シラフでスカートを履くにはあまりにハードルが高いが、あの日のように酔ってしまえば、そのハードルはグッと下がる。
「飲み会でもあんの?」
 ウキウキで買い物かごにアルコール飲料や軽いツマミ類を次々と放り込んでいたら、ふいに声をかけられ振り返る。
「よっ、奇遇」
 片手を上げて見せたのはあの日一緒に飲んでいた一人で、こいつは女装はしなかったが、嬉々として人の顔に化粧品を塗りたくってくれた。
「どうした?」
 相手を見つめたまま口を開かない自分に、相手が訝しがる。
「あー……お前、今日、暇?」
「なに? 俺も参加していいやつ?」
 行く行くとさっそく乗り気な相手に、曖昧に頷いてレジへと向かった。
「幾ら出せばいい?」
「いや、お前は出さなくていいよ」
「いやさすがにそれはダメだろ」
「いいって。てかお前に頼みたいこと、あんだよね」
「え? 何を?」
「それは帰ってから」
「え、なにそれ怖いんだけど」
 どんな飲み会なのかと聞かれても、この場で正直に話すのは絶対に無理だ。
「じゃ止めとく? この酒飲むなら、途中では帰さないけど」
「ますます怪しいな。危険はないんだろうな?」
「お前にはないな」
「は? じゃあお前は?」
「どうかなぁ……」
 他人を巻き込もうとしている時点で、危険はなくはないだろう。あの日の事が忘れられなくて、一人で女装しようとしてたと、この男に知られることになるのだから。
 あれは酔った勢いのお遊びだ。皆でギャイギャイ騒ぎながらやるから許されるのであって、ドン引きされた上で仲間内に言いふらされたら、自分の今後の立場がどうなるかはわからない。
 でも化粧は多分重要だ。でもって絶対、自分よりもこの男の方が腕がいい。
「行く。参加する」
 勢いよく参加表明した相手に、思わずフフッと笑ってしまう。
「お前、優しいなぁ」
「いやだって、何か危険があるかも知れないとこに、お前参加させて知らんぷりはないだろ」
「まぁ、お前が心配するような危険ではないんだけどな」
 肝心な部分をのらりくらりと躱しながら、相手のことを自宅へ誘導する。自宅も飲み会会場になったことが有るので、相手もどこへ行くのかとは聞いてこなかった。
「はい、上がって」
「おじゃましま……って、なぁ、ほんとに飲み会? 何時から? まだ誰も来てないの?」
 玄関先に靴が溢れてないのと、静かすぎる室内に、相手がまたしても不審げな声を出す。
「あー、うん、飲み会、ではない」
「は?」
「一人飲みのつもりだった」
「この量を?」
「まぁ全部飲むかはともかくとして、理性ぶっちぎれるほど酔いたくてさ」
「何があったんだよ。え、俺はお前の見張り役かなんかで呼ばれたの?」
 救急車呼ぶのとかやだよと言うので、さすがにそこまで酔う気はないよと否定する。
「お前に頼みたいのはさぁ……」
 こっちこっちと寝室のドアを開けて、ベッドの上に無造作に広げられたままの服と化粧品を見せてみる。
「これって」
「そう。あの日のやつ」
「え、で、これが何?」
「化粧、して欲しいんだよ。お前に。この前みたいに」
「それは、まぁ別にいいけど」
「あ、いいんだ」
 引かれるかと思ったと言って安堵の息を吐けば、いやだって俺もかなり楽しんだしと返されて、ますます安心した。
「え、つまり、もっかい理性ぶっちぎれるほど酔って女装するって言ってんの?」
「そう」
「なんで?」
「なんで、って、いやだから、俺も楽しかったから……」
「じゃなくて、酔う必要ってあんの? むしろ酒なんか飲まないほうが出来上がりのレベル、絶対上がるだろ?」
「酔ってもないのに女装とかハードル高ぇよ」
「えー、あんだけ証拠写真残して、今更だって」
 女装すんなら飲む前にやろうぜという誘いに、気持ちがぐらりと揺れる。
「前回よりも絶対に可愛くしてやるから」
 そんな言葉に負けてシラフのまま着替えてしまえば、確かに前回以上の美少女が出来上がってしまった上に、何故か相手の方が、次はもっと衣装をどうのと言って上機嫌でノリノリだ。
「いやお前、次はって」
「え、またやるんだろ?」
 もうしないとは言えなかったし、このメイクの腕を手放したくないなと思ってしまったのも事実で、気づけばメイク係に指名しろよの言葉にも頷いていた。

有坂レイさん、今日の単語です ・誕生・スカート・アルコール で何か作ってください
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彼女が出来たつもりでいた1

 バレンタインの夜、駅のホームで声をかけられて、見知らぬ女性からチョコと一緒に手紙を貰った。特別見目が良いわけではないから、こんな経験は当然初めてだった。
 最初は美人局の一種かとも考えかなり警戒していたのだけれど、渡された手紙に書かれていたように、意識的に探せば時折彼女とは駅のホームで会うことがあった。しかし、いくらチョコやら手紙やら貰ったからと言って、気軽に話しかけることなんて出来っこない。それどころか、手紙の中にあった彼女の連絡先へも、ありがとうの言葉一つ送っていなかった。
 結果、向こうも気づいて目が合えば会釈するような関係を一月ほど続けて、ホワイトデーの前日に初めて、メッセージを送ってみた。
 さすがに駅のホームでというわけにもいかず、近くのコーヒーショップで待ち合わせてお返しの品を渡し、とりあえずお試しという感じで交際を開始したのだけれど、ほとんど一目惚れだった、という相手の言い分を信じたわけじゃない。ただ、目の前で緊張気味に話す相手の好意は間違いなく伝わってきたし、実を言えば、緊張に興奮と喜びを交えて、目を輝かせながらも照れ笑う顔が可愛かった、というのがかなり大きい。
 数年振りの恋人という存在に浮かれて、ほとんど毎週末どこかしらへ遊びに行ったし、どこへ行っても目一杯楽しもうとする彼女の姿に、あっという間に本気で惚れた。
 ただ、デートは毎回ひたすら楽しいし、手を繋いだり人気がない所で軽く唇を触れさせるだけのキスなどはむしろ彼女も積極的でさえあるのに、それ以上の進展が難しい。腰や肩を抱き寄せ密着しようとしてもするりと躱されてしまうし、個室で二人きりというような状況にはならないよう気をつけているらしき様子がある。
 もしかしたら、過去の交際やら日常生活で、男性から不快な目に合わされたなどのトラウマがあるのかも知れない。それとなく聞いてみたものの、曖昧にはぐらかされてしまったので、その線は濃厚な気がした。
 下心がないわけではないが、相手の同意なく強引に手を出す気なんて欠片もない。可愛い彼女とあちこちデートして、手を繋いだりキスが出来るだけで充分満足だった。

 免許はあるが車は所持していないことと、多分車内も二人だけの密室と考えるらしく、移動はもっぱら電車やバスの公共交通機関を利用するのだが、その日、帰宅時の電車が途中で予想外に混んでしまった。ちょうど何かのイベントの終了時間と重なったらしい。
 ギュウギュウとまではいかないものの、それなりに人の詰め込まれた車内で、不可抗力ではあるものの、初めて彼女と広範囲で触れ合っている。ドッと人が流れ込んできてから先、相手は酷い緊張を見せていた。
「気分悪い? 大丈夫?」
「ん、だいじょぶ。あの、ごめん、ね」
 俯く相手から、申し訳なさそうにか細い声が聞こえてくる。
 何のイベントだったのか、周りの男性率は高い。恋人相手でもあれだけ警戒するのだから、この状況はきっと相当辛いんだろう。過去に何があったかはわからないが、きっと彼女が悪いわけではないのだろうから、謝らないで欲しい。
 こんな状況になるとわかっていたら、さっきの駅で一度降りてしまえば良かった。
「次の駅で一度降りようか」
「……うん」
 しばらく迷う様子を見せたものの、相手も頷いたということは、やっぱり大丈夫ではないんだろう。とはいえ、急行列車に乗っているので、次の停車駅までまだ10分以上もある。
 見知らぬ男と接触するよりは、まだ恋人である自分のほうがマシだろうと、相手を守るように腕の中に引き寄せた。ますます緊張をひどくし、なるべく密着しないよう二人の胸の間に両腕を挟んでガードする徹底っぷりに、なんだか申し訳ない気持ちになる。さすがにこの状況で下心なんてないけれど、ないつもりだけれど、彼女からすればこの機に乗じてと見えるのかも知れない。
「ごめん。嫌だよね。でも次の駅までの、数分だけ、我慢して」
 思わず謝ってしまえば、ハッとしたように俯いていた顔をあげて、違うと言いながら首を振る。少しばかり、泣きそうな顔に見えて、ますます罪悪感が増した。
 いつも楽しげに笑ってくれることが多い彼女の、こんな顔を見るのは初めてだ。
 引き寄せたりしないほうが良かったのかも知れない。かといって、引き寄せた相手を押しのける真似も出来ない。結果、なんとも気不味いまま、二人無言で電車に揺られるしかなかった。
 そんな中、ガクンと電車が大きく揺れた後、急停車した。人が多いので倒れることはなかったものの、揺れた拍子に胸の間に置かれていた相手の腕が大きくずれて、というよりもビックリした相手に抱きつかれたらしく、正面からぎゅうと抱き合う形になった。
「えっ……?」
 思わず零した驚きの声に、相手が酷く慌てたのがわかった。安全確認のために急停車したことを詫びるアナウンスをどこか遠くに聞きながら、腕の中でもぞもぞと必死に身を離そうとしている相手を、更にぎゅっと抱きしめる。確認するように、腰と腿とを突き出し、相手の体というか股間を狙って擦りつける。

続きました→

 
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友人の友人の友人からの恋人1

女装して出歩いたら知り合いにホテルに連れ込まれたの続きです。視点は相手側。

 知り合った当初、その子は友人の友人の友人、くらいの距離に居た。見た目がかなり好みだったから、距離を詰めて友人になるか、男も行けそうなら口説いて恋人にしたいと、かなり初期段階で思っていた。しかし人見知りなのかシャイなのか、元々の友人には笑顔だって見せるのに、なかなか打ち解けてくれる気配がなかった。
 そんな子と偶然街中で出会って、チャンスとばかりに声を掛けたら、特に嫌がることなくお茶を一緒してくれた。彼はその時、大変可愛らしい女装姿だったから、ここぞとばかりに可愛いと繰り返した。男に可愛いは禁句というか嫌がられることも多いけれど、女装子なら可愛いは間違いなく褒め言葉になるだろう。
 ただの女装子で男は対象外という可能性もあったが、もしかしたらの可能性にかけて口説きまくれば、少々躊躇いを見せつつもラブホテルにまでついてくる。これはもう、よほど体の相性が悪くない限りこのままお付き合い開始もありえるというか、ぶっちゃけその時点で、交際スタートしたな、くらいの気持ちになっていた。さすがに、男も有りの子だとこんな形で知ることになるとは思っていなかったが、今日の出会いに乾杯、ってくらい浮かれていたし、なんてラッキーなんだろうと思っていた。なのに。
 ラブホの部屋に入ってから、キスも未経験の童貞を拗らせまくった結果の女装で、好奇心でラブホについてきていて、つまり男の自分相手にセックスなんて欠片も考えていなくて、それどころかキスすら嫌だと思われている事実が発覚した。完全に騙されていた。
 正直、未経験の真っ更な体に突っ込むのは無理にしても、言いくるめて手コキかフェラくらいは行けるのでは、と思う気持ちもなくはなかった。だって既にラブホの部屋の中にいたのだ。でも、ファーストキスが男なんてマジ勘弁と、必死に言い募る半泣きの顔に、ラブホまで付いてきて今更何言ってるのとは言えなかった。
 だから代わりに、連絡先を交換しあって、友人の友人の友人って関係から友人になった。
 それ以降、たまに女装姿の彼とデートをしている。彼女いない歴=年齢の非モテ童貞と自分を卑下する彼に、じゃあ女性のスマートな扱い方を教えてあげるから、自分の身でもって体感すればいいよと言った結果だ。まさかそれで本当に女装姿でデートしてくれるようになるとは思わなかった。
 ちなみに、女装子とそういう仲だったことはあるにはあるし、女性の友人だってそれなりにいるが、彼女が居たという過去はない。性愛対象はずっと男だけだからだ。でも聞かれてないから、その事実は告げてない。
 割とはっきり君狙いだよって言ってる男を、そんな簡単に信じちゃダメだよ。なんてことも、もちろん思うだけで口に出して言ったことはない。
 ちょっとチョロすぎて心配になるし、彼のことを知るほどに見た目だけじゃない素直な可愛さに気付かされる。ああもう、ほんと、早く落としたい。
 ただ、一度ラブホまで連れ込んで押し倒しかけたからか、ガードはそれなりに固かった。手を握ったり腰を抱き寄せたりを拒むことはないが、雰囲気を作って顔を覗き込むと途端に警戒されてしまう。ファーストキスを奪われてたまるか、みたいな気持ちが透けて見えるのが、これまた結構可愛いかったりする。
 ガードは固くとも隙だらけだからキスなんて奪おうと思えば簡単に奪えてしまうんだけど、その結果、彼に悲しまれたり嫌われたりするのが嫌で手が出せない。でもそろそろキスくらいは出来るようになりたい。

続きました→

 
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なんと恋人(男)が妹に!?

 ゆさゆさと揺すられ意識が浮上すると共に、「おにーちゃん起きて」などと耳慣れない単語と随分可愛らしい声が聞こえてくる。可愛らしいというか媚びた感じというか、つまりはわざとらしさの滲んだ声だ。
 妹なんて生まれてこの方一度だって居たことがないのに、これはいったいどういう事だろうか?
 夢の中で夢から目覚める的な状況で、ようするにこれはまだ夢の中なのかもしれない。
「おにーちゃんってば!」
 再度呼ばれて揺すられて、おにーちゃんとはやはり自分らしいと思いながらも未だ重い瞼をどうにか押し上げた。
「おはよ」
 そう言ってにこりと笑うのは恋人によく似ているが、ストレートの髪と胸元に柔らかそうな膨らみを持つ可愛らしい女性で……
 ああ、これは夢でも何でもない現実だ。
「うっわ。ちょっ、何やってんだお前」
 合鍵は渡してあるので、勝手に部屋に上がり込んでと言うつもりはないが、週末の朝っぱらから女装姿で強襲される理由がわからなくて慌ててしまう。
「あれ、もうばれた」
 そう言いつつも、相手は随分と楽しげだ。
「そりゃわかんだろ。てか何? どういう事?」
 これ何入ってんのと言いながら胸元へ伸ばした手は、おにーちゃんのエッチという言葉とともにはたき落とされ掴むことが出来なかった。まだ続くのかこの設定。
「つかホント、説明欲しんだけど」
 言いながら取り敢えず体を起こせば、同時に相手も、寝ているこちらを覗き込むように折り曲げていた腰を伸ばす。なので結局、相手を見上げる距離にそう差は出来なかった。
「さて今日は何の日でしょう?」
 そんな出題されたところで、わからないものはわからない。何かの記念日ということはないはずだ。
「あれ? わかんない?」
「わかんねぇって」
「4月1日だよ?」
「だからそれが……ってまさかエイプリルフール?」
「大当たり〜」
 にこにこ顔で返されたけれど、エイプリルフールってこういうイベントだったっけ?
「つまり、これはどんな嘘?」
「なんと恋人が妹に?」
「疑問符ついてんぞー」
「まさか妹と恋人だったなんて?」
「だから疑問符付いてるって」
 しかし妹と言い張っているだけで、恋人という事実は変わらないらしい。
「あー、つまり、禁断の近親相姦セックスプレイを楽しみましょう的な?」
 決して倦怠期ではないはずだが、いつもとは違うプレイで刺激をと言うなら、それはそれで大歓迎ですよ?
「ちっがーう。いや別にお前が俺の女装姿でも勃つってならやるのは構わないけど、そうじゃなくて」
「あ、やっていいんだ。じゃあぜひ、おにーちゃんって呼ぶのもそのままで」
 言ったら驚かれた上に若干引かれた気がする。お前が恋人って設定にしたくせに。
「まぁそれは後で楽しむとして、そうじゃなくて、何?」
「あー……だから、せっかくエイプリルフールが土曜日でお前と会えるから、何かしら言って驚かしてやりたかっただけだよ。でも何か嘘つくって考えても、嫌いになったとか別れましょうとか、万が一本気にされたらシャレにならないもんばっか浮かんでくるから発想を変えてみた」
 要するに、普段絶対やらないような事をしてみせたら驚くと思ったらしい。そりゃまぁ驚きますよね。まだ恋人になる前、女装とか意外と違和感ないっていうか似合いそうって言った時にめちゃくちゃ嫌そうにしていたから、恋人になった後も女装してみてなんて言った事なかったけど、寝起きに想像以上のもん見せられたらそりゃあ驚くし慌てるに決まってますよ。
「焦ってるお前見れたから満足した」
「そりゃ良かった。じゃ、次は俺を満足させてよ」
 どういう意味かと首を傾げる仕草も、カツラと服装のせいかいつも以上に可愛らしい。
「禁断の近親相姦プレイ」
「え、マジでやるのか?」
「やりますよ。というかお前すっかり素に戻ってるけど、裏声でおにーちゃん言うの忘れないでね?」
 逃さないよと言うように、手を伸ばして相手の手首をギュッと掴んでやった。

エイプリルフールネタを書かずに居られなかった。
次回更新(別れた男の弟が気になって仕方がないの続き)は2日の夜か3日の午前中になります。4日からはまた通常通り更新予定です。

 
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120分勝負 うっかり・君のそこが好き・紅

 部活終了後、部室で着替えていたら一足先に帰り支度を終えた後輩がススッと寄ってきて、先輩これどうぞと小さな横長の箱を差し出された。意味がわからず着替えの手を止めて相手を見つめてしまえば、先輩にあげますと言いながらそれを胸元に押し付けてくる。
「お、おう……じゃ、サンキューな」
 何がなんだかわからないまま受け取り、取り敢えずで礼を言った。しかし受け取っても後輩は隣を動かない。つまり、この場で中を確認しろということか。
 仕方なく手の中の箱を開けて中身を取り出す。出てきたのは多分口紅だった。なんでこんなものをと思いながら首を傾げてしまったのは仕方がないと思う。
「先輩にはそっちの色のが絶対似合うと思うんですよね」
 そんな自分に気付いたようで、隣から説明するかのような言葉が掛かったが、それを聞いて一気に血の気が失せた。
「はい、お前居残り決定な」
 周りに聞こえるように声を張り上げ、戸惑う後輩を横に残して着替えを再開する。後輩がなんでとかどうしてとか尋ねてくる声は無視をした。だって相手をする余裕なんてまるでない。内心はひどく動揺し焦っていた。
 どうしようどうしようどうしよう。一体どこまで知られているんだろう。
 昨年の文化祭後、先輩たちが引退して演劇部の部長を引き継ぎ、部室の鍵閉めをするようになってから、誘惑に負けるまでは早かった。なんだかんだと理由をつけて他の部員たちを先に帰した後、中から鍵を掛けた密室で、部の備品を借りてひっそりと女装を繰り返している。
 成長期を終えたそこそこガタイのある男に、ピラピラのドレスも、長い髪も、ピンクの頬も紅い唇も、何一つ似合わないのはわかっている。姿見に映る自分の姿の情けなさに、泣いたことだってある。それでも止められないのは、変身願望が強いからなんだろう。
 長い髪のかつらを被って、丈の長いスカートを履いて、胸に詰め物をして化粧を施せば、そこにいるのは醜いながらも全く別の誰かだったからだ。
 演劇部へ入ったのだって、役を貰って舞台に立つことが出来れば、その時だけでも別の誰かになれるかもと思ったからだ。昔から、自分のことが好きになれず、自分に自信が持てずにいる。
 部長になったのだって、部を引っ張って行きたい意志だとか、仲間の信頼が厚いとかそんなものはあまり関係がなくて、単に面倒事を嫌な顔をせず引き受ける利便さから指名されたに過ぎないとわかっていた。そんな頼りない部長のくせに、部室の鍵を悪用し、部の備品で好き勝手した罰が当たったのかもしれない。
 先日うっかり鍵を締め忘れたままで居残った日がある。もし後輩に知られているとしたら、きっとその時に見られたのだろう。
 反応しないこちらに諦めたようで、後輩は近くの椅子に腰掛け、部員たちが帰っていくのを見送っている。自分も着替え終えた後は近くの椅子に腰を下ろしたが、もちろん内容が内容なので会話を始めるわけに行かず、取り敢えずで携帯を弄って時間を潰した。
「で、なんで俺が居残りなんですかね?」
 やがて部屋に残ったのが二人だけになった所で、待ってましたと後輩が話しかけてくる。それを制して一応廊下へ顔を出し、近くに部員が残っていないことを確認してからドアの鍵を掛けた。一応の用心だ。
「それで、お前、あんなのよこしてどういうつもり? てかどこまで知ってる?」
 声が外に漏れないように、さっきまで座っていた椅子を後輩の真ん前に移動させて、そこに腰掛け小声で尋ねる。なるべく小声でと思ったら、しっかり声が届くようにと知らず前屈みになっていたようで、同じように前屈みになった後輩の顔が近づいてくるのに、思わず焦って仰け反った。
「ちょっ、なんなんすか」
「ご、ごめん。てか近すぎて」
「まぁいいですけど。で、どういうつもりも何も、さっき言ったまんまですよ。先輩には、あの色のが似合うと思ったから渡しただけです」
「だから何で男の俺に口紅なんかって話だろ。ていうか、つまりはあれを見た、ってことだよな?」
「先輩が居残って女装練習してるのって、やっぱ知られたらマズイんですか?」
 練習という単語に、そうか練習と思われていたのかとほんの少し安堵する。じゃあもう練習だったと押し通せばいいだろうか?
「知られたくないに決まってんだろ。あんな似合わないの」
「まぁ確かに、似合ってるとは言い難い格好では有りましたけど、やりようによってはもうちょいそれっぽくイケると思うんですよね。だから尚更、一人で練習しないで人の意見も取り入れるべきじゃないですかね?」
 知られたくないなら他の部員たちには内緒にするから、ぜひ協力させてくださいよと続いた言葉に目を瞠った。
「な、なんで……?」
「なんで、ですかね? 先輩の女装姿に惹かれたから、とか?」
「何言ってんだ。似合ってなかったの、お前だって認めたろ」
「だからその、似合ってなかった所が、ですよ。これ俺が弄ったらもっと絶対可愛くなるって思ったというか、なんかこう、とにかく先輩のあの格好が目に焼き付いて、気になってたまらないというか」
「なんだその、一目惚れしました、みたいなセリフ」
「あー、まぁ、それに近い気もします」
 何言ってんだという苦笑に肯定で返されて、なんだか体の熱が上がっていく気がする。
「せっかく二人だけの居残りですし、今から、ちょっとあの口紅、試してみません?」
 衣装とかつらも俺が選んでいいですかと、すっかりその気な後輩に押し切られるようにして、その日から時々二人だけの居残り練習が始まってしまった。

「一次創作版深夜の真剣一本勝負」(@sousakubl_ippon)120分一本勝負第71回参加

 
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