可愛いが好きで何が悪い8

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 待ち合わせたのが昼過ぎだったので、開放されたのは既に夕方だったが、それでもまだ本日一番の目的である花火大会までには時間がある。なので予定していた観光先の中から近そうな寺院を2つほど経由してから、花火大会の会場へと向かった。
 到着後、まず確認するのはトイレと警備本部の場所だ。救護本部や迷子センターが警備本部の近くに設置されているはずなので、どちらかというとその2つの確認であるが、こんなのは混雑する祭りやらに参加するなら基本だと思う。
 ただ、連れの男はそれだけでなにやら感動しているらしい。
「さすが迷子ホイホイ」
 言い出したのは姉だったか母だったか。無駄に正義感が強い子供だったので、連れ去り男に飛び蹴り事件以外にも、小さな頃は何度かトラブルを巻き起こしている。
 さすがにある程度育ってからは、保護して迷子センターに届ければいいことを学んで、問題を起こすことはなくなった。
「ヤメロ。てか泣きそうになってる子供がいたら気になるの、仕方ないだろ」
 人混みの中、不安そうな顔で必死にうろつく子供がいたら、どうしたって目につくのだ。
 いっそ大声で泣いてしまえば、周りももっと気づくと思うのだけれど。でも今まで見かけた迷子の子は、大概泣くのを堪えてうろついている。
「それに気づくのがやっぱ普通じゃないっていうか、視野が広い? んだと思うんだよな」
 俺の目のことは言えないと思うと続いたので、全然違うだろと返しておく。
「ちょっと特殊な目、って意味では近いものがあるって」
「てことはやっぱ自分の目が普通じゃないって自覚あるわけ?」
「人の顔をよく覚えてる方、って自覚はあるよ。顔の特徴から血の繋がり感じるのも割りと得意」
 彼がバイトする浜辺と今夜花火大会が行われる浜辺はそこまで離れていないせいもあってか、既に何人か、バイト先に訪れたことのある客を見かけていると言うから驚きだ。
「まぁ、初恋の子が育った先がこうでも、ああ初恋のあの子だぁって顔見るたびにドキドキしちゃうのはちょっと問題かなぁって気もしてるけど」
「それってやっぱ本気なわけ? てか顔見るたびにドキドキしてるとか初耳なんだけど」
 育った先としてこちらの顔を指す手を払い除けながら、なんだそれと思いつつ問い返す。
「顔見るたびには言い過ぎだけど、でもまぁ、あの子なんだなぁって思う瞬間は結構あって、どっちか女の子なら良かったのになって考えちゃうことも多いよね」
「今のお前にドレスが似合っても付き合わないからな」
 言ってから、ファミレスでの会話を引きずってるなと苦笑する。姉とその友人らのせいで、男同士でも初恋相手同士のロマンスが発生する可能性をまず考えてしまった。
「てかどっちか女の子でもお前と付き合うとか多分ない」
「は? えっ? なんでぇ????」
 本気で驚かれてしまったが、いやだって、男だろうと女だろうとこの容姿ならモテまくるのは必至だし、経験人数が多そうなところもちょっと嫌だ。自分の性格的にワンチャンだって狙わないと思うし、恋人なんてもっとない。考えられない。
「あ、まさか下半身がだらしないから……?」
 わざわざ言わなかったのに、自分で気づいてしまったらしい。
「まぁそれもなくはないけど、お前みたいな目立つ美形と付き合ったら気が休まらない気がする」
「恋人には一途だけど!? 浮気なんてしないよ??」
「お前自身はそうだとしても、あちこちで声かけられて愛想振りまくの見せられるの、恋人って立場ならキツそう。まぁ、俺は多分そう感じるってだけで、モテる恋人が自慢になる女子も居ると思うから、お前はそういう子を好きになるといいと思う」
 などと話しているうちに、とうとう花火大会が始まるらしい。どうやら開始前に迷子と遭遇することはなさそうで少しホッとする。
 今日は2人で来ているし、迷子を見つけたら花火大会そっちのけで一緒についてきそうな相手だけれど、大人数で遊びに来ている場で迷子を保護してしまうと、その場で自分だけが離脱ということも起こりがちだ。泣きそうな子供を前にして嫌な顔をされることは少ないが、せっかくの誘いを途中離脱しがちな奴は誘いにくいというのもわかるし、過去にはそれで疎遠になった友人も居ないわけではない。
 実は今日の花火大会も、最初は来る気なんてなかった。でも、迷子ホイホイでもいいどころか、一緒に行ったら俺もヒーロー気分を味わえる可能性があるってことじゃない!? なんて、若干楽しみそうなメッセージを送ってこられて承諾した。

続きました→

 
 
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