可愛いが好きで何が悪い1

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 小さな頃から女の子が好むようなアニメや玩具が好きで、特に、ひらひらふわふわのドレスを纏ったプリンセスが大好きだった。母親と姉の影響も大きいというか、彼女たちも同様に可愛いものを好むたちで、自分が彼女たちと同じように可愛いものを愛でても歓迎しかされなかったから、自分が異質だということに気づいたのは小学校に上がってからだ。
 周りの男子と馴染むために、だんだんとそういった好きを隠すようにはなったが、三つ子の魂百までと言われるように、そういったものを好む傾向は大学生となった今も変わっていない。
 大学は下心満載で某夢の国へ通えそうな範囲を狙ったし、さっそく年パスも購入した。そうしてウキウキで通うこと数ヶ月。園内で初めて名前を呼ばれて振り返る。
 そこには男子3人に女子6人という小さな集団が居て、声を掛けてきたのは男だった。顔に見覚えはある。というか学科が一緒の同級生だというのはわかった。
 目立つ容姿と、だいたいいつも人が集まっているので辛うじて覚えている。ということは、もしかして全員同じ学科の生徒だろうか。大いに有り得る。
 思わず周りの顔を確認してしまうが、そんな気もするし全然知らないって気もして、正直イマイチ自信がなかった。入学してまだ数ヶ月というのもあるが、この趣味をおおっぴらにしたくはなくて、親しい友人を作る気がないというのも大きい。
「こんなとこで奇遇だな。誰かと来てんの?」
 その集団から小走りで近づいてきた男は、気さくに話しかけてくる。
「てかもし一人なら俺たちにまざんない?」
 正直に一人だと答えるのが得策には思えず黙り込んでいれば、次にはそんな突拍子もない提案をしてくるから驚く。
「は? なんで?」
「こっち男の数少ないからさ。あと、一人で来るくらい好きなら、ここの面白小話とかも色々知ってそう。って思って」
「そーいうのはちょっと……それに、」
 言いながら、視線を先程まで見ていた方向へ向けた。そこには半泣きの女の子と、その手を繋いで歩いている男性がいる。先程までは存在しなかったその男に嫌なものを感じて、慌てて会話を切り上げた。
「悪い、俺、急いでるから」
 軽く走って、その女の子と男性との距離を詰める。自分もちょうど、迷子らしき子を見かけてしまって、気になって声を掛けようとしていたところだったのだ。
 その男性が、迷子センターへ向かうかキャストに迷子を預けるなら黙って見守るつもりだったけれど、嫌な予感そのままに、男性が向かうのはどうやらトイレらしい。小さく舌打ちして更に距離を詰め、男の肩を叩いて呼び止めた。
「すみません。その女の子のお父さん、……じゃない、ですよね?」
 お父さんですかと聞くまでもなく、相手の挙動がおかしくなって確信する。
「迷子センターそっちじゃないですよ」
 にっこり笑ってやってから、女の子の前にしゃがみこむ。
「トイレもう少しだけ我慢できる? トイレに行きたいなら、一緒に行ってってキャストのお姉さんに頼んであげる」
「トイレじゃないの」
 首をふるふると横に振った女の子は、ママが居ないのと言って、とうとう泣き出してしまった。
「じゃあ、ママを探してってお願いしに行こう」
 大丈夫だからとなだめていると、異変を察知したキャストさんが飛んでくる。男は女の子が泣き出した瞬間には逃げ出していて、当然この場に居はしない。
 そのキャストと一緒に迷子の女の子を迷子センターまで送り届けて、保護した状況や不審な男の特徴などを一通り告げている間にその迷子のお母さんが見つかったので、泣いていた女の子のキラキラの笑顔とありがとうを貰って、気分よくその場を後にした。
 それが昨日の話で、こちらの顔を見るなり飛んできた男に、大事な話があるから講義の後にちょっと付き合ってと言われたのが1時間半ほど前だ。そしていま現在、妙に深刻な顔をしたイケメンに拉致られて、人気のない空き教室で2人きりというわけのわからない状況に追い込まれている。
 いやもうほんと、意味がわからない。
 まさか昨日の誘いを素気なく断わったことを根に持ってるなどとは思えないが、けれどそこ以外にまるで接点がないのだ。
「で、要件って、何?」
 出来ればさっさと済ませたい。早く開放して欲しい。そんな気持ちで急かせば、相手はスマホを何やら弄った後、画面をこちらに向けてくる。
「あのさ、突然変なこと聞くけど、この子に会ったこと、ない?」
 そこに写っていた少女に目を見開く。
 会ったことは確かにあった。1度だけだけだけれど、忘れられるはずもない。だって、初恋の女の子だ。
「やっぱ、会ったことあるんだ……」
「え、お前、これ、知り合いか?」
「知り合いっていうか、俺」
「はっ? えっ?」
 俺? 俺って言ったか? つまりは目の前のこの男が、初恋の女の子ってことか?
「ああああ、まじ、ショック〜」
 混乱に感情がついていかない中、なぜか目の前の男がショックだと言って嘆いている。

続きました→

 
 
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「可愛いが好きで何が悪い1」への2件のフィードバック

  1. お待ちしておりました!
    新しいお話、わくわくしています。
    あれ…?攻め?攻めが女装??私のなかでは初めてのパターンだ!
    となっていますが、どういうお話になるのかなと、さらにわくわくしてしまいました。
    そして某夢の国、かわいいもの好きな受けはひとりで行けるタイプなんですね。
    私もひとり参加したことありますが、ビール飲んで散歩して買い物してアトラクション2つ乗って満足して帰りました。
    思ってた以上に楽しかったです(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)
    でも受けはこのあと攻めと仲良くなってもひとり通い続けてそうな雰囲気も(笑)
    今後の展開が楽しみです!

  2. さっそくのコメントありがとうございます〜

    攻めの女装は、受けが可愛いの好きなのわかってて着てくれるだけで、元々女装癖があるわけじゃないはずです。多分。
    いままでも女装話いくつか書いてますけど、攻め側が女装ってのは書いたことないな〜くらいの軽い気持ちで設定を考えたんですが、そういえば女装姿でHしてる話って書いたことがないはずなので、このままだと初めて書く女装Hが攻めの女装ってことになりますね。今更気づいてちょっと笑ってしまいました。
    一応Hするところまで書くつもりでいますが、私もあまり読んだ記憶もなければ書くのは確実に初めてなのでどう進んでいくか、今はまだかなり不明なんですよね。でもまぁ今までもしょっちゅうそんな感じで書き綴ってきたので、どうぞ今回もまたお付き合いよろしくおねがいします。

    夢の国はひとりで行かれる方も多い&ひとりでもしっかり楽しめると聞いたことがありますし、凄く好きならむしろ一人のほうが楽しめそうなイメージがあります。
    Mさんも経験したことあるんですね。楽しかったとのことで羨ましいです。
    昔、従姉妹が年パスを持っていて、仕事帰りにふらっとご飯だけ食べに行ったりすると聞いて、凄いなぁいいなぁって思った記憶があります。
    私はそこそこの距離があるからか、行くなら始発で出かけて一日遊び倒さないともったいない、みたいな思考になりがちです。

    それと、メッセージもありがとうございました。
    そちらのお返事は明日にでも返させてもらいますね(*^_^*)

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