可愛いが好きで何が悪い14

1話戻る→   目次へ→

 直接見たいから持って来いと指示され、彼とともにダン箱を抱えて実家へ向かう。
 家には姉の他に2人ほど、以前にも会ったことがある姉の友人女性が待っていた。聞けば、ふわふわひらひらした可愛い服を、自分が着たいのではなく作りたい側の人間らしい。そういう繋がりの友人だったとは知らなかった。
 彼はやはりダン箱の中身には触れようとしなかったので、許可を得て姉の友人の一人が中身を取り出し広げる。その瞬間、自分も含めて、息を呑む密やかな音が部屋に広がった。
 結局自宅では被害の確認をしないままだったので、自分もその時が初見だったせいだ。彼が触れるのを躊躇ったのがわかるくらいに、派手にあちこち切り裂かれていた。
「これは……」
「うー……ん、きびしい、ね」
 ひそひそと交わされる会話はもちろん彼にも聞こえているだろう。ちらりと窺う横顔は青ざめて見え、キュッと結んだ口元が痛々しい。
「にしても、物に当たるなんて酷すぎるなぁ」
 悔しそうに言ったのは姉で、犯人が継母であることは既に伝え済みだった。彼の実家脱出には伯父の力も借りたし、継母とのゴタゴタを姉も多少は知っている。
 結局、義憤に駆られたらしい姉が、どうにか出来ないかもう少し色々探りたいと言うので、裂かれたドレスは彼女たちに預けることが決定し、トンボ帰りするにはさすがに遅いとそのまま実家に一泊することが決定した。
 引くなよと一応釘を差し、自室へ彼を招き入れる。
「へぇ……向こうの部屋も、これくらい飾り立ててもいいのに」
「万が一友達招くことあったとき、仕舞う場所がないのは困るだろ。こっちは取り敢えずで移せるスペース結構あるし」
 姉や両親の部屋に置かせてもらってもいいし、リビングに置いたっていい。リビングに飾られたぬいぐるみやら写真立てやらを、自分が招く友人らが自分のものと思いはしないだろう。
 ぬいぐるみを飾る棚やらはもう少し可愛く演出したい気もするが、いざというときに誤魔化しが効くようにと考えると、現状はぬいぐるみごと移動できるサイズに抑えるのが妥当、というところに落ち着いている。
 自分自身がプリンセスになりたい願望がなくて本当に良かったとは思う。姉の部屋はこれに加えて、寝具やらクッションやらラグに始まり、ベッド本体やタンスなどの家具類までが全て可愛い。
「俺も友人じゃないの?」
「お前相手に今更隠す必要ないだろ」
「まぁ、そうなんだけど」
「それに、お前が部屋来るようになった最初はちゃんと隠してたろ」
「ああ、たしかに」
 言いながらも、なんだかニヤニヤと嬉しそうにしている。
「何笑ってんだよ」
 先程までの青ざめた顔に比べれば全然マシではあるが、突っ込まずにはいられなかった。
「んー、特別扱い、嬉しいなぁって思って」
「それも今更だ、今更」
「それもそうなんだけどさ」
 たいして広くもない部屋の中、数歩分の距離を詰めてきた相手が、ゆっくりと額を肩に押し当ててくる。逃げようと思えば簡単に避けられるゆったりとした動きを、黙って受け止めてしまったのは、裂かれたドレスが直せる見込みがほぼないことを知っているせいかもしれない。
「お前と大学で再会できたの、俺の人生一番のラッキーだったかもって、最近思ってる」
「大げさだな」
「今日だって、すぐにお姉さん捕まえて、ドレスなんとかしようとしてくれたし」
「なんとかしようとはしたけど、まだなんともなってないだろ」
 多分直んないぞとはさすがに口にできなかったが、彼もそれはどうやらわかっているらしい。
「直らない覚悟は、してる。でもお姉さんがどうにかしたいって言ってくれたのも嬉しくて、もういいって言えなかった。もしかしたら、お姉さんからお前に無理そうって連絡来るかもしれないから、俺がちゃんと覚悟できてるって、知ってて」
「わかった」
「本当に感謝してる。お前に会えて、良かった」
「おう」
 しみじみと言われて、なんとか短く応じる声を発したものの、その後どうすればいいかわからない。話が終わったなら離れて欲しいが、自分から突き放す気にはなれそうになかった。
 結局、夕飯だと呼ぶ声が聞こえるまで、馬鹿みたいに2人黙ったまま、寄り添い立ちつくしていた。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です