可愛いが好きで何が悪い46

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 気持ちいいところを探すの言葉通り、こちらの反応を窺いながら施されるそれらに、体の熱はあっさりと昂ぶっていく。
 自慰行為をしないわけではないけれど、それでも多分、性欲は人より薄めという自覚があったのに。性欲の強弱と感じやすさはあまり関係がないらしい。
 つまりは想定よりも遥かに広範囲で、体は彼に与えられる快感を拾っていた。
 キスで口の中を探られたときも、彼の手で握られたときも、口でされたときも。恋人という関係になる前で、それなりに抵抗感や迷いがある中ですら簡単に興奮させられていたのだから、彼に本気で性感帯を探られたらこうなるって、ある程度は予想しておくべきだったのかも知れないけど。多分、キスや性器を直接弄られて感じるのは当然と思っていたのが敗因だ。
「ここも、気持ちぃの?」
 ひっくり返されて背中に唇を落とされながら、うっとりと甘やかな声が、熱い息と共に肌に触れる。それだけでもまた、ゾワッと肌が粟立つような、小さな快感が走ってしまうのに。
「ぁあっっ」
 右の肩甲骨の下辺りに硬い感触が当たって、軽く齧られる衝撃にこらえきれずに声を上げた。自分の声に思えないような、濡れて高い声音だった。
「ん、ふふっ、すごい、イイ声」
 嬉しそうな声は興奮を含んで、その周辺だったり左右を変えたりで何度か歯を立てられ、吸われ、その度に小さく「あっアッ」と声を上げる。少し慣れて声が出なくなると、また別の場所を探される。その繰り返しだ。
 感じて声を上げるたびに、腹の中に抱えたバイブを締め付けてしまうようで、最弱でも、イイトコロにピッタリと当たっていなくても、瞬間的に強い快感が走ることもある。彼に触れられている場所から発生する快感に、お腹の中から発生する快感が混じって、混乱するような追い詰められるような感覚もあった。
 物足りないとか、もっと強い刺激が欲しいとかではないけれど、もどかしさは感じる気がする。お腹の中がもやもやして、もっとはっきりとした快感が欲しい。
 もっと言うなら、射精がしたいというか、ペニスで快感を拾いたいのだと思う。
 ひっくり返された最初はべたりと腹側すべてを布団に付けていたが、快感に身を捩った際にペニスがシーツに擦れて気持ちよくなっている事に気づいた相手によって、早々に腰を持ち上げられている。一緒に弄ったらあっさり果ててしまうのがわかっているから、なるべくそこには触れたくないという意志は感じるし、こちらも耐えられるうちは耐える気でいた。
 けれどもう、いい加減、限界が近いのかも知れない。直接触られていないのに、こんなにも射精欲が募っている。
「お尻揺れてて可愛い。そろそろ物足りなくなってきた?」
「うひゃっ! あ、……あっ、ま、まって、それっ」
 そんなことを言われながら、掲げた腰に吸い付かれて変な声を上げてしまった。しかもバイブを握った相手が、確実に狙ってイイトコロに押し付けてくるから、腰どころか足が震えて崩れそうになる。
 しかし崩れる前にさっと相手の腕に支えられて、辛そうだから仰向けにと促されながら、再度ひっくり返された。
 体勢的には楽になったが、いつの間にやらすっかり雄臭い顔で興奮していた相手と顔を合わせることになり、さすがのギャップに思わず驚く。
「どうかした?」
「そういう顔、するんだ。と思って」
「そういう顔?」
「ギラついてる感じ」
「そりゃあ、好きな子が目の前で、俺の手で感じまくってるの見てたら、こうもなるでしょ」
 自分だけ焦らされてると思ってるのと言われて、相手も相当焦れているらしいのを知った。
「突っ込みたいなら、さっさと突っ込めばいいのに」
 後半は背中を向けていたから、嬉しげで楽しげでうっとりとした声ばかり聞いていて気づけなかった。楽しくて仕方がないからやっているのだと思っていたが、そんなに焦れていたなら、しつこくこちらの性感帯探しを続けずとも良かったのでは。
「情緒! ってかいい感じに感じてくれてるから、ここは頑張りどころだと思って」
「いい感じに? 頑張りどころ?」
 イマイチ意味が分からずに相手の言葉を繰り返しながらも、頭の中は疑問符が巡っている。
「自覚あるかわからないけど、間違いなく、お尻の開発進んでるから。どうせなら、俺にいいところ突かれてアンアンするのが見たいじゃん」
 ゲスな下心で焦らしまくってごめんねと、全く悪いと思って無さそうな顔で謝られてしまった。
 そういやさっきも、前立腺がちゃんと気持ちよくなれたら、後でいっぱい突いてあげるとかなんとか言っていた気がするが。
「初めてで、本当にそこまでなるのか?」
「多分。ちょっと、試してみようか?」
 何をと口に出す前に、相手の動きで何をするか察してしまう。バイブを握った手がイイトコロに押し当てつつ、最弱だった動きを強くする。
「ひっ、あ、ああああっっ」
 強い振動と激しめの伸縮に、悲鳴に似た嬌声が口から溢れていく。突然の激しい快感に、目の前がチカチカと明滅して、腰がガクガクと震えてしまう。
 しかし、何かがせり上がってくる恐怖にシーツをギュッと握りしめたところで、それらの動きは唐突に止まった。
「はぁ……はぁ……」
「ごめん、いきなり激しすぎたね」
 荒く息を吐きながら呼吸を整えていたら、謝罪の言葉とともに、腹の中からバイブが抜かれていく。

続きました→

 
 
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