可愛いが好きで何が悪い47

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「でも、イケそうだったでしょ?」
「いや、わからん。なんか凄かった、のはわかる」
 何かがせり上がってくるあの恐怖を、イキそうだったと思うにはいささかハードルが高い気がする。ついでに言うなら、激しすぎる快感は痛みに近い気もした。
「正直、あれを続けられても、気持ちよくイッた状態になれる気がしない」
「そ、そうなの?」
 意外そうな顔をされて、彼の想定とこちらの実感が合っていないようだと思う。
 彼からすると、気持ちよさにすぐにでもイきそうだった、とでも見えていたんだろうか。もしかしたら、辛そうな様子に止めてくれたのではなく、こちらが先に果ててしまうのを阻止するためにスイッチを切って抜いた、という可能性の方が高いのかも知れない。
「最弱で突っ込まれて、お前にあちこち触られてる時のがはっきり気持ちよかった」
「んんんっ、そっか」
 バイブよりお前がくれる刺激のが気持ちよかったと告げたようなものなので、嬉しかったんだろう。コンドームを装着するために相手はこちらから視線を外しているが、緩んだ頬も口元もこちらからは見えている。あと、声も少し弾んでた。
 なのに、装着を終えて顔を上げた相手は、キリッとすました顔を見せている。
「ふはっ」
「え、なんで笑われてんの?」
「んー、カッコイイな、って思って?」
「それ絶対嘘でしょ」
「いや本気」
 今から突っ込むよというこの状況で、さっき見せていた雄臭い興奮も、嬉しそうに脂下がったニヤケ顔もすっかり隠し切って、余裕そうな顔を見せられるのはやはり経験の賜物なんだろうか。
「お前にイイトコロ突かれてアンアンするのも有りかな、って思えるカッコよさ」
 これも本気には聞こえなかったようで、少し嫌そうに眉が寄る。その顔にやっぱり少し笑ってしまったけど、これも別にからかってるとかではなく本気だった。ついでに言うなら、これは自分自身へ覚悟を促す言葉でもある。
 そういう状態になることを、そんな姿を彼に晒すことを、もう、本気で疑ってはいなかった。
「そんな風に笑ってられるの、今のうちだけかもよ?」
 嫌そうに眉を寄せたのは一瞬で、すぐにまた余裕の顔を見せながら、ペニスの先端をアナルに押し当て挿入の体勢を取ってくる。本気でアンアン言わせる気なんだけど、という幻聴が聞こえる気がして、また笑いそうになるのをどうにか堪えた。
 堪えたが、堪えていることは伝わってしまったらしい。
「俺、本気だからね?」
「知ってる」
 腕を軽く広げながら相手に向かって伸ばせば、察した相手が前傾して身を寄せてくれる。その肩を掴んで引き寄せながら、自らも顔を寄せていく。
「期待も、してる」
 気持ち良くしてくれるんだろ、と、唇が触れる寸前に囁いて、相手の返事を待たずに塞いだ。
 相手の目が見開かれるのを間近に見て満足した後、そっと瞼を落としてキスに意識を集中させる。快感を拾って体の力を抜いていけば、布団に背が着くのとほぼ同時に口の中から舌が抜け出て、代わりとばかりにアナルにペニスが侵入してくる。
 さっきみたいに深呼吸したり、挿入のタイミングを図られることはなかった。
「あああっっ」
 閉じ忘れていた口からは少し大きめの嬌声が漏れていく。しかも今回は、そのままぬぷぷと一気に奥の方まで入り込んできた。
「うううっっ」
 口は途中で閉じたけれど、衝撃で声は飲みきれない。痛みではなく、既に充分に慣らされた穴が、あっさり快感を拾っていたせいだ。
「痛く、ないよね?」
 ほぼほぼ埋めきってやっと腰を止めた相手が、一応の確認という感じで顔を覗き込んでくる。その目を見つめて、気持ち口の端を持ち上げながら。
「きも、ちぃ」
 多分きっと狙った通り、ある程度ちゃんと甘やかに響いたと思う。
 相手がウッと言葉をつまらせてうろたえるから、してやったりと笑ってしまう。
「またそうやってすぐ煽る〜」
 へにょっと情けない顔を見せるから、しっかりしてくれと思いながら、ぺちっとその額を叩いてやった。
「期待してんだから、ちょっと煽られた程度で負けんなよ、俺に」
「無茶言わないで!」
「そんな顔ばっか見せてると、また可愛いって言いまくるぞ」
「それはヤダ」
 次は俺が可愛いとこいっぱい見せてもらう番でしょ、と言いながらゆっくりと腰を揺すられる。順番に可愛いを見たり見せたりする、という意識も認識もまったくなかったが、結果的にそうなりそうなのだからまぁいいか。

続きました→

 
 
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