可愛いが好きで何が悪い45

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「よしこい」
「気合い入りすぎでしょ」
 覚悟が決まったと知らせれば、そんな指摘とともにやはり可笑しそうに笑われてしまう。でも過剰だとは思わないし、それくらいの覚悟は必要だ。
 ただ、うるせぇと文句を言うつもりで開きかけた口は、けれどすぐに閉じてしまった。同時に、ギュッと目も閉じてしまう。
 そうして、腹の中で動き出した無機物に意識を集中する。
 バイブの動きは当然何段階もあって、さきほど彼に突きつけたときは振動も伸縮も最強モードにしていたけれど、今は間違いなく一番弱い振動だけのモードだろう。いいところに押し当てられたそれが小刻みに震えて、じわっとした痺れが腹の奥から広がっていくようだった。
「んっ……ぁ……」
 喘いでしまうような強い刺激ではなく、けれど間違いなく、じんわりと気持ちがいい。
「最弱なら平気そうだね。しかもちゃんといいとこ当たって気持ちぃんだ。良かった」
 嬉しそうな声が弾んでいるから、その顔が見たくて閉じていた瞼を押し上げる。目が合うと、うふふっと楽しげに笑われた。
「前立腺、ちゃんと気持ちよくなれたら、後で俺も、そこいっぱい突いてあげるね」
 期待いっぱいの嬉しそうな顔は、化粧を落とした素の顔でも悪くない。嬉しいなら良かったと素直に思うし、眼の前の相手が男の姿でも、だからなんだくらいにしか感じていないようだ。
 ただ、楽しみだねと言われても、それにはさすがに頷き難い。
「ばぁか、気がはえぇよ」
「そんなことないよ。だって中に気持ちぃとこあるの、はっきりわかってるんだから」
 場所も大体わかったし、あとは任せて。などと何やら自信有りげに告げられてしまったが、これもやはり素直に喜べはしない。
「いや、任せろったって……」
「俺に気持ちよくされるの、嫌がらないでくれればいいだけだよ」
「それが嫌だったら抱かれる側のセックスなんてしてないだろ」
「それはそう。ね、慣れてきたみたいだから、次、いくね」
 わかったと返せば、弱い振動はそのままに、中で伸縮が始まった。といってもこれも、一番弱い動きだろう。動いているのはわかるが、そこまで強い刺激ではなく、やっぱりじんわりとした痺れが腹の奥から湧き出ている。
 さっき目で見て知っている動きを、今、腹の中でされているのだと思うと、不思議な感動があった。
「はぁ……まじ、動いてる」
「それが感想なの?」
 またしても可笑しそうに笑われてしまう。
「気持ちぃのは? どう?」
 嫌な感じはしてないよねと聞かれて、じんわり気持ちぃと正直に答えた。
「もどかしいとかは? まだない?」
「んー……言われてみれば、もどかしい、のか?」
 いまいちはっきりもどかしいとは言えずにいれば、じゃあもう暫くはこのままにしておこうかと言って、相手が握っていたバイブから手を離す。
「あ……」
「良くなくなっちゃった?」
「あー……お前が持ってる方が、ちゃんと気持ちぃとこ、当たってたっぽい」
「やった。褒められた!」
 褒めたつもりはなかった。でもまぁ、これも相手のテクと言われれば否定は出来ない。
「でも暫くはこのままね。もっとはっきり物足りなくなったら、またしてあげる」
「で、その間お前は何すんの?」
 まさかの、玩具を突っ込んでの放置プレイか。と思ったのもつかの間。
「キスしたり、気持ちぃとこ探したり、撫でたり、舐めたり、まぁ色々」
 ちゃんと前戯っぽいことをもっといっぱいしたいと言われて、そういやさっきは穴を広げるのがメインで、とにかく体を繋げるのを優先するようなセックスだったのを思い出す。
 そうして、腹の中に最弱で動くバイブを抱えたまま、あちこち撫でられ舐められ、時々喰まれたり吸われたりした。

続きました→

 
 
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