あの日の自分にもう一度2

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 あれは酔った勢いのお遊びだ。皆でギャイギャイ騒ぎながらやるから許されるのであって、ドン引きされた上で仲間内に言いふらされたら、自分の今後の立場がどうなるかはわからない。
 でも化粧は多分重要だ。でもって絶対、紘汰よりも龍則の方が腕がいい。
「行く。参加する」
 勢いよく参加表明した相手に、思わずフフッと笑ってしまう。
「龍則は優しいなぁ」
「いやだって、何か危険があるかも知れないとこに、紘汰だけ参加させて知らんぷりはないだろ」
「まぁ、龍則が心配するような危険ではないんだけどな」
 肝心な部分をのらりくらりと躱しながら、紘汰は龍則を自宅へと誘導する。自宅も飲み会会場になったことが有るので、途中で気づいたようではあるが、それを確認されることはなかった。
「はい、上がって」
「おじゃましま……って、なぁ、ほんとに飲み会? 何時から? まだ誰も来てないの?」
 玄関先に靴が溢れていないのと、静かすぎる室内に、追加買い出しだと思っていただろう龍則がまたしても不審げな声を出す。
「あー、うん、飲み会、ではない」
「は?」
「一人飲みのつもりだった」
「この量を?」
「まぁ全部飲むかはともかくとして、理性ぶっちぎれるほど酔いたくてさ」
「何があったんだよ。え、俺は紘汰の見張り役かなんかで呼ばれたの?」
 救急車呼ぶのとかやだよと言うので、さすがにそこまで酔う気はないよと否定する。
「龍則に頼みたいのはさぁ……」
 買ってきた荷物を取り敢えずこたつテーブルの上において、こっちこっちと龍則をロフトスペースに招き入れた。そこは一応寝室という扱いの場所で、ベッドの上には洋服や化粧品類が乱雑に広げられたままだ。
「これって」
「そう。あの日のやつ」
「え、で、これが何?」
「化粧、して欲しいんだよ。龍則に。この前みたいに」
「それは、まぁ別にいいけど」
「あ、いいんだ」
 引かれるかと思ったと言って安堵の息を吐けば、いやだって俺もかなり楽しんだしと返されて、ますます安心した。
「え、で、つまり、もっかい理性ぶっちぎれるほど酔って女装するって言ってんの?」
「そう」
「なんで?」
「なんで、って、いやだから、俺も楽しかったから……」
「じゃなくて、酔う必要ってあんの? むしろ酒なんか飲まないほうが出来上がりのレベル、絶対上がるだろ?」
「酔ってもないのに女装とかハードル高ぇよ」
「えー、あんだけ証拠写真残して、今更だって」
 あの写真見たらもっかいやりたい気持ちもわかるだとか、ちゃんと可愛くなれんのわかってんだからハードルなんてないだろだとかを言い募られて、女装すんなら飲む前にやろうぜと誘われる。ひとつひとつの言葉に、気持ちがぐらりぐらりと揺れているのは、どうやら龍則もお見通しだ。
「前回よりも絶対に可愛くしてやるから」
 そして結局、力強く告げられたその言葉が決め手となって、促されるまま服を着替えてしまった。
「んじゃ始めるか。取り敢えず座って」
「あー……」
 ロフトスペースは天井も低いし椅子などは持ち込んでいない。そうするとベッドに腰掛けるか、ラグに腰を下ろすかだが、ベッドも高さの低いフレームを使っているから、中途半端に腰を曲げて化粧をしてもらう事になりそうだ。しかしさすがにスカートを履いた状態で胡座をかくのはどうだろう。
 女の子の座り方で真っ先に思い浮かぶのはぺたん座りだのアヒル座りだのと言われる、両足の間にお尻を落とす座り方だけれど、あれは股関節やらが痛くて無理だったのが過去の経験からわかっている。でも横座りだと体をまっすぐに保つのが大変そうだ。
「え、正座?」
 結果選んだのは正座だったのだが、その選択に、少なからず驚かれてしまったようだ。

続きました→

 
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